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姫と世界  作者: しき
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姫と星空

「姫と星空」



ある所にお姫様がいました。


お姫様はとてもおてんばわがままで、

王様も、お妃様も、家臣だって、

お姫様にかまってくれなくなってしまいました。


お姫様は、最初はそれを楽しんでいましたが、

だんだんと、寂しくなって、

誰かにかまってほしくって、

お城を飛び出しました。



お城をでて、街を歩いていきましたが、

なんとなく、今日は街を歩くのをやめました。

そして、向かった先は、森でした。


街のはずれの、どこまでもつづいている森。

(すくなくとも、お姫様にはそう思えたのです。)

木と木のあいだは、空がみえます。

そこから、きもちよく太陽のひかりがはいってきて、

お姫様は花を摘んだり、珍しい虫を見つけたり、

見たことのないきのこをみつけたりと、

街とは違う楽しさに夢中になりました。


そこで、ひとつだけ、気になったものがありました。

木の幹が、かおに見えるのです。



まるで、木のおばけだわ。



お姫様は、それはそれで、とてもたのしいものにかんじられました。

わらっているかお、かなしそうなかお、

くるしそうなかお、おこっているかお。

木にも、感情があるのね。


どんどん、どんどん、森の中にはいってゆきます。

そこで、きらきらとひかる、湖をみつけました。

とてもきれいなのです。

湖のまわりには、もともとは建築物であったはずの柱や、

階段が白い廃墟となって、

泉にういたり、しずんだり、水面からかおをだしたり、

それはそれは、太陽のひかりにあたっていっそうまぶしくかがやいていました。


お姫様は、あまりのきれいな景色に、

はしって近寄りました。

水は、かぎりなくきれいです。

ちいさな、魚がおよいでいます。

むこうには、はすの花が水面に浮いてうつくしさをきそっています。


お姫様は、一休みすることにしました。

ちょん、と倒れた湖のそばのしろい柱にこしかけて、

お城の台所から盗み出したサンドウィッチをポーチから取り出して

ひとくち、ほおばります。


二つ目を食べようとしたとき、どこからか、たてごとの音が聞こえてきます。

お姫様は、とても心地よいたてごとの音が、

どこから響いてくるのかと、かおをみまわしました。


すると、湖のまんなかにひとつだけ島のようにういている、

白くて丸い形の土台と、それを囲むようにたっている柱、

土台から水に向かってのびる階段。


そのなかに、倒れた柱にこしかけて、

たてごとをひいている金髪の、男の人。

お姫様は、サンドウィッチを早く早くたべて、

包んでいたハンカチをポーチにおしこんで、

湖の水を手ですくって飲んで、

ポーチにすいとうを無理矢理入れて、

湖の真ん中へはしりだします。


おひめさまは、水面からかおを出している廃墟たちを器用にえらんで、

どうにか男の人のもとへたどり着きました。



こんにちは。


あぁ、こんにちは。はじめまして。



近くで見る男の人は、とてもうつくしいひとでした。

ととのったかおに、ながめの金髪を、まえがみも、うしろがみも、

すべてうしろでひとつにむすんでいます。

どうやら、身なりからして、高貴な人のようです。

男の人は、たてごとをひくのをやめて、

お姫様に、どうぞ、ととなりに座るようにうながします。



あなたのお名前は?


名乗るほどのものではありませんよ。

ただの、たびのものです。


素敵な曲だわ。


そうですか。ありがとう、ちいさな貴婦人。



男の人は、ふわりと笑顔になりました。

お姫様は、その笑顔がとてもうつくしかったので、ついつい、こういいました。



あなたはとてもびじんだわ。

とっても、うらやましい。


そうですか。ですが、わたしをうらやましがるなど、

なんてふしぎな貴婦人。



おとこのひとは、また、たてごとがあたりにひびきます。

お姫様は、しばらく、ききいっていました



ねえ、あなた、いちどお城にくるといいわ。

おとうさまやおかあさまにこのハープを聞かせてあげたいの。

ね、いいでしょう?


それは、できないのですちいさな貴婦人。

わたしは、旅のものですから、

お城だなんてすばらしいところにいけるような身分ではないのです。


でもあなたはそんなきれいなかおをして、ちゃんとした服もきているじゃない。

それならどんなにひくい地位だってわからないわ。



おとこのひとはこまった顔をして、わらいました。

そして、お姫様の言葉に返事もせずに、

たてごとをひきつづけます。


どれくらいの時間がたったかわかりません。

おひめさまには、とても短い時間にかんじられました。

何曲か曲がおわって、メロディがとぎれると、

お姫様はなんとなく、こういいました。



森の木たちには、表情があるのを、あなたはしってる?


表情?


そうよ、かおがあるのよ。

みんなそれぞれよろこんだり、かなしんだり、

いろいろなかおをしているのよ。



おひめさまは、自慢げにそういいました。

おとこのひとは、不思議そうなかおをします。

そして、すぐに、ふわりと笑顔になりました。

目をつぶって、ゆっくりとその瞳をひらいて、

そうか、とつぶやきます。



では、ちいさな貴婦人。

星はこちらに話しかけてきていることを知っていますか?


しっているわ。夜になると、きらきらまたたくの。


じゃあ、雨は、歌をうたうのをしっていますか。


そうね、雨にはいろいろなおとがあるわ。

じめじめしてとても不快だけど、

あれはうたっているのかもしれないわ。


そうですか。



おとこのひとは、今度はうれしそうにわらいます。

そして、そっとたちあがると、柱にやさしくふれました。

やさしいえがおのまま、おとこのひとははなしはじめます。



ここはひとつのお城でした。

このお城にすんでいたひとたちは、

木と会話し、星と歌い、花と踊り、風とわらいました。


しっているわ、そうゆうの、自然崇拝というのよ。


そうですね。

わたしは、この国が大好きだったのですが、

ずいぶんとまえに、すっかり滅びて、水がたまって、今のようになってしまいました。


滅びた後もきれいだわ。

でもわたし、自分の国が滅びるとはおもわないの。

だっておとうさまがおさめているのだもの。

あなたも、そうおもうでしょう?



おとこのひとは、お姫様にむきなおると、そうですね、とちいさく言って、

かんがえこむように、しゃべらなくなってしまいました。

お姫様は、彼が、何を考えているのかまったくわかりませんでした。



ちいさな貴婦人、もうお帰り。

太陽がかくれると、森につかまって帰られなくなってしまうよ。


そう、でも、それはそれでたのしそうだわ。

あなたとももうすこしお話がしたいの。

ねぇ、もうすこしだけ。いいでしょう。


それはできません。わたしはもう、出発しますから。

では、さようなら、ちいさな貴婦人。



おひめさまは、お願いを聞いてくれなかったことがつまらなくなって、

おとこのひとが言った通り、お城へ帰りました。



その夜、お姫様は、夢で見知らぬ国にいる夢を見ました。

真っ白な、まるでパルテノン神殿のような、ちいさなお城があります。

お城の入り口には、あのおとこのひとがすわって、竪琴をかなでています。


おとこのひとは、お姫様に気づくと、

にこりとわらって空をゆびさします。



すると、月があります。

星があります。


お城では見たこともなかったような、

満天のほしぞらです。



お姫様の目からは、


ひとつだけ、なみだがでました。

















なんてうつくしい、せかい。


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