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姫と世界  作者: しき
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姫と盗賊



「姫と盗賊」



ある所にお姫様がいました。


お姫様はとてもおてんばわがままで、

王様も、お妃様も、家臣だって、

お姫様にかまってくれなくなってしまいました。


お姫様は、最初はそれを楽しんでいましたが、

だんだんと、寂しくなって、

誰かにかまってほしくって、

お城を飛び出しました。


お姫様は、ずんずんと街の中へはいってゆきます。

いまにも踊りだしたいくらいの、たのしいきぶんです。

たのしくてたのしくて、暗くなってもきづきません。

やがて街のあかりがともりはじめると、

お姫様も気づきはじめます。


『夜だわ。』


お姫様は、帰ろうとおもって、街のメインストリートを、

お城に向かって走りはじめました。



すると、途中で、お姫様はだれかに、つれさられてしまいました。

家と家のあいだからあらわれた、まっ黒なひと。

お姫様は、こわくなりました。

もっとはやく、お城へ帰ればよかった!

でもそんな後悔も、もうおそいのです。


そうして、お姫様はしばらくして、街のはずれのちいさな森の、

隠れるようにたっている、ちいさな小屋にたどり着きました。

その小屋に入ると、ぱぁっとオレンジのあかりがまぶしく、

でもそれを遮るように、中には黒い服を来た男の人でいっぱいです。

お姫様は、いやだな、と思いました。


ばたん、と強く乱暴にとびらがしめられて、

お姫様はすこしびっくりしました。

それで、ロープでぐるぐるまきにされて、

小屋の、ランプもついていない部屋に入れられてしまいました。


そこに、黒い服を来た、男の人とふたり。

あかりといえば、月のひかりと、星のひかり。

部屋の外からは、あまり上品ではない笑い声と、話し声と、

がちゃがちゃと食事をする声が聞こえてきます。


お姫様は、殺されてしまうのではないかしら、と不安でいっぱいになります。

不安が不安を呼んで、涙がでてきてしまいました。

一緒にいた黒い男の人は、ぎょっとして、

お姫様にかけよりました。



どうしたのです、お嬢さん。


こわいわ。あなたはわたしをころすの。


・・・きっと。



お姫様はなお泣いてしまいます。

きっと、だなんて。

じゃあわたしは死んでしまうかもしれないじゃない。

男の人は、それでまた、困り果ててしまいました。

とにかく、お姫様をなだめようと、男の人は話しかけることにしました。



お嬢さん、お嬢さんは、どこのお家の娘さんだい?


しらない、しらない。


じゃあ、おなまえは?


いいたくなんてない。


どこにお住みで?


いいたくないといってるでしょう!



なんど話しかけても、この調子です。

男の人も、もう黙り込んでしまいました。

でも、お姫様は自然と、泣くのをやめていました。

そして、お姫様の方から、はなしかけたのです。



人さらいのおにいさん、ロープをはずしてほしいの。

きつくむすんであるから、いたいわ。

それに、あなたの顔を見せてほしいの。



男の人は、どちらの言葉にも、うろたえてしまいました。

ロープをはずせばにげだしてしまうかもしれない。

逃げ出してしまえば、罪を問われるのはじぶんです。

怖い思いをするのは、じぶんです。

それに、顔を見せてしまえば、じぶんが誰だか、わかってしまいます。

それでは、罪をおかしてどんなに遠くへ逃げても、

顔がわかっているのであればすぐにつかまってしまいます。


でも、お姫様がはやくはやくとせかすので、

少しくらいなら大丈夫と、ロープをはずして、

目の下まで隠していた覆面も、はずしてしまいました。

お姫様は、とたんに元気になって、

にこにことおとこのひとに、今日あったできごとをはなしはじめたり、

おなかがすいたとわめいたり、

いつもどうりのお姫様にもどります。


おとこのひとは、きっと年齢的に若いはずなのですが、

寝不足でできたくまや、つかれきったかお、

うすい髪のせいで、老けて見えました。

ですが、くまのできた目をほそめてわらいながら、

お姫様としゃべったり、あそんだりしていました。


お姫様は、不安なんてありませんでした。

お城にこのおとこのひとがいたら良いのに!と考えるほどでした。

どれくらいの時間がたったのでしょうか。

お姫様は、おとこのひとに、こういいました。



ねえ、あなた、お城へいきましょう。

わたしにつかえるのよ。

そうすれば、わたし、まいにちたのしいもの。



おとこのひとは、こまった顔をしました。

すこし、だまって、それから顔をあげてお姫様をみます。



おじょうさん、わたしはとうぞくですから、お城へ行くことはできません。

もし、あなたがわたしをお城につれていってしまったら、

あなたは王様から、怒られてしまいます。

わたしは、お嬢さんがそんなことになってしまったら、

一生後悔することでしょう。



お姫様はおもしろくなさそうに不機嫌な顔をします。

そして、おもむろに立ち上がると、

部屋の、たった一つのちいさな窓から、外へでていこうとしました。

さすがのおとこのひとも、おどろいて、お姫様をつかまえます。



はなして!わたし、出ていくわ。

お城へかえるのよ!!



お姫様は激しく抵抗しました。

たたいたり、けったり。

おとこのひとも、抵抗するお姫様を一生懸命捕まえようと手をのばします。


そうしているうちに、騒ぎをききつけたほかの男たちが、

部屋に入ってきて、お姫様をおさえようとします。

お姫様はおおきな声で悲鳴をあげて、助けをもとめます。

そこで、ひくいこえが、こうさけびました。



ころしてしまえ!



だれかが、銃を、とりだしました。

お姫様は、まだ、泣き叫んで抵抗しています。



たすけて、たすけて、おとうさま!



おおきなおとが何度もしました。

同時に、ばたん、と何かがたおれる音がしました。

お姫様は、その瞬間に、小屋の外にいました。

そして、じぶんのもてるかぎりの力をふりしぼって、

お城へとはしりはじめました。




ちいさな部屋に残されたのは、ばったりとたおれてうごかない、

盗賊の男たちでした。

そして、あの男の人の手には、ちいさな鉄砲が。




おじょうさん、

最後に貴女とであえてよかった。

今までで一番、楽しい時間でした。

わたしは一生、お城に行くことも見ることもができませんが、

でも、

こころだけは、

いっしょにお城にいけたでしょうか。




あなたは、

わたしを、


一生おぼえていてくれるでしょうか






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