プロローグ「本気のキスから、すべては始まった」
キスに、意味を持たせたことなんてなかった。
ただ挨拶みたいに交わしていた子ども時代。
ドラマや映画で観るような、それっぽい台詞も、どこか他人事のようだった。
でも――
あの夜、彼がくれたキスは、本気だった。
思い出すたびに、胸が熱くなる。
時間が止まってしまったような感覚。
唇に残る体温と、耳元に落とされた言葉。
「好きです。
ずっと、先生のことが――」
教師として過ごしてきた10年。
私はずっと、自分の“感情”に蓋をしていた。
恋なんて邪魔。
熱を帯びた視線も、胸を打つ言葉も。
それより古典文学の一節の方が、ずっと私を満たしてくれると思っていた。
けれど。
教え子だった彼が“俳優”として現れ、
人々の視線を集める国民的存在となって私の前に立ったとき――
私はもう、逃げられなくなった。
教師としての理性と、
ひとりの女としての感情がぶつかり合う日々。
密かに始まった“秘密の恋”は、誰にも言えないほど甘く、苦く、そして愛おしかった。
キスから始まり、
言葉ではなく“想い”で深まっていった関係。
誰よりも誠実で、誰よりも大胆な彼に、
私は少しずつ――恋を教わっていった。
これは、先生と元教え子が紡ぐ、
禁じられたはずの恋が“運命”に変わるまでの物語。
『先生、あのキスは本気です。
元教え子は国民的俳優になって帰ってきた。
そして今、秘密の恋が始まる――。』