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『先生、あのキスは本気です。 ―元教え子は国民的俳優になって帰ってきた。そして今、秘密の恋が始まる。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
【第三章続編】『先生、あのキスは本気です。―ふたりの時間、未来の約束―』
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第6話「ママの涙を見た日」



金曜日の午後。

遥香の教室で、トラブルが起きた。


言葉を話せなかった転校生・小田結依が、給食中に突然泣き出し、クラスメイトに手を上げかけたのだ。

理由も話さない。誰にも説明しない。

クラスは騒然となり、他の保護者からも苦情が入り始めていた。


(……やっぱり、私じゃ無理なのかな)


教師として、母として、心を砕いてきた。

けれど結依の心は開かず、どこか遠いまま。


放課後、職員室で書類整理をしていると、指が震えてペンを落とした。


(ダメだ……私、崩れそう……)


その夜。


帰宅して子どもたちを寝かせた後、

リビングのソファでぼんやりと座っていた遥香の目から、一筋の涙が落ちた。


「……私、先生に向いてないのかな……」


ガチャ。

玄関の扉が開き、湊が帰ってきた。


「……ただいま。今日、早く終わったよ」


いつものように笑顔で近づいた湊は、遥香の涙に気づいて表情を曇らせる。


「どうしたの? 遥香……泣いてる?」


遥香は首を横に振ろうとしたが、それすらうまくできなかった。

そのまま湊の胸に顔を埋め、声もなく震える。


湊は何も言わず、ただ彼女を優しく抱きしめ、背中をそっと撫でた。


「……がんばってるの、知ってるよ。

子どもたちも、学校の子たちも、君のこと大好きだ。

でも……疲れた時は、ちゃんと泣いて。全部、俺が受け止めるから」


遥香は、涙まじりの笑みを浮かべた。


「……あなたの前だと、弱くなれるの。不思議だよね」


「それが“夫婦”ってやつだろ」


そして湊は、彼女の頬にそっと口づけを落とす。

柔らかく、ぬくもりを残す、優しいキス。

次に、額に。そして唇に。


「先生の涙は、俺だけが知ってていい」


遥香はようやく、言葉を絞り出した。


「ありがとう……湊。

私、また明日、頑張ってくる」


その夜――

2人は寝室で静かに抱き合いながら、何も言わずに深くキスを重ねた。


言葉なんて、いらない。

あなたがいるから、私はまた“先生”でいられる。



次回:

第7話「パパ、人気投票1位」

子どもたちの学校行事で思わぬ“注目”を浴びる湊。

父として、俳優として、夫として――「完璧すぎる男」に嫉妬する保護者も出現!?



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