"Political Chessboard"
1947年の華族制度廃止に伴い、藩主とは呼ばなくなった
のだが、変わらず家系を継ぐ丸十さんは現当主だ。
西郷さんも代表は退いたものの丸十製作所会長職として
ますます盛んである様子。
お二方とは、赤石さんを介してロシアでお逢いして
以降も、ホビスマネーを要する様々な事案や場で
絶えない縁でもある。
そんな二方でも比較的に方言なく話しやすい丸十さんに
電話を入れた。
「ご無沙汰しております。松田です・・・・」
電話という事も有り、大筋の話だけをと絞ったが、
もっと詳しく聞かせろとのことで、長い電話となった。
「なるほどよく解りました。いい事ですよ。
何かお手伝いさせてください」
「ありがとう御座います。しばらく振りですし、
先ずはご挨拶に上がりたいのですが
、鹿児島に居られますか?」
「来週末ですね。はい。いつでもお越しください」
「あっ、西郷会長にもご挨拶をと考えていまして、
鹿児島にお戻りと聞いているのですが・・」
「はい。あれは志布志に居ます。土曜日か日曜日か
を決めてもらえればここに呼びますよ」
俺らが何故この考えに至って、どのように準備をし、
いざ始めるという今日までを、まさかこの電話で
話すなどとは思っていなかったが・・
丸十さんとの電話では、表情が見え無いからでは無く、
その人当たりから、この様な返事であろう事は、
話の深い浅井に関係なく凡そ分かっていた。
あとは、顔も言葉も嘘がつけない西郷さんに
会った時に、その心が視えるだろうと思っていた。
「鹿児島は日曜日ですね。
共有ファイルに入れておきます」
「おう頼むわ。それと下野、金曜はそのまま延岡か
何処か宮崎で。土曜は霧島当たりで宿を抑えてくれや」
朝食を終え部屋から鹿児島へ電話を入れたのだが、
予想以上に時間を費やし、9時の会合を遅らせて
スタートした。今朝は斎藤に音頭を取らせた、
選挙戦略とそれに似合う理想の拠点というテーマだ。
「さて、先ずは皆様から頂いた資料はお伝えした通り、
ストーリの組み立てに使っています。勿論、
GOの後には写真を含めてすべてが公にされますので
ご了承ください。不足があればご用意いただくか、
こちらで作成して使用いたします事も
併せてご了承ください」
「それって私のも物語になるのでしょうかぁ?
本田さんも拓海さんも所縁の地で出るので、
何となぁくストーリ性が描き易そうぉ・・」
「そうなのですよ・・中村さんの延岡に関しましては、
ソンのGO待ちも有って、未だ手付かずです・・」
「おぅ。美鈴ぅ、来週の日曜日次第だが、チィと
捻じ曲がった物語を歩んでもらうかもしれ無ぇなぁ。
まあ最悪でも、俺は美鈴なら勝てると踏んでんだがよぉ」
「それってどう言う意味ぃ?私だってカ弱い女ですよぉ」
「あの・・私たちは存じ上げませんので
教えていただきたいのですが・・差支えが無ければ・・」
「はいどうぞ。近松さんでしたね。何が判りませんか?」
「ありがとうございます斎藤さん。ストーリ性が重要で
あることは解ります。でも企業票などの組織票って
いうモノは期待できませんよね?つまり・・
どの様なターゲットの票を狙うのでしょうか?」
「そうですね。では先ず、我々が言うストーリー
というのはこの資料です。18項目と3項目、
更に詳細は79に分けてあります。そうですねぇ・・
この7項、ネガティブキャンペーンとその枝を
ご覧になって、どうでしょうか?近松さんが言う
ストーリ性にこの様な事が含まれていましたか?」
「いえ・・凄い・・すみません、
言葉がでません・・」
「これってもう鮫島竜士の事件師じゃないですかぁ!」
「えぇ?事件師? さめじまですか、下野さん?」
「いえ・・すみません・・ただ・・
これって違法ではないのでしょうか・・?」
「すべて合法です。民事での争いごとなど敢然と
行います。選挙というのはこうなのです。
近松さんどうですか?おそらく、近松さんの考えて
おられたストーリとは第1項に収まっていませんか?」
「はい。まさに・・」
「延岡に限っては、それらの仕込みをあと半年、
遅くても年内には仕掛けに入らなければ再来年の
市長選はアウトです。北九州と人吉は1年の余裕は
ありますが、それでも年内には仕掛けたい
と考えています」
「下野は斎藤の仕事は解ってるだろ?」
「いえ。あ・・はい。でも、
こんな事も出来るなんて・・
知りませんでした・・」
「そうかぃ?まあ表に出して営業してる内容じゃ無え
だろうけど、現役の大臣にも居るぜ、斎藤の仕掛け
に救われたオッサンがよ」
「名前は聞かないでくださいよ。さて、
次は票集めですよね。それがこちらの資料です。
この延岡でご説明しましょうか。先ずは人口、
年齢別・・・・投票率に前回比、
歴代があって、現職が2期目で・・
これが前回獲得票・・
対抗がこの女性で、約1万票の差・・・・」
「この緑の層と赤線がターゲットですね!
