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EQ @バランサー  作者: 院田一平
第3章
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第9話 ベトナムのショボい幻想

挿絵(By みてみん)





俺の名を取った学校を含むIT事業は順調だった。


ITに限らず、中国に依存していた日本には、この頃

から"チャイナリスク"が問題視され始めていた。その

一環で、"チャイナプラスワン"と位置付けられた

ベトナムが脚光を浴び始めていた。



「ボス、また見学の申し入れが入っていますが・・」


「そうかぁ・・もうさぁ、月一の例えば、15日とか

さぁ決めてその日に全部に来てもら

えばいいんじゃない?」


「いえ、そういう訳には行きませんよ。

日本の企業の視察は3泊4日でも長い方です。

1か月に一度なら、スケジュールが合わなくなります」


「な・・じゃぁさ、誰かさぁ、俺の代わりに

案内してくれよ・・」



一応、ベトナム政府が推し進めるIT特区。

そこがシリコンバレー成らぬ、不動産と外貨稼ぎの

利権の場とは知らず、

税の免除や公的許認可の簡易性などの情報だけを拾い、

日本企業からの接触が日に日に増えて行った。


"お遊びツイでの名ばかり視察旅行"の相手などに時間を

取られるのが嫌だった。


1年も経たない(2004年)間には、うちの様な処が

数カ所できた。

ただし、工科大学の中にラボを持つうちは、人材確保の

点と、拠点がIT特区内に在ることから、状況は

変わらなかった。それどころか、日本企業からも

"本気"オファーが増えていた。



「はじめまして。私、藤原テクノロジーの小松です」


「はい。西郷さんから聞いております。小松さんお幾つ

ですか?イメージと違いお若くて」


「はい。29です。何故か弊社では初めての20代での

部長職だそうでして・・」


「へぇー。いい会社ですね。日本も良くなりそうですね」


「いや・・はぃ・・松田さまは?私くらいかと・・」


「あぁ、すみません。私も29です。1975年生まれっす」


「あーそうなのですね!いやー凄いですねぇ。

私なんかより全然立派ですよー」


「いやぁ、こんな会社なんて吹きゃ飛んでしまいますよ。

俺なんかが大企業に居たって万年ヒラですよ」


「いえいえ。ご謙遜なさらずに・・

それよりどうでしょうか、本題の・・

株式の割合は別として弊社の参加は可能でしょうか?」


「ふふぅん・・小松さん、それこそ西郷さんからお聞き

して無いのでしょうか?うちは、私は、只の飾りの

代表社員に過ぎません。ここの株の51%は

ロシアマネーです。

大体の日本の企業さんは、この事を重く見られるそうで、

その時点で小松さんの所の様な話にはならないのですが」



「はい。存じ上げております。ロシアのイリヤ張さまへは、

西郷様から当たっていただいております」


「イリヤ・・ホビスさんにもですか?」


「はい。イリヤ張さまです」



この藤原テクノロジー社は、自分の所の組込みを外

(他社へのアウトソーシング)に出す訳に行かず、

されど効率化も必至である中、丸十製作所を介して

うちの中に入り込み、独自の部署を

設ける事が目的だった。



「本気なのですね」



「はい。現在、他の手段がございませんので・・」


「いえ。失礼いたしました。ご状況は、日本の企業さん

の状況は、小松さんの所と同じ境遇にあると肌で

感じています。でも、勝手な・・いえすみません。

ご自分たちの都合だけを言いに来る方々が、特に日本の

会社さんは・・多くて・・意図は判るんですが、

ここはベトナムです。皆さまから預かる仕事を熟す

のもベトナム人です。そこに情報漏洩だの

機密保持だのと・・」


「お許しください・・例の山一証券の破綻以降、

年々企業コンプライアンスを問われまして・・」


「ね・・どもあれですよ小松さん、ルール通りには

行かない事は覚悟しておいた方がいいですよ」


「はぁ・・はい。我々もエンジニア一人一人を

1日24時間365日・・拘束迄できませんので・・」


「ふふぅん・・そこまでご理解しておられるなら。

あとは、ロシアの返事を待ちましょう。私やうちの

ホルダーはホビスさんには逆らえませんしね」


「ありがとうございます。結果はどうであれ松田様、

今晩、一席設けたいのですがお付き合い

いただけませんか?これも私の今回の

大事な仕事でして・・」


「仕事ならお断りいたします。でも、

今後は同級生の友としてお付き合いいただけるなら逆に、

私が席を押さえますよ」



どういう訳があったのか?あの頃の日本からの視察旅行

にはサイゴン川沿えのレジェンドホテルがよく

使われていた。小松さんもやはりそこ。



ホンダで、いや・・バイクで迎えに行き、

ケツに乗せて海鮮飯屋通りでốc(貝)を喰い、

「これは何?」と指差すhôi lông

(ホビロン)も喰わせた。



「無理ぃーー・・こここんな・・」



「いや。これを喰わずにベトナム人と付き合って

行こうなんてそれこそ無理っすよ」


「でも・・これって・・頭?

