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姫と世界  作者: しき
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姫と少年

「姫と少年」



ある所にお姫様がいました。


お姫様はとてもおてんばわがままで、

王様も、お妃様も、家臣だって、

お姫様にかまってくれなくなってしまいました。


お姫様は、最初はそれを楽しんでいましたが、

だんだんと、寂しくなって、

誰かにかまってほしくって、

お城を飛び出しました。



お姫様は楽しそうに、街の風景にある、

いろいろなものを見てゆきました。

でも、お姫様のおてんばさは、町の人にも多く広まっていましたから、

お姫様は、人々の目の冷たさに、また寂しくなりました。


これでは何も変わりません。

お城と何も変わりません。


それで、お姫様はまたずんずんと、街の奥に入ってゆきました。

すると、瓦礫の山のような、お金のない人々が住む区域につきました。

瓦礫の中には、お金のない人々が住んでいました。

お金のない人々は、決してきれいな姿ではありません。

においも、決して良いにおいはしません。


でも、瓦礫は、お姫様にとってただ単に初めて見る遊びの場でした。

のぼったり、くずしたり、ジャンプしたり。

服が汚れるなんて、気にしません。

そんなことをしていると、お姫様は、

突然足を滑らせてしまいました。


ガラガラガラー

ずるり、どたん。


足が刺すように痛みます。

みるみるうちに、はれていきます。

足を、ひどく、くじいてしまいました。

お姫様はいたくていたくて、泣きはじめました。


すると、お金のない人々のなかから、

お姫様とおなじくらいの年の、ひとりの少年がかけよってきました。

お姫様は言いました。



お医者さまを呼んで。


おひめさま、それはできません。


どうして、私の言うことが聞けないの、私はこの国の姫なのに。



少年はこまった顔をしましたが、すぐに、あるけないお姫様をだきあげて、

じぶんの家にはこびました。

家の中は、狭くて、ベッドと、一つの棚と、台所があります。

そして、ちいさなテーブルと、イスが3つ。

窓はくぐもって薄暗い。まだ日の差す昼間なのに。


お姫様は、ベッドにちょこんとおろされました。

すると少年は、痛がる姫をおいて、すぐに家から出て行って、

みずぼらしい姿のお医者様をつれてきました。

お医者様は、お姫様の足を見て、足を棒で固定して、

安静にしているようにと言いました。



お医者さま、とてもいたいわ。おくすりはないかしら。


おひめさま、このようなところに、

おくすりなどあるわけがありません。

あなたはこの国のお姫さまなのでしょう。

すぐにお城へ戻るべきです。



そういうと、お医者さんは少年の家を出てゆきました。

家の中には、少年とお姫様だけです。

お姫様は、いたいいたいといいはじめます。

少年は、こまりはててしまいました。



いたいのいたいの、とんでいけ。


そんなの、きくわけないじゃない。


いたいのいたいの、とんでいけ。


いたいわ。そんなおまじない、きかないのよ!



しばらくそんな会話がつづきました。

あんまり一生懸命おまじないをかけるので、いたい、というのをやめました。



・・・あなた、お父様はいないの?


えぇ、はやりの病気でなくしました。


おかあさまは、どんな方?


母はわたしがうまれてすぐになくなったので、どんな人だか。


そう、そうなの、ごめんなさい。


いいえ、お姫様、なにもあやまることはありません。



お姫様は、少年がとてもかわいそうだとおもいました。

両親もいなければ、お金もなくて、

ひとりでこんな狭い所にすんでいるなんて。

でも、この世界で、わたしにただひとりかまってくれるひと。



ねえ、あなたを買うから、お城へきなさいな。


はい?


もしくはお金をあげるわ。

だからわたしのいうことをきいて。

そしたらわたし、さみしくないもの。


おひめさま、


あなただってお金をもらえて、自由になれるわ。


おひめさま、


だからあなたを買うわ。


おひめさま、ちがうんです。

わたしはお城へは行きません。お金も必要ありません。


どうして?あなたには何もないじゃない。


いいえお姫様、わたしには、友人や、親戚や、

みんなが居ます。命だってあります。


わからないわ。


それで、住む家があって、寝ることもできて、

ゆっくりと食べることのできる場所があって、


そんなのあたりまえだわ。


それで、わたしは、十分なのです。


そんなの、満たされないわ。


お姫様、わたしが、今、お金や地位や、名声をえても、

きっと今までと変わらない生活を望む日が必ずくるのです。

きっと今までと変わらない生活を送る日がまたくるのです。

わたしが、今、お金や地位や、名声をえても、

失うものは今持っているものすべてでしょう。

失うものは今持っている大きなものでしょう。


そんなの、わからないわ。


おひめさま、いつかわかります。



少年は、そう言って、ほほえみました。

おひめさまは、少年が言うことを聞いてくれないことが面白くなくて、

今度はお城にかえるとわめきはじめました。

そこで、少年は、お姫様を背負って、

お城の門の、兵士から見えない所に下ろしました。

(少年だって、お姫様をけがさせたと勘違いされたくありませんから。)



さようなら、おひめさま。


・・・。


さようなら。


・・・。


さようなら。


・・・ねぇ、あなたのいったこと、

すこしだけ、ほんのすこし、わかる気がするわ。


そうですか。


・・・・さようなら。


さようなら。



おひめさまは、片足でぴょんぴょんと、門まではねてゆきました。

少年は、お姫様がお城の中に入るまで、みおくっていました。


少年が目をふせると、

風がさぁっとふいて、





ぽつり














『きれいごとにきまってるじゃないか。』





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