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EQ @バランサー  作者: 院田一平
第3章
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第14話 覚醒?俺・・

挿絵(By みてみん)





何が俺をそうさせたかは解らない。

痛みを感じるのが安心なくらい全身の感覚が無い中、

笑いながら奴らに話しかけていた。




「คุณกรุณาไปตรวจสอบยอดเงินคงเหลือด้วยครับ」



何やら言葉を交わした奴等の1人が出て行った。

しばらくして、


「สิ่งที่เขาพูดเป็นความจริง!35,964,600THB!」



「Anh có 1,2MUSD ! nhỉ. Anh thật là giàu có.

(お前!120万ドルもあるじゃないか!)」


「おう。だから嘘じゃ無えって言ってんじゃんか。

あっ!なんなら俺が20万やるからよ、

俺をこのまま病院に連れて行けや」

※ベトナム語省略


「จะทำอย่างไรครับ」


「เรามาขึ้นราคากันเถอะครับ」


<乗れ!・・たのむ・・>



「よし。それなら30万出せ。30万なら

逃がしてやる」



奴等の気が変わらないうちに金を出したかった。

俺の動かない身体を、服も着替え身なりを整え

なおした1人が支えながら、ATMやら銀行へと

付いて回った。


パスポートを持たない俺は、やっとかっと

5000ドルを引き出せ、次の銀行に入った。その時、


「Are you Mr. Matsuda? could you come to the

reception room?(奥の部屋に来てください)」


スーツの男とセキュリティーの2人に囲まれた。


俺に肩を預けた連中の1人は、硬直しているが

俺からは離れられない。


「ฉันจะรอที่นี่」


何やらをスーツに言うと、入り口で俺の身体を

スーツに預けた。


そいつを捕まえる様子も無く、セキュリティーも

俺を先導して奥の部屋へと付いて来た。



「先ほどポリスからあなたの写真が送られて来ました。

あなたはここでポリスを待たなければなりません」

※英語省略


「・・ああ。分かりましたが、外の彼は?

まだ居ますか?」


ドアの外を確認したスーツは、


「いえ・・どこに行ったのか?見当たりませんが、

お連れしますか?」


「いや・・・・」


この時の俺の頭ん中は今までに感じた事のない・・

そう、目ん玉の奥からデコへ。デコから四方の脳へ

電気がバチバチと音を立てて走り回るのを感覚した。


「多分外の車で待ってくれてると思うよ。彼に

ポリスは関係ないんだろ?」


「はい。あなたに対して、来店時の命令だけです」



間も無く入って来たポリスは1人。


<やっぱ・・今の俺の状況までは解かって無えわ>


ポリスが言うには、

ここの前に入った銀行から、怪しく見えた俺の

一部始終を警察に連絡していて、またパスポートを

見せるようにと。つまり、ボロボロの身体で身分の

証明も出来ないヤツが大金を引き出そうとした事

への事情徴収なのだ。




あの時に何故?笑えたのか・・

何故に考えてもいなかったあんな交渉を

とっさにしたのか?できたのか・・

奴等の金への欲とは言え、俺を拉致中なのに引け目無く、

よくもボロボロの俺と街中を歩き回ったものだ・・


ポリスへ一通りの"作り話"をしながら、

俺はそんな事を思い出していた・・


そう。ポリスには、奴らに拉致されてここに

来たのではなく、どうしてここタイに居るのか判らない

"記憶が全く無い"のだと。逆に連中の事を、

名も知らぬ奴らがこんな俺を助けてくれたのだと。


これもまた・・なぜ・・

奴等を庇う理由も無ければ、

返しをビビった訳でもなく・・

身体の痛みや何日も喰っていないそれでも無く、

いや・・そんな状況が、そんな究極の時が、

俺の何かを目覚めさせたのは違いが無かった。

ある種の覚醒だ。


奴等の事も"隠せ"と、自分に命令している

別の俺がいた。



「カオル・・俺だよ」


「おまえーどこで何さらしとんねん!

