違和感
一章まだ続くんか…
こんな予定ではなかった…
とりあえずは不幸って言葉ようやく出せた…
今日もいつものように学校に行きいつものように学校で授業を受けて、俺はいつもと変わらない平々凡々の日常を過ごしていた。
変わったことと言えば生徒が何人か死んだとか噂が広まっている。俺はそれを知っている。
この教室で何人かの生徒が死んでいたのを見たからだ。
あの時は犯人を見つけようと思っていたはずなのに、不思議と今は見つけようという気にならない。
何も変わらない平凡な一日。だけど、なんでだろう。胸にぽっかりと空いたようなこの感覚。
空しさを感じずにはいられない。それは、まるで――
大切な何かを忘れている。
そう思えてならない。だからだろうか日常を過ごしていても何とも思わない。
日常を過ごすことに意味はあるのだろうか。
俺は何故今までこんな日常を過ごしていきたいと思ったのだろうか。
良い事も悪い事も何もないまま、結局今日の授業は全て終わった。
授業が終わっても動こうとしないどうやら、今日は先生から話があるようだ。
「今日はお前らに話がある。生徒を殺した犯人の身柄を拘束した。このクラスの生徒の―――だ。」
どうやら、あの事件の犯人が分かったらしい。だけど、肝心の犯人の名前を聞き逃してしまった。
名前が出た途端にざわざわと教室が騒がしくなる。
「自ら名乗り出たそうだ。殺された生徒にいじめられたようで、その際に最近出回っている薬を無理矢理
打たれたそうだ。」
いじめられていたという事は恐らく非発現者だな。薬とは麻薬みたいなあれか。確か注射器のようなものに入っているんだっけ?
あれ、なんで俺そんなこと知ってんだ…
「その際に、《根源たる力》を発現してしまい誤って殺してしまったそうだ。薬を打たれると本能だけで動くようになるという証言も出ているが、そういった症状はまだ見られていない。しかし、いずれも危険な状態だから名乗り出たそうだ。」
聞いているとその人は立派な奴だと思う。人を殺してしまったが、それは殺される人にも過失はある。はっきり言ってしまえば自業自得だ。
どちらかと言うと犯人は巻き込まれた側だ。それなのに自ら名乗り出て拘束されたのは周りに迷惑を掛けないためだろう。それとも、巻き込みたくない人でもいるのだろうか。いずれにせよ、俺にはとても真似できない。
「身柄は生徒執行部に渡された。だから、処罰が決まるまでは生徒指導室には近づくなよ。」
生徒執行部は学校の荒事に対応するための組織。学校内で唯一武力行使が許された者達。基本的に学校内では能力の発動は認められていない。しかし、彼らは違う。彼らはいつどこでも能力を使うことができる。言ってしまえば選ばれた人材。一クラスに数人は必ずおり、違反が起きればすぐ駆けつけ処罰を下す。そのため、いじめなどは公に起こせない。だから、発現者としては厄介者として嫌われ、非発現者からは救世主と親しまれる。まぁ、俺からしたらどうでもいいことだが。
最近で言えば、この殺人事件の際に門を閉めたのはあいつらだろう。死体は時間が経てば勝手に消えてなくなるためその間誰にも見られないように時間を稼いでいたのだろう。ご苦労なこった。
「以上だ!」
話はこれで終わりのようだ。
話が終わり先生が教室から出ていく。
どうやらこれで、今日の学校も終わりのようだ。
生徒達がどんどん帰っていき教室も疎らになる。
俺もそろそろ帰ろうと思い荷物を持とうとした時、残っていた生徒たちの話声を偶然聞いてしまった。
「それにしても、びっくりだよな。あの事件の犯人が―――だったなんて。」
「そうそう。すごく大人しそうなのに。」
「バカ。大人しそうだからこそ、いじめられてたんだろ。そういう奴って反撃とかしなそうだし。」
「はぁ、でも勿体無いよな。結構かわいかったのに。」
「そういうのも原因なんだろうよ。女って自分よりかわいい奴が許せなさそうじゃん。お~怖ぁ。」
「うわぁ、あいつらならありえそう。女全員がそういうわけじゃないと思うけどあいつらはそう思ってたに違いないよな。」
「そうだな。あいつら「私は特別ですぅ~」とかよく言ってたし。唯我独尊な性格だったからな。あいな奴らに目を付けられるなんて不幸だよな~。」
「はは、それよりさ今日――」
彼らにとって事件の真相なんてどうでもいいのだろう。
生徒たちは犯人についての話を早々切り上げて別の話を始める。
それにしても、また犯人の名前聞きそびれてしまった。
だけど、会話から察するに犯人は女の子のようだ。
まぁ、だからって別に俺には関係ないけどな。
終わった事件に関心持ってもしょうがない。
俺も帰るとするか。
荷物を持ち上げ、いつものように別れの挨拶をする。
「それじゃ、みなさんさようなら。」
「………………」
何だろうこの違和感。いつものように行動しているのにいつもと違うような。
俺が別れの言葉を言うのは別に誰かに向けて言うわけではない。
でも、それでも、何も返事が返ってこないわけではなかった…そんな気がするんだ。
今日になってからずっと感じているこの違和感。何かが欠けている。
「どうしたんだい?」
俺に声をかけてきたのは後ろの席に座っていた雅だった。
「あ、ああ。なんていうか何か大切なものを忘れているような気がして…」
「大切なもの?」
「そう。大切なはずなんだけど…それが、思い出せないんだ。」
思い出せない自分がもどかしい。大切なもののはずなんだ。忘れてはいけないもののはずなんだ。
「思い出せないか…なら、大したことではないんじゃないかな。」
「いや、大切なはずなんだ。…なぁ、俺の隣の席の人って誰だったけ?」
「菜々子さん?」
「違う。逆の席の人だよ。今日来てなかったよな?」
俺の右側の隣の人は今日学校に来てなかった。それだけなら別に気にすることではない。
しかし、その人のことが思い出せなかった。どんな顔だったのか。どんな声だったのか。
何も思い出せないんだ。
「ああ、―――さんのこと? 」
脳内にノイズが走る。名前をうまく聞き取れなかった。
「大丈夫かい。顔色が悪いよ?」
「だ、大丈夫だ。」
「今日はゆっくり部屋で休んだら?」
「あ、ああ。そうさせてもらう。」
これ以上雅に心配かけるのも嫌なので、俺は胸に違和感を抱いたまま自分の部屋に戻るのだった。
今回の内容
忘れちまったぜ!
以上!




