第十五回 批評者 (訂正改稿)
わたしの初期の作品は、情景描写とか背景描写が少ないものでした。
人物の動きと会話が主体で、へたすりゃ主人公の顔さえ読者任せでした。
好きなように想像してくれりゃいいと、舞台描写はほとんどしませんでした。
ちょっとしたきっかけがあって、情景描写やら風景描写で舞台そのものを主眼に作品を楽しむ読者がいる、という事を知ったんです。それまでは、そんなものは枝葉であり、読者は気にしないものと思っていたので驚きでしたね。それでも彼らそのものは少数派、マイノリティであり、そっちに合わせるべきとは思いませんが。
今の作品では割と情景描写にこだわりを持って書いてみたりしています。本気の作品は元に戻してますがね。
先にも言った過保護小説と合わせて、枝葉の解説に汲々しているような作品は、ごく一部にしかウケません。
ウケじゃないな、需要が少ないというべきですかね。
なのに、小説の感想欄などにはよく現れるんですよ。そういうのが好きな人の意見が。
で、作者が「この作品はどこが悪いのか意見を聞かせてください、」などと言おうものなら、ここぞとばかりに「描写が足りない、」「そこが何処なのか想像が出来ない、」といった意見を述べるのです。
そんなもの、枝葉の要求ですよ。(苦笑
これも先に言いましたが、舞台は特殊でなければいけない理由でもなければ平凡なものにしておけばいいんです。そこがモンスター学園だとか、ホグワーツのような寄宿舎でなくてはいけない理由が、ちゃんと考えてあり、またその設定が物語の主軸を占めていますか?
物語の根幹を考えた時にその設定がどうしても必要でないというなら、削ればいいんです。
本来はその程度の「枝葉にすぎない」という事を忘れてはいけません。特に他人に意見を述べるなら。
作者が間違ってしまうのは、描写が少ないせいで特殊な舞台設定が読者に浸透していないという点の見落としです。読者の理解がないままに、作者は浸透したものとして人物を動かしてしまう。齟齬が生じるのはこれが原因です。
どっちかに寄せればいいだけで、その設定がただの枝葉なら削ればいいだけの話なのです。無理に描写を多くして舞台設定を読者に了解してもらおうとすれば、ニッチへ向かうということです。
舞台設定の、本来は枝葉の、情景描写が大好きな読者などしょせんは少数派なのですから。
ちなみに、ホグワーツは海外小説であり、海外においてあの形式の寄宿舎学校というのはポピュラーですので、普通の学校の感覚で書かれてあるし読まれているのです。
メタというものを利用してある場合は、解説がもっと複雑です。
題名やタグを使い、「VRMMO」と表記した時点で、もうそのシステム面の詳しい説明などしなくてもいいのだと、最近になって気付いた次第ですよ。
メタ描写なのです、題名やタグにおける「VRMMO」という単語が、細かな解説やシステムの説明、舞台の一切合財を読者が了承済みというお約束になるのです。
現在のところは、このなろうにおいてのみ通用のメタでしょうけれど。
ソード・アート・オンライン、ログホライズンなどの認知が広がることで、あのSF設定がポピュラーになったのです。
宇宙空間を舞台にしたSF小説でいちいち無重力世界の解説などしないのと同じことです。
誰もが認知するポピュラーなことをわざわざ事細かに解説するのをなんと言いますか?
蛇足、です。
しかし、あまり好まない読者というのもいますね、VRMMOを好まない。そういう読者からすれば、蛇足だという感覚は理解の外なのです。そして、本来適切な書き方をしてある作品に対し、描写が少ないと文句を言ってしまう。メタを理解していないせいです。
そのジャンル、その系統に関して自身が門外漢であるかどうかをまず考えて、批評をするべきです。
旧『小説の(多分に独断)……』の頃には気付かなかったことですが。
このように、情景描写や舞台背景の説明というものは、読者によって多寡が変わるという事を忘れないでください。読者全員に最適となる描写の割合なんてものはありません。
49行目、「ソードワールド」⇒「ソード・アート・オンライン」に訂正いたしました。
『ソードワールドはTRPG用に作られた世界で、1.0も2.0もそれ自体で完結していて他の世界からの転移とか転生とかの要素は全くありません。特に1.0はハイファンタジーに近い物です。だから、ソードワールドがVRMMOとして扱われているのはとってもおかしな事なんです。』感想より引用
164k氏より指摘を頂き、上記の部分を訂正いたしました。
単純な勘違いによる間違い表記ですが作者本人はまるで気付いておりませんでした。ご指摘及び相違点の解説まで頂き、ありがとうございました。折角なので解説部を他の読者にもご紹介させて頂きます。




