表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EQ @バランサー  作者: 院田一平
第2章
41/71

ep.11."Whispers of Power"

挿絵(By みてみん)




大広間のテーブルに残って、小倉の拠点地に熱い議論

を繰り返す中村と本田の声に、スマホを見ながらだが

俺自身の意見も心の中で織り交ぜながら

耳を傾けていた。

若者層の取入れを重視していた中村のプランに、

本田が強く嚙みついている。

斎藤の選挙戦略のデータを持出し、その裏付けを示す

本田が、


「斎藤さん、この赤い枠は我々が得るターゲットで

間違いないですよね?」


「そうです。今のお話を私の立場からも補足を

しますと、勿論若者層、正確には30歳未満を指し

ますが、全体の22.8%と、他の地公体と変わり無く

マイノリティー層です。つまり、

この層をどれだけ取込んでも然程選挙への勝票には

繋がりません。

ハッキリ言えば若者がどれだけ投票しても、

選挙には影響しません」


「・・なるほど・・だから、赤い枠が30代以上と

60代以上に多く囲まれているのですか・・

つまり、私のプランは・・・・」


「拓海さん、若者は大切です。私も重視しています。

ただ、我々の拠点構想の中心では無いはずです」


「はい。確かに。いやぁー・・まいったなぁ・・」


俺も若者の街的な頭があったので、そんな内容に感心

しながら頷いていた。と、池野からの電話。


「これぇ、この記事を見る限りアレですよねぇ・・

また上に向くってことですよねぇ?」


「それだけが感想かぃ? お前さんも152円で介入が

入るとは思わないかぃ?」


「ははは・・はぁ・・いやぁチャートを見る限り・・

確かに152から153位が天にも視えますしぃ・・

大きな調整局面があってもエエくらいかと・・」


「買え無い。ってことだろよ。ここで買うのがリスク

って事だろ?」


「ははは・・はぃ・・まあそうです・・」


「じゃぁよ。お前さんも売るのかぃ?それとも、

口飽けて見て過ごすのかい?」


「いや・・もう知ってもたので・・売りのポジション

は考えられないですわ。

ここは注ぅ視って感じですか・・」


「うちは買い持ちだろよ今。

うちのトリは幾らで利確になってる?」


「えええ・・えっと、ちょっと待ってください・・

157点56ですわぁー」


「そうか。それじゃまだ6円以上取れるな」


「エエぇー・・介入喰ろうたら・・

エライことになりますよぉー」


「ったくよぉ。もうチィたぁいい答えを期待した

のによぉー。範は?奴の見解は聞いたのかよぉ」


「ははは・・はい。このままキープで今はまだ

利食いは考えて無いって言ううてましたけどぉ・・

まあ155円超えたら手仕舞いも

考えるぅみたいなぁ・・」


「まあ、俺とはチィと違うがそれも良しだわ。

とにかくド円は買いよ。

お前さんこの局面はFOMOるぜ」


「ホモぉ? ホモるってなんですぅ?」


「・・フォーモだ。ホモじゃ無えわい。

Fear of Missing Out=FOMOじゃぁー」



「ははは・・はぁ・・買うにしても・・

あつ! 組のんで入っときますわぁ!」



「おう。組のインジケーターも、うちのに入れ替え

ときなよ。あとは帰ったら資金のことは考えるからよ」


まったく期待外れ池野には笑うしか無いが、帰ったら

ハナからまた時間を使えばいいだけの事。


限が無いように見えたので、斎藤ら3人を温泉に

誘い汗を流した。

外に出るとまだ高い日がほんのりと温かい。


地元で焼かれた樫の炭がパチパチとドラム缶位デカい

BBQコンロから火花を散らしている。


「会長今日はもう吞んじゃってよろしいでしょうか?」


「ヨカとぉ!焼酎も取って来るけんねぇー」



間違いなく下野は俺に聞いた筈で、

みんなが俺の顔色を窺ってやがる。


うんうんと大きく頷くしかない。


「酒入れてからの話しも本音が出ていいもんよ。

吞もうや。

拓海、本田、殴り合いだけは勘弁してくれなぁ」


炭の香りが移った九州の黒毛和牛は旨いに決

まっていが、こいつと麦焼酎がこれ程マッチするとは

想像できなかった。俺にもそんな新しい発見もあり、

目の前の海とそこから流れて来る潮の香も手伝って、

皆の酒もすすんだ。


九州3つの候補地を北から南下する今回の予定。

酒の量の割には二日酔いも無く早朝出発の車に乗った。


「SSでは基本、自給自足なんですよね?今の社会情勢

で現実的では無いと思うのですが・・」


下野のこの素朴な疑問は、2時間ほどの道のり

では足らなかった。


「容易です」


先ず真っ先に本田が答える。


「市街地ではその物量から難がありますが、

郊外の田舎に絞ってのそれは然程の尽力も要りません」


「・・すみません・・本田さんがそうおっしゃるなら・・

でも・・田畑は判りますが水源も・・あっ!肥料なんかも。

それに食はいいとして、衣食住の・・衣とか住とか・・」


「はい。では先ず食からご説明いたします」


本田が続けるその言葉は、そもそも日本でも自給自足と

謳う集落が現在でも存在し、近くは熊本県の南阿蘇村と

いう例の話し、その自給率と問題点などの詳細も伝えた。

問題点にある、食の栄養的バランスと食文化視点の

海産物もデータ等をまとめた資料と共に、