目がぁ・・羽がぁ・・」


「ふふぅん。冗談抜きで目つむって喰ってみてよ。

マジ、意外と旨えんだぁ。あと、こっちではさ、

このホビロンを喰ってゲン担ぎもするんすよ」


「はぁ・・これを食べたらどう縁起がいいんすかぁ・・」


「この食い殻をクシャってこう潰して、このい器を

逆さにして上に置くんですよ」


「・・殻をつぶそうにも・・まだ中身が・・」


「はやく喰っちまえばいいじゃん。それ喰ったら面白い

処に連れて行くからさあ」



長い間行って無かったがビールを1本開ける度にHな

サービスがある場。何年たっても同じ場所に在るのだが、

名前はコロコロと変わっていく。



3本目のビールを空けた時、



「ハハハハハあ・・・・」



隣?そのまた隣?くらいから聞こえるあの笑い声・・


「・・・・どっハハハハハあ・・」


間違いない・・



外に出て通りを見ると、カオルのバイクがあった。



「カオルー お前も居たのかよ・・」


「お!竜司ぃー。お前も通いかぁ? ハハハハハあ」


「通いって・・んなんじゃ無えけどさ・・」


「懐かしいなぁー お前とよう来たなぁー。

一緒に飲もやぁー ハハハハハあ」


「あぁ。連れとあそこん店で飲んでたんだぁ。

連れて来るわ」



どうせハシゴを考えてたので、小松さんを連れて

カオルと合流だ。



「あの・・そのお連れさんは・・大丈夫でしょうか・・

私はその・・会社からキツク禁止されてまして・・」


「はぁ? 例のコンプラぁ? ふふぅん」


「はぃ・・会社にバレたら・・その・・」


「俺の一番の親友なんだ。うちのホルダーだし。

西郷どんもみんな知ってる奴なんよ。安心していいよ」


「えっ!西郷様もご存じですかぁ?はぁ・・なら・・」




その後も藤原テクノロジーが接待で使うニューワールドの

地下のKARA.OKにも行き、初めてだと言う小松君はお気に

入りの子を連れ出した。



風俗店も認められていない国だが、

暗黙の掟はここにもあった。


同伴は不可だったレジェンドホテルの説明をして、

狙われ易い日本企業の小松君のこと、念のために

知り合いが運営するPhạm Ngũ Lãoの小さなホテルを

連れ出した女に託した。



ホビスさんと西郷どんから松田のオヤジにも連絡が行き、

俺へも相談があり、藤原テクノロジーの資本参加と一部の

協業を受け入れた。そして小松とは

以降もガッツリとやっていた。



「竜ちゃん、うちの藤原がさぁ、JITCOの

役員になったのよ。それで、

ホーチミンのITエンジニア実習生を送る学校を

創れって事なんだけど・・助けてくんない?」


小松はその頃くらいから俺をそう呼んでいた。俺は、

女事のケツ拭きやら乗っちゃいけないバイクでの

事故処理などなど、"困った奴"から、

"困ったちゃん"と・・


「小松ったちゃん、助けるっていうなよ。

何をして欲しいかさぁ、具体的に話しなよ。

ったくぅ・・お前さんの助けては恐えわぁ・・」


「あぁ・・簡単に創れって言われてもさぁ・・

VNTTって送り出し用の学校を紹介して

もらったんだけどさ、金はともかく、

許可は難しいって言うんだ。


簡単に言うと、IT技能実習生の送り側のライセンスを

取ってほしんだ・・許可さえ出れば、JITCO

(国際研修協力機構)」側は何とでもなるんだわ」



「ほう。ライセンスかぁ・・うん分ったよ。

チト時間ちょーだい」




この困ったちゃんからのこの話が・・





以降の俺の大きな仕事となり・・・・






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