《続編 第6話》「僕には、守る家があります。」
都内某スタジオ。
湊が出演する映画のヒット記念インタビューが、全国生放送で放映される日が来た。
スタジオのスタッフからは事前にこう伝えられていた。
「今回はプライベートに少しだけ触れさせていただきます。
“家庭を持った上での表現の変化”という切り口です。名前や奥様の詳細は出しません」
それでも湊の表情は、どこか緊張していた。
楽屋の鏡前。
携帯に届いたメッセージには、たった一言。
「大丈夫。私も、子どもたちも、テレビの前で観てるから」
それだけで、胸の奥に芯が通った。
* * *
番組が始まり、映画の話題が一通り終わったあと、司会者が尋ねる。
「一之瀬さん、今回の作品では“父親役”がとてもリアルでしたね。
何か、プライベートと重なる部分も?」
湊は、一呼吸置いて、真っすぐ前を見た。
「……はい。実は、結婚していて、子どももいます。
双子の兄妹です。今、小学生で、毎日“人生”という脚本に出演中です(笑)」
スタジオが一瞬だけ静かになる。
「以前は、“守るもの”が自分の将来だけだった。
でも今は、“帰る場所”がある。“守りたい誰か”がいる。
そう思えるようになってから、役の演じ方も、人生の選び方も変わりました」
司会者は少し驚いた顔で続ける。
「……では、結婚や家族は“足かせ”ではなく、“翼”になった?」
湊は穏やかに笑った。
「まさに、その通りです。
仕事でどんな遠くに行っても、僕には、**“守る家”**がありますから」
放送終了後、その言葉はSNSやニュースサイトで一気に拡散された。
「ついに湊くんがパパって言った…!」
「非公表だけど、リアルに泣けた」
「“翼”って言葉、最高すぎた」
「奥さんは一体誰? でも幸せでいてほしい」
それは、決してスキャンダルにはならなかった。
むしろ、“彼を支えている家庭”への称賛の声が溢れていた。
* * *
その夜。
自宅では双子がテレビの前で正座していた。
「ねぇママ、パパ“守る家”って言ってたね!」
「うちのことだよね!? かっこよかったよね!?」
遥香は、照れくさそうに笑いながら、2人をぎゅっと抱きしめた。
「……そう。あなたたちがいるから、パパはパパになれたのよ」
そのとき、湊が帰宅し、リビングに入ってきた。
「ただいまー。……テレビ、観た?」
「観たよっ!!」
「かっこよすぎた!!」
「ねぇパパ、今度さ、“守る家族の物語”って映画出てよ!」
「……主演:俺、原作:ママ、脚本:結咲、主題歌:奏翔って感じ?」
「それ超たのしそう!!」
家族全員が笑い合ったその夜、湊はふとカバンからあるものを取り出した。
「じゃーん、これ何だと思う?」
「なにそれ? 白い封筒…?」
「“年賀状”。今年は家族で撮った写真で作ってみたの」
開くと――松本城を背景に、家族4人が寄り添う笑顔の写真。
「一之瀬家より/今年も笑って、学んで、愛していこう。」
遥香は目を丸くして、ふと呟いた。
「……こんな“普通”が、一番、特別なんだね」
湊は、彼女の手をそっと握る。
「うん。“普通を守るために、俳優を続ける”って決めたから」
その言葉に――
“先生”として、“母親”として、
そして一人の“女性”として、
遥香は心からの幸せを感じていた。
続編完結しました。
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