ゆっくりと詳しく説明をした。そして、本田が本人の

キャリア官僚としての憤りを減反政策を

例に挙げて語り始めた。



「私が何故、松田さんと永くお付き合いをしている

のかご存じでしょうか?」


「いえ、深くは・・ただ、この国の将来を一番危惧して

いるのは本田だって、松田会長が仰っていました。

その様なご関係からかと・・」



「近松さん、今の日本の方向性は我々官僚や政治家が

導いたとお考えですか?」


「・・はい。政治が決めた方向性を本田さん達が最良

の手段でルール付けるみたいな・・

そんなイメージです」


「最良ですか。うふふん・・本音でお話しください」


「・・いえ・・では・・賢い人たちが創っているの

でしょうねって・・なんでもガイドラインとか、

ルール書きとか有るじゃないですかぁ。あれって本当

によく出来てますよねぇ。長い文章で・・」


「うふふふふん。誤魔化しです。元が、方向性が、

それ自体が無理があるので、変化を悟られないように

作られているのです。戦略的にね」


「あー!やっぱりあれって作戦なのですねぇ!」


「そうです。減反の話しに戻りますが、政策なんか

じゃ無いのです。命令ですよ。我々にとって間違った

方向だと分っていた筈ですよ。先輩方もね。

私は2018年の減反政策廃止には携わりましたので、

よーくそのことが理解できます」


「あっ!そっかぁーもう減反は廃止でしたね!

つまり、その間違いを正したのですよねぇ?」


「いえ。1970年から2017年まで、およそ50年

ですよ。誤りを正すには余りにも遅すぎます。

事実、間違いだったから正す為に政策を

廃止したのでは無いのです」



「・・えぇ?じゃなぜ・・」



「確かに我々は農家に対する『生産数量目標』

の通知はやめました。しかし農水は毎年、

翌年作るコメの“適正生産量”を決定して

公表します。これに基づいて農協などが農家

にコメ生産を指導しているのです。つまり、

実質的な生産調整が未だに行われていて、

実態はまったく変わっていないのです。更に、

飼料用米や麦などへの転作補助金は

むしろ拡充しています」


「・・それって・・本末転倒・・

ですよね・・」


「いえ。取り違えなどではありません。

減反政策を悪とする世間へのまやかしに過ぎません。

方向は変えていないのです。それらの証は・・

間も無く判る筈です」


「証ですかぁ・・間も無く・・?」


「はい。今申し上げた通り、減反を政策として

50年間も行ってきた国です。

主食のお米を作らせなかった政策です。

それを廃止とした理由は、コメが足りなくなる

事が判っているからです。

これは単純です。生産量と消費量ですから。

先ほどの説明通り生産量は増えません。

これもむしろ、気候変動の影響で減っています。

しかし、年々増える輸出量は本年度も

更新するでしょう。

それに加えてインバウンドによる消費も

増える一方です。

必ずお米が不足する事態になります」


「えぇ!?それが近いという事ですか・・?」


「はい。今秋次第ですが、計算上は

今年にも起こり得る数字です」


「大変っ!お米を買い溜めしなくっちゃぁー!」


「おいおい本田よ、あんまり騒がせるんじゃ無えぜ・・

お前さんみたいな奴がそんな事言い出したら

米騒動になっちまうぜぇ」


「はぁ・・もちろんここだけの話しですが・・」


「でもまあ、その減反のお陰で我々は農地探しには

苦労しませんね。必要なだけ作るので、

売り先を探す理由も無い。

SSの人が増えれば応じて広げるだけ!」


「本田さんは大地主さんですよね?」


「いえ、私じゃ無く、祖父です。

まあ父を飛ばして私に譲るとは言ってくれていますが、

貰っても二束三文の山ばかりです」




「さぁてぇ、何処ばくいま(車)を止よかぃ?」


「その先へ、このまま直進してください。

あの山岳の麓あたりへ」



小倉南のエリアに入り、数カ所に印がされた地図の

一つ目に着いた。左右を山と山に挟まれ直進も山、

後ろには遠くに海が見える少し高台の場所だ。

左右の山谷には道幅の10倍づつ程の農地が広がって

いるが、歯ヌケで所々に作物が観えるくらいで

あとは荒地だ。時期的に代掻きが行われていても

いい頃、見渡す限りにはそれが見当たらない。



「このポイントの所有者リストです。

筆頭がこの方で、然程多くないので折衝は楽かと。

ここも他と同様で、水源からバイオマスまでの

調べは終えています」


「拓海ここに立って今いま揉んどく事は無えのかぃ?」


「はい。ご意見を頂ければと。

1発目をどこに決めるかはお任せします。

この3か所ならどこでも目的は可能です。

ねぇ本田さん・・」


「そうですが、ゾーン拡張を必要としないなら1つかなと」


「どこだぃ?」


本田の指差す資料のマップは門司の山麓で海辺だ。


「拓海どうよ?小倉じゃ無ぇがよ」


「はい。一昨日本田さんの考えを聞いた時から私も

門司がいいかと思っています。小倉だから私に優位

だとも考えにくいですし。それに私の応援団は実は

門司に強い人たちが多いのです。

今日もその門司で松田さんに紹介をと準備しております」



「なんだよ。それなら門司スタートで良かったじゃ

無いぇかぁ。ここは必要ならまた戻るとして、

行こうや門司へ」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