いつもの日常? 6
そろそろ戦闘かな?大したものではないけど…
待ち合わせの場所に着くと雪那さんは男三人に囲まれていて、そのうちの一人が雪那さんの腕を掴んでいた。
嫌がる雪那さんを無理やり従わせようとしているこいつらは何者なんだ。
だがそんなことはどうでもいい。
なにより気になるのは、雪那さんはどうして泣いているんだ?
…それは、 こいつらが泣かせたからだ!
そう確信すると同時に俺の体は走りだしていた。
怒りに身を任せて闇雲に突っ込みたい所だが…一対三だ。そんなことをしたら返り討ちにあってしまう。
今、俺がやるべきこと、しなければいけないことは雪那さんを助けること!
ならば、隙を見つけて雪那さんを連れ出し逃げ切ることが重要!
そして忘れるな、怒りに身を任せても心はいつだって冷静に!
注意が雪那さんに向いてる今なら背後からの一撃で一人倒すことができる。
だから、俺は腕を振り上げ三人の内の一人に拳を振り下ろす。
振り下ろした拳は吸い込まれるように男の頬に当たる。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ぐしゃりと何かが砕けるような嫌な音と共に男の体が吹っ飛ぶ。
俺は殴りつける時に無意識の内に叫んでいた。
もっと、冷静にならないとだめだとわかっているのに体が言う事を聞いてくれない。
今までこんなことはなかった。
拳を振り上げるのは身を守るため。怒るのも自分のため。
そんな俺が誰かのために怒り拳を振るうとは…
俺は随分変わってしまったようだ。
それは、悪い事なのだろうか?
いや、守りたいと思うものができたんだ。
それは、人として素晴らしいことなのではないかと俺は思う。
…だからこそ、俺は雪那さんを守りきるんだ!
男達が呆気に取られている隙に俺は手を伸ばし雪那さんを掴んでいる男の手ほ引き離し雪那さんを引っ張り出す。
「こっちだ!!」
俺は腕を引っ張りこの場から逃げるように走り出す。
「あ、てめぇ。舐めたことしやがって! 逃げるんじゃねぇ!!」
後ろから怒号が聞こえる。だがしかし、そんなことを聞いている余裕は俺にはない。
とにかくここからできるだけ離れるんだ。
道行く人達を掻き分けながら俺達は走り続ける。
そして息が切れるほど走ったところで止まり。息を整えるようにしながら雪那さんに安否を尋ねる。
「はぁ、はぁ、雪、那さん。怪我、とかない?」
俺と同じく息を整えながら、返答をする雪那さん。
「だ、大丈夫…です。ちょっと、疲れ…ましたけど。」
同じ距離だけ走ったんだ。疲れているのはしょうがない。それよりここはどこだ?
ずいぶんと人気のない所に来てしまったが…廃墟だろうかここは?
いくつもの錆びた鉄骨がむき出しになっていて今にも建物が崩れそうな勢いである。
走るのに人という障害物は元来避けたいものだが、まさか人気のない所にきてしまうとは…。
でも、ここまでくればあいつらも追ってはきていないだろう。
「ここまでくれば、大丈夫だろう。少し休もう。」
近くにあった座りやすそうな瓦礫に腰掛ける。
雪那さんも俺の隣にちょこんと座った。
こうして、隣にいるのを感じると守れたことを実感する。
ああ、俺は守り切ったんだ。
この人を…本当に守りたいと思ったものを守り抜いたんだ。
まだ、一緒にいた時間は少ないかもしれない。特に何かをやったというわけではない。
けれども俺は確かにこの人にこの人の笑顔に惹かれていた。
他人と触れ合うことを避けていた俺が他人ともっと関わりたいと思えた。
…そうか、もしかしたらこの感情が――――――――――――
瞬間俺の頭部付近を何かが横切る。俺は物凄い風圧を肌で感じ取った。
物が通り過ぎたと気づいた時には後ろから物と物が激しくぶつかり合ったような大きな音が聞こえていた。
一体何が起きたんだ。突然のことに頭は混乱する。
もしかして、俺は攻撃されたのか?
くそっ、今のタイミングで攻撃されたんだ考えられることは一つ。追ってがきたんだ。
どうしてこちらの居場所がわかったのかわからないがあいつらはきたんだ。
「ち、外したか。運のいい奴だ。」
男がそう呟きながら悠々と歩いてくる。雪那さんが男の予想外の登場に息を飲む。
攻撃の狙い俺か。だったら…
足に力を込めて俺は雪那さんから離れるように前に出た。
「ここにいると何故わかった?」
内心は戸惑いつつも冷静に対処する。
隙を見せてはだめだ。恐らくこいつは、発現者だ。
遠距離から攻撃できることを考えて、こいつが姿を出す必要がないはずだ。
もしかしたら、何か裏があるのかもしれない。
こいつらは三人組だった。内一人は動けないとしても残りは二人。
あと一人、近くにいることを考慮しなければならない。
慎重に行動するんだ。後ろには引けない。
「へっ、雑魚のてめーにはわかんねぇだろうから教えてやるよ。俺の仲間の一人に特定のものの位置がわかるやつがいんだ。そこの嬢ちゃんに触れた時にマーキングは済んでいたんだよ。どこに逃げても追いかけられるようにな。後は、連絡を取り合いながら追いかければ…ほら、今の状況の完成だ。」
わざわざ俺にそんなことを教えるとは、余程のバカかそれとも自分に自信があるのか。
どちらにせよ、それは慢心。こういうタイプは嘘をつけない。
…つまり、こいつの攻撃を掻い潜り、もう一人の男の方を倒してマーキングを解除しないといけないというわけか。
覚悟を決めろ、戦うしかないんだ。
だが、その前に一つ聞いておきたいことがある。
バカな質問かもしれない。
でも、こいつなら答えるかもしれない。そんな気がした。
「残りの男はどうした? お前一人でやりあうつもりか?」
普通なら答えるはずはない。
しかし、俺のことを雑魚だと判断したこいつが、俺のことを知っていたからだとしたら?
そして、こいつがバカで自信家だとしたら?
「非発現者のてめーには俺一人で十分なんだよ!」
その発言を聞いて安心した。とりあえずはお前一人を倒せばいいんだからな!
拳を強く握り俺は走り出した。




