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桜龍の少年1



「いてぇ」

「いてぇ、じゃねぇ。鉄平、テメェいつまで寝くさってやがる」



頭に鈍い痛みを感じ目を開けると草場が顔をしかめて自分を見下ろしていた。どうやら殴られたらしい。



「だって痛いんですよ。第一、寝てないっすよ、俺」

「言い訳はいらねぇ」

「…はぁ、すんません」


頭をかきながら適当に言葉を返すが、草場が凄味を効かせてにらみつけて来たので今度はすみません、と謝罪を述べながら頭をさげる。

そんな鉄平の様子に草場は呆れたように溜め息を洩らし、顎をしゃくった。



「組長がお前をお呼びだ。早く行け」

「……俺なんかしましたっけ?」

「お前のことなんざ知らねぇよ。いいからさっさと行け」

「はぁ…じゃあ失礼します」


頭をかきながら名残惜しそうに横になっていたソファから体を起こし、鉄平は草場に軽く頭を下げて応接室を出る。



その足取りがふらついている様に見えて、草場は眉間に皺を刻んだ。



「おい」


鉄平の背中を見つめながら低く声を発すると、向かいのソファに座ってノートパソコンのキーボードを叩いていた男が顔を上げる。



「はい、」

「あいつ…シャブかなんかやってんのか」

「鉄平の奴ですか? さぁどうでしょう……ちと分からないですが……調べますか」

「…後で報告しろ」


唸るようにいうと男は小さく頷き、ノートパソコンを閉じてから小脇に抱え、足早に退室する。

静かになった部屋の中で、草場は溜め息をついた。

濃紺のスーツの胸元から煙草を取り出すも、掴んだ感触に小さく舌打するとそのままぐしゃりと握り潰す。


そして忌々しげに顔をしかめると、先ほどまで鉄平が寝ていたソファにどさりと腰をおろし、目を閉じた。


参加団体100、総組員3万人の規模を誇る指定暴力団桜龍会の直系参加の1つである広域指定暴力団、嘉島組。組は勿論のこと、桜龍会に刃向かう者に対しては容赦なく報復を与え、相手が屈服するまで冷酷非道な仕打を行う武道派として有名だ。

そしてその嘉島組を率いる嘉島弘輝[カシマコウキ]は、その行動力と人望の厚さから傘下団体の中でも圧倒的に多くの組員を抱えていた。



そしてその嘉島が、つい最近一人の少年を養子に迎えたのだ。



この話題は瞬く間にその筋な者達に広まり、皆を喫驚させた。



組長が跡取りを持たぬ場合の養子はそう珍しいものではない。しかし嘉島には、既に息子がいたのである。

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