表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます  作者: 久遠翠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/14

第05話「Kの正体と、芽生える想い」

 役員会議でのプレゼンテーションの成功は、私の社内での立場を確固たるものにした。

 懐疑的な視線を向けていた社員たちも、今では私の分析に真剣に耳を傾け、「相沢さんの予測通りだった」「次の戦略もぜひ意見を聞きたい」と、積極的に話しかけてくるようになった。


 地味で、誰かの陰に隠れるようにして働いていた明誠商事時代とは、まるで違う。

 自分の能力が認められ、必要とされる喜び。それは、私が忘れかけていた、働くことの誇りを取り戻させてくれた。


 そして、そんな私を誰よりも喜んでくれたのが、蓮だった。


「すごいじゃないですか、美月さん。もう、すっかり会社の救世主だ」


 ある日の夕方、仕事を終えてオフィスを出ると、エントランスで蓮が待っていた。

 彼の言葉に、私は照れくさくて俯いてしまう。


「そんなことないです。私一人の力じゃありません」


「謙遜しなくてもいい。あなたの功績ですよ」


 彼はそう言うと、自然な仕草で私の手を取り、歩き始めた。

 突然のことに心臓が跳ねる。彼の大きな手に包まれると、不思議と安心感を覚えた。


「今夜、少し時間ありますか? 美月さんと、一緒に行きたい場所があるんです」


 彼に連れてこられたのは、都内を一望できる、高層ビルの最上階にあるバーだった。

 窓の外に広がる無数の光の粒が、まるで星空のように美しい。


「ここは、僕が会社を立ち上げる前、よく一人で来ていた場所なんです。この景色を見ながら、いつか、この街を動かすような大きな仕事を成し遂げたいって、夢を見ていた」


 彼はカウンターに並んで座ると、静かに語り始めた。


「五年前、事業がうまくいかなくて、もうダメかもしれないと思った時があった。そんな時、偶然出会ったのが、“K”のレポートだったんです」


 彼の口から“K”の名前が出て、私は息を呑んだ。


「そのレポートは、当時まだ無名だったある技術の将来性を予測するものだった。誰もが見向きもしなかったその技術に、僕は賭けてみることにした。“K”の分析を信じて。……それが、今のホライゾン・テクノロジーズの基盤となっているAI技術なんです」


 彼の告白に、私は言葉を失った。

 私の何気ない分析が、彼の、そして会社の運命を大きく左右していたなんて。


「だから、僕はずっと“K”に感謝している。そして、いつか会って、直接お礼が言いたいと思っていた。……美月さん、もう一度だけ聞かせてください。あなたは、やっぱり“K”なんですよね?」


 彼の瞳は、真実を求めるように、まっすぐに私を見つめていた。

 もう、隠し通すことはできない。私は、小さく、しかしはっきりと、うなずいた。


「……はい、私が“K”です」


 私の告白を聞いた蓮の顔に、驚きと、そして深い納得の色が浮かんだ。

 彼はゆっくりと息を吐くと、心からの笑みを浮かべた。


「……やっぱり、そうだったんだ。初めて会った時から、どこか惹かれるものがあった。鋭い分析力だけじゃない。その奥にある、物事の本質を見抜く、澄んだ瞳に」


 彼は私の手を、優しく両手で包み込んだ。


「ずっと、尊敬していました。そして、今、こうして目の前にいるあなたに……僕は、惹かれています。一人のアナリストとしてだけでなく、一人の女性として」


 彼の突然の告白に、思考が止まる。

 頬が、耳が、熱くなっていくのがわかった。高鳴る鼓動が、彼に聞こえてしまいそうだ。


「仕事のパートナーとして、あなたをスカウトした。でも、一緒に過ごすうちに、その気持ちはどんどん大きくなっていった。あなたの聡明さに、ひたむきさに、そして時折見せる、はにかんだような笑顔に、どうしようもなく惹きつけられているんです」


 彰は私のことを「可愛げがない」と言った。でも、蓮は、私の笑顔に惹かれると言ってくれる。

 私のすべてを、肯定してくれる。


「美月さん。僕と、付き合ってもらえませんか」


 彼の真剣な眼差しから、目が離せない。

 窓の外の夜景が、滲んで見える。それは、嬉し涙だった。

 婚約破棄の絶望から私を救い出してくれた人。私の本当の価値を見出し、光の当たる場所へと導いてくれた人。


「……はい」


 か細い、けれど確かな声で、私は答えた。

 その瞬間、蓮の表情が、安堵と喜びに満ちて、柔らかくほころんだ。


「よかった……」


 彼は私の手を引き、そっとその腕の中に抱き寄せた。

 彼の胸に顔をうずめると、落ち着いた香水の匂いと、力強い心音が伝わってくる。


「ありがとう、美月。必ず、幸せにする」


 耳元で囁かれたその言葉が、私の心の奥深くまで、温かく染み渡っていく。


 こうして、私たちは恋人になった。

 伝説のアナリスト“K”と、その才能に惚れ込んだ若き社長。それはまるで、小説の中の物語のようだったけれど、紛れもない現実だった。


 地味なOLだった私が、仕事でも、プライベートでも、最高のパートナーを得た。

 失ったものより、はるかに大きくて、かけがえのない宝物。

 蓮の腕の中で、私は新しい幸せの始まりを、確かに感じていた。もう、過去を振り返るのはやめよう。これからは、この人と一緒に、輝く未来だけを見ていこう。そう、心に誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