いちりん一輪
掲載日:2026/02/24
なぜ、泣くのかと
両手いっぱいに悲しみのかけらを掬いあげて
じぶんを認められない息継ぎが
君が立ちあがれない海の深さの果てで
抱き寄せ、抱きしめてくれる理由なら
朝の光は死のようだ
抱きしめたくても抱きしめられない
せつなさの重ささえ
心を眺める痛みに涙を流しながらでも
すべてを心に残したまま
潜りゆくしかない
朝の光から
深くへ逃げゆく夢ためにも
なぜ、歌うのかと
身体中を震わせながら夢の儚さを問うのなら
君を愛さずにはいられない蜃気楼が
僕の虚しい影絵のような不出来な笑顔を
簡単にかき消してくれる永遠だというのなら
朝の光はキスのようだ
あでやかな花が
いちりん一輪咲き誇り
いずれ新月の夜に萎れ、うなだれる
さだめの中の
はなたれた
最後の一輪の
好ましい一瞬だったとしても




