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第4話 ローザ その後

ダリル様の婚約者がフランに変わった直後、留学先から、ルイ兄様がものすごい勢いで帰ってきた。

私より6歳年上のルイ兄様。いつも冷静で淡々としているのに、今回は、帰ってくるなり怒り狂った様子で両親に詰め寄った。


「何故、ローザをないがしろにしたのです! しかも、人の婚約者を奪った者の後ろ盾になり、新たに婚約を結ばせるなど信じられない!」


「ルイ、落ち着け! ローザをないがしろになどするわけがない。ローザとダリル君の婚約は政略の意味は薄いし、なにより、ダリル君とフランは思いあっている。ならば、ローザと婚約を解消して、フランと結びなおしたほうが、三人にとって最良だろう?」


焦ったように説明するお父様。


「そうよ、ルイ。それに、フランは親元を離れているのよ。叔母として、私が後ろ盾になるのは当たり前よ。それに、好きあっているふたりを認めてあげなかったら、妹の時のようになってしまうもの……」

と、悲しそうな顔をするお母様。


ルイ兄様の眉間のしわが更に深くなった。


「は? なに、馬鹿なことを言ってるんですか、母上? ふたりが好き合っているからローザを傷つけてもいいと? いいわけないだろう!」


普段とは別人のように、声を荒げるルイ兄様。


両親が言葉をなくして、黙り込んだ。

私のために怒ってくれるルイ兄様の姿に、凍り付いていた心が、ほっとあたたかくなった。

 

それにしても、震えあがるくらい怖いルイ兄様。

両親は、なんだか、ぺしゃんこになっている。

 

そんな怒れるルイ兄様にフランがすり寄った。


「ごめんなさい! 私がダリル様を好きになったから。ローザを悲しませるつもりはなかったんです……!」


ダリル様にするように、涙を流しながら、ルイ兄様を見上げたフラン。


ルイ兄様は冷たく鋭い目でフランを見据え、吐き捨てるように言った。


「なんで、こんなのを……。だから、俺はあんな馬鹿との婚約は反対したんだ……。まあ、いい。人の婚約者を奪うなど泥棒と同じだ。さっさと、この屋敷から出ていけ」

と、ルイ兄様はフランに言い放った。


フランの顔が変わった。

愛らしい泣き顔から一転、憎々し気にルイ兄様をにらむ。

その変わりように、ぞっとした。


結局、ルイ兄様が侯爵家に出向き、話をつけ、フランは未来の侯爵夫人としての教育を受けるという名目で、婚約中でありながら侯爵家に移り住むことになった。


ダリル様のことはもういいけれど、まだ、ふたりのことを耳にしたくはない。


「ローザ。俺の留学している国におまえも留学するか? 学園には女子寮もある」

というルイ兄様のすすめにのることにした。


私まで留学するのは寂しいと反対するお母様。 

その反対の声は、ルイ兄様の冷たい視線によって瞬殺された。


ということで、私は、すぐに隣国へ旅立った。



  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



あれから3年が過ぎた。


私は留学先の学園を間もなく卒業する。

仲の良い友人もでき、とても楽しい学園生活だった。


そして、卒業しても、この国で住み続けることにした私。


なぜなら、魔術師として活躍しているフェリクス様と結婚することを決めたから。

フェリクス様はルイ兄様の親友。


留学したばかりの私は、ルイ兄様に沢山面倒をみてもらっていた。

必然的に、親友のフェリクス様とも会う機会が多かった。


不慣れな国で不安そうにしている私を、いつも笑わせてくれたフェリクス様。

一方的に泣かせて喜ぶダリル様とは違って、フェリクス様は私の心に寄り添い、気持ちを明るくさせてくれた。


気がついた時には、もう、フェリクス様のことが大好きになっていた私。

そんな大好きなフェリクス様と結婚できるなんて、私は本当に幸せだ。


だから、あの時、フランがダリル様の気持ちを奪ってくれて、本当に良かった。

おかげで、この国に留学して、愛するフェリクス様と出会えたのだもの。


もう二度と、ふたりに会うことはないだろうけれど、どうぞお幸せにね。

次回、最終話になります。よろしくお願いします!

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