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第三十二回 戦闘と時間経過の概念

戦闘描写は、GIFアニメーションと似通った原理かも知れない。

例えばテニスラケットを振り抜く動作は、最低2枚の絵があれば動かせるわけですよ。振り抜く前と振り抜いた後。この2枚をペラッとやると、脳は補完して途中の動作を埋めるわけですね、錯覚と言いますが。

もちろん条件がありまして、この2枚のみをいくらペラッとやったって、なかなか補完は起きません。この前後に別の一連の動作が入っていて初めて、その一連の続きという”情報”を元に補完が行われるわけです。

それは、他の場面から”予測して”埋め合わせるからで、これが巧くいかないのは、あまりにも全体の情報が足りないせいですね。


さて、GIFアニメだと、秒間の絵の枚数を増やすことでぬるぬると動かせるわけですが(ニコ動あたりで手書きMADとか見てくれ)、これは小説の描写でも同じです。この絵のことをアニメ用語でセル画と言います。

枚数が少ないアニメ=描写が少ない戦闘、となります。

セル枚数が極端に少ないアニメは動きがカクカクしています。これで感情移入が果たせる人は大したモンです。かと言って、これをディズニー張りに増やしたって問題が起きます。

アニメーションというのは、一秒間に何枚のセル画を表示するかという枠がありまして、それをフレームと言いますが、ディズニーなんかはこれが一秒の動きで100枚とかやるんですよ。(大袈裟かな?)

けれど、これは機械がペラペラをやってくれるので、正確に一秒100枚でやってくれるんですね。だから、ぬるぬる動くように見えるワケ。


小説の描写の場合は、手で持つペラペラ漫画と思ったほうがいいです。それも読者のペラペラ速度に左右される。

また、物理的に表示枚数には限界があるわけですね。限界を超えた枚数を描いてしまったのが、先に述べた「間延びした戦闘シーン」というヤツなわけです。第二十八回で触れましたね。

すなわち、人間の手によるペラペラ速度には最適表示枚数とでもいうべき範囲が決まっている、という事になるわけですよ。視覚に映写される画像は、この範囲より少なければカクカクに、多ければスローモーションになる。


でも、ここでマトリックスを思い出してほしいんですね。

あの有名なシーンね。


あれ、そのまま、工夫無しで撮ってたら、スローモーなだけでスタイリッシュでも迫力あるシーンでも無かったわけですよ。描写のセンスがあるから、あのスローモーションは成功しているんです。

360度、主役の周りを回るカメラも、水中を進むような弾丸のCG処理も、表現のセンス。

アニメや映画のコマ一つずつが、いかに目新しいか、それで決まるんです。


予測で補完できるってことは、予測の範疇の事柄は、情報として刺激が少ないってこと。その刺激の少ないものを嫌ってほど間伸ばしして見せつけるのが、セル枚数の多いアニメーションのスロー。描写過多な小説。

コマの一つ一つを違うものにするために、マトリックスでは360度カメラを回したわけですよ。

これが、『事細かに分解して描写すりゃいいってもんじゃねぇ』と言った以前の言葉の本当のところの意味です。

優れた描写は、細かく動きを追いながら、文章自体は予測不能な表現を持ってくるもんなんだよ。腕を上げたから、次は腕を下ろしたと書くんだろ、と読者に先を読まれるような描写はしないんです。


想像するべき絵は予測出来ても、それをどう文章にしてくるか、ここを読まれてはいけないって事です。

だから、こういうシーンの描写には特にセンスが必要になってしまい、バランス感覚も必要になるって事です。

人間の時間経過の概念なんてのは、集中してりゃ短くなるし、ダレてりゃ長くなる、文章でも同じです。


けど、こと戦闘シーンに限って言えば、ダレてるよりはカクカクしてる方がまだマシってもんですよ。(笑



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