みんな走り廻ってぇ、えらいこっちゃでぇーー」



ポリスの指示で銀行から掛けた電話。


タイ語が分かるMaiに俺の身分を話してもらい、

ポリスがPhetchaburiペッチャブリーから、

バンコクの日本大使館まで連れて行ってくれた。


タイへの渡航歴がない事、俺の嘘と辻褄も狂い、

長い話となったが、順子と大使館の担当の

電話の後は、病院に運ばれた。





「もぉーどう言うことぉー」




「・・ごめん・・・・」





その日のうちに順子もカオルも皆がバンコクに

来たが、相当の怒りを俺の姿を見て

抑えているのが分かった。


皆には本当の事を話し、何故にそうなったのかという、

俺の考えも話した。




「俺の答から言うと・・

配慮が足り無いなんてモノじゃなく、一方へ

力任せに強引にさ・・俺じゃ無かったんだよ・・

そん時でも解ってたのに、そうすると誰が悲しみ、

誰が泣くかって・・

泣く位の話しじゃ無かったしね・・たぶん・・

もしかしたら、人の人生を狂わしちゃた位のさ・・

調子に乗った?そんなモンじゃ無かったんだよ・・

・・そうなんだよな・・何で奴らの事を

隠したか・・

ああ俺は死ぬんだなってさ・・

そんな心身でなんかさ、奴らも哀れに思えたんだ・・

あと、もし俺が生き残ったらさ、今回の事・・ほら、

解決しなければいけないじゃん。

それって絶対に争いじゃダメだってね。

ヤラレタからやり返す?そうじゃ無えってね・・

相手と膝を合わせて合点を探すんだろうってね。

なら、奴らを警察に突き出してもさ・・・・」


「うん。よく生きててくれたねぇ・・

これからどうするかぁ・・

後でゆっくり考えようよぉ。

今はぁ・・寝て。明日は大変な手術よぉ・・」




メスは3回入れた。都合5か月の入院生活を

バンコクで過ごした。その間には松田のオヤジとも

ゆっくり話し合えた。ハマからはおふくろに

オヤジもやって来た。


度々俺の見舞いだといい、顔を出す陳さんは実は・・


夜な夜なパーラーやソープに行きたいのが目的だと、

のちに唐さんから聞いた・・苦笑




奴等の動向も気にして、カオルは病院の横の

miniホテルをベースに、出席が必要な時だけ

ホーチミンへ出る逆の生活をしながら、

俺の側に居てくれた。



「俺さ・・俺でよかったよ・・俺だけでさ・・」


「はぁ?なんやそれぇ?」


「あっ変な日本語だわな・・1回目のさ、術台の上で

麻酔までめちゃ時間があってさ、そん時にハッと

してさ。もしあん時に順子と一緒だったらって・・

俺じゃなく順子がさらわれてたらって・・

笑い話じゃないけどさぁ、

麻酔の前に気を失っちゃったわぁ」


「ハハハハハあ。おもろい(面白い)事いうやんけぇ」


「いや、だから笑い話じゃ無えし・・」


「クワンジャニンが残って順子はんの周りを

固めとるわぁ。心配すなぁー。

それよりホンマに放ぅとくんかぁ?そいつらぁ」


「うん。なんかさぁ、解ったんだ俺。

"一線"ってのがさ・・奴らはもう来無えよ。俺が

これ以上、無茶な突っ込みを入れなきゃな。

Thaiさんの情報からも相手は見当がつくし、

話ししに行くわ」


「ほうかぁ?まぁ無茶すんなよぉ。

行くときは俺も連れて行けやぁ」



5000ドルだけで、しかも俺を生かしてしまっている

奴らだ。普通に考えればいつここに来ても可笑しく

は無かったが、俺の感覚では"もう無い"と、電気が

走っていた。


それに来るならおいでと。

その方が話が早いとも思っていた。カオルが居るし。




右半身の感覚が徐々に戻り始め、左足は骨折を

つないだチタンがギコチ無く歩くには杖が必要だった。


自分の腰骨を削って入れた頬は蟻がチョロチョロと

走る様に感じるくらいは神経が繋がってきていた。


未だカオル無しでは不自由だったが、大使館が帰国用の

ワンウェイパスを届けてくれたのでサイゴンへ戻った。



家族や仲間の事を考えると休んでも居られなかった。


Thaiさんの手配で、モベルベトナム社を介して、タイの

出資者の代表に会えた。




「It seems that my arbitrary behavior has

caused you trouble. I'm here today to

apologize for that,.(私のせいで迷惑をかけている事を

お詫びしたい)」


「Em,. có thể nói tiếng Việt không?

Tôi nói được cả tiếng Anh và tiếng Việt.

(ベトナム語でいいよ。どう?)」


「ありがとうございます。ベトナム語なら助かります」

※英語・ベトナム語省略


「どうですか。それで?だれにどんな迷惑を

掛けたのですか?詳しく聞かせて下さい」




想像した悪人とは程遠く、身成も態度も紳士だった。

この言葉の瞬間に"もっともっと下々"の連中の事だと

判った俺は、全てを1つ残らず説明し、自分の配慮が

足りなかったこと、軍と言うバックグランドで身の程

をわきまえず背伸びをしていたことまでを話した。




「ほぅ。あなたはお幾つですか?」


「はい。30になります」


「そうですか。私がその頃は、もっと暴れていました。

あなたが言う様に、私も間接的に人を不幸にしていた

のでしょう。しかし私にはあなたの様な経験は

ありません。人に恨まれ憎まれていたのにね。

何故か分かりますか?

あなたと私、何が違うか?分りますか?」


「いえ。その答えは解りません。でも今回、私は

気付いたことがあります。それは私は現場の人間で、

人と直接接して話をして、現場で答えを出す立場です。

それなのにお金も管理して違うプロジェクトにも

顔を出して・・

私が社会に会社に貢献できることは現場を踏んで、

そこの空気を換えたり、流れを創る事なのです。

それが1番楽しくて好きですし。つまり、

私はTOPではなく、事業の補佐役が合っているのです。

その立ち位置に居ると視えるのです。全てが」



「ほう!私が持ち合わせている答えと等しい。

そうです。組織というモノは役割が分担できてこそ

強いのです。金を有する者は金を、

力を有する者は力を、その何方も無い者は

労力と時間を差し出せばいいのです。

私は父の世代からずっとTopに座っています。

今回のあなたが私の下ならば、私は長としてあなたを

守れました。また私の部下は私と言う座を守ろうと、

金も力も時間も費やしています」



「あの・・Mr.Krit、あなたは華人ですか」



「おっ!そうです。私の祖先はトンブリー朝に

タイに渡った潮州民です。よくわかりましたね」


「いえ、有钱出钱有力出力有脑出智慧を話されたので」


「お?あなたは本当に日本人かい?」


「はい・・いえ、日本に帰化したベトナム人です。

中国語も学んでいまして、親友は中国人が多くて」


「そうでしたか。いいでしょう。わかりました。

あなたが探している連中を私も当たってみましょう。

我々の事業には多いのですよ残念ながら・・

その様な連中がね。話し合いが出来ればいいのですね?」


「はい。このままだとどっちにもいい事がありませんので。

差支えが無い程度で結構です。ご協力をお願いいたします」





この先,

このKritさんのパワーを、

何度も何度も見せられることになるのだが・・






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