姫と時間
「姫と時間」
ある日お姫様は、とぼとぼと街を歩いていました。
いろいろなことをかんがえていました。
考えれば考えるほど、ぐちゃぐちゃになってゆきます。
なにをかんがえていたかというと、
時間がほんとうにあるのか考えたのです。
時間が短くなったりながくなったりするのに、
それでも時間はみんなに平等だといいます。
お姫様は、お勉強をしている時間はつまらなくて、とてもながくかんじられるのに
こうしてじぶんが自由にすきなことをかんがえたり行動しているときは、
とてもみじかく感じられて、
”どうしてもっと一日がながくならないのかしら!”
だなんてかんがえるのです。
街のはじまで来て、お姫様はUターンします。
そしてこんどは、お城のほうにむかいます。
トコトコトコトコ。
ひとのすくない街のメインストリートで、
お姫様の靴の音がひびきます。
お姫様は、夕日をせおってお城へ歩きます。
ぽつりとだれかが言いました。
ときはいつだって平等です。
ときをどうやってつかうかなのです。
ときをもてあませば、ながくかんじるし
ときをちゃんとつかえば、みじかくかんじます。
おひめさまは、そうね、とひとりで納得します。
納得したところで、あれ、とおもいました。
お姫様は、ふと後ろをふりかえります。
おんなのこがひとり、メインストリートの真ん中にたっています。
ちょうど、お姫様と直線上にいます。
そして、おおきな夕日をせおっているのです。
おかげで、そのおんなのこは、顔やからだがまっくろで、
どんなかおをしているのか、ふくをきているのか、
まったくわかりません。
あなたはだれなの。
わたしとあなたはいつも一緒よ。
貴女が気づいていないだけ。
それじゃあわからないじゃない。
わかるわ。
おんなのこは一歩もゆずろうとしないので、
おひめさまはあきらめました。
ねえ、時間て不思議ね。そのときによって感じ方が違うの。
そうね。わたし、ゆったりとながれるときがすき。
わかるわ。考え事をしながら、流れる雲をみるの、
とても素敵よね。
おんなのこは、ふふふ、とくちにてをあてて笑いました。
お姫様も、つられて笑います。
だんだんと、夕日が沈みます。
おんなのこの黒さがもっと深くなります。
ねえ、あなたはどこにすんでいるの。
わたしおしろにすんでいるの。
そうなの。どこの国?
それよりもあなたは?あなたはどこにすんでいるの。
わたしはこの国のお城よ。
夕日がしずみます。
夜の空がおんなのこをおおっていきます。
なんだか、いっきにお姫様はさみしくなりました。
ねえ、あなたきえてしまうの。
どうして?
きえてしまいそうよ。
ねえ、こっちにいらっしゃいな。
おんなのこは、またふふふ、とわらいます。
笑う声が、ちいさくなってゆきます。
夕日も、くれてしまいます。
おひめさまは、おんなのこの腕をつかもうと、
はしって駆け寄りました。
いちばん星が きらり
ふとお姫様が、星に目をとられたとたん、
おんなのこはいなくなってしまいました。
おひめさまは、ぽつりと聞きました。
いつかまたあえる。
いつかきっとね。
・・・わたしをまっているのはなに?
どうしても不安になるのだけれど
わたしを見ているなにかが草陰から、じっとわたしをみているのだけれど、
でも、わたしはそれがなにだかわからない。
わからなくてもいいのかもしれない。
わたしはたゆたう時間に身をまかせて
ゆっくりとあるいているのだけれど。
せかすものはなに?
よんでいるものはなに?
わたし、まだいけないわ。
だってはしれないの。
足が重たいの。
まるで、時においてけぼりにされているみたいだわ。