前回の31,000票が当選ラインなら、
盗れてしまう!凄い!」
「はい。計算上ですが。それと、
この延岡が面白いのは、現職は過去2回とも与党
の後ろ盾を取りに行ったのですが、
NOを突き付けられて、対抗側に与党、
仕方なく、野党2党の推薦を受けて・・
それで当選。ふふふふう」
「どう言うことですぅ?つまり野党推薦で2期目を
務めているとうことですよねぇ?」
「まあそうです。でも私が面白いと視たのは、
与党員が弱い場所だという処です。つまり、
組織票が割れる場所だという事です。
我々には仕込み易くおそらく、与党勢力への不満を
材料にしたSNSも非常に有効かと見立てています」
「あっ。そのSNSとかの選挙期間中の運動?
というのか問題が取り沙汰された記事を読んだ
ことがあります・・
それには違法性ありと書かれてましたが・・」
「先ほどもお話ししましたが、これもグレーでは
あります。ただし、『無報酬の原則』という選挙法の
大前提がありましてね、例え我々の仕掛けが
選挙期間中にも必要であれば、私が私の責任で報酬を
得る事無くつまり、ボランティアで
その活動をするなら、法的には咎められることが無い
とうちどもの弁護士からも答えをもらっています。
『寄付』扱いできるお金はすでに
キャッシュも帳面も準備済みです」
「パーフェクト!」
少しは話が観えて来たのか下野も近松も、
それなら俺はこれを、私はそれをと意見にも
作業にも参加し始めた。
明日の朝に向かう小倉でも拠点の範囲を広げて見たり、
その情報を取り直したりと、彼ら2人を連れ歩く俺の
意図とはまた違う働きも見せてくれている。
そんな両名に刺激されたのか?
意識も知識も志も高いが普段は無口な
本田がお喋りになる。
「私が考えますに、この山間部がベストでは無いかと。
理由は、博多へのアクセスも良く、南部を見通せる
この道路を境に商店を集めれます。漁場が豊富な
この地では海産物は然程手入れは不要ですが、
これとこの2つの水源ダムをプロジェクト農地
の中心と出来ますし、SS
には格好の試験場になるかと。
また・・・・・・・・」
その鋭い所見とアイディアには、
地元出身でそれなりの構想を描いているであろう
拓海も大きく頷くだけだ。
「いやぁーまいったなぁ・・これが私のプランです。
ご覧の通り、私もエリア的にはこの辺りだとは
考えてましたし、SS拠点に商店を誘致すること
もこの通り書いていますが・・いやぁー・・
まいったなぁ・・
本田君の話しからすればこれが薄っぺらくて・・」
「それは?賛成という事かぃ?」
「はい。非の打ち所が見当たりません・・」
「他は?なんか意見は無えかぃ?」
「あの・・SSって・・」
「ああはい。小倉、失礼、北九州に在って、卒然と
我々の仮称スモールシティー構想を打ち出しても
議会パスとは行かないでしょう。我々の構想を見て
取れる小さな小さなモデルから創り上げるのです。
それをSSと称しています」
「なるほど。ますますリアリティが湧いてきます!」
「じゃよ、話の擦り合わせはこれ位にして、
あとは現地で揉み合おうや」
「竜司さん、私にも地元の協力者が居りまして、
明日はご紹介させていただく時間がございますか?」
「勿論よ。何なら一緒に周ってもらえばどうよ。
何とでもいいからさ、段取りは任せるわ」
「そえんか大きいもんばからってどこ行くと?」
突然響く玄関口からの桜井会長の声に皆が
耳を傾けると、どうやら、大分和牛だの
豊後牛だのと聞こえてくる。
「おーぃ上んし(2階の人達)、
今日は外でBBQでヨカか、中でステーキがいいか?」
「うわぁー今日はお肉ですねぇー!」
皆の意見が一致して外でのBBQとなり、
拓海と本田は明日の行動予定を組み、
その他は外の手伝いに廻った。
俺も外に出ようとしたがスマホの通知に出ていた
Bloombergニュースに目をやり、
池野へ電話を入れた。
「おおお・・お疲れ様でぇーす。
温泉はどうですかぁ?」
「フフゥン。温泉が目的じゃ無えよ。
それより、口座はもう作れたかぃ?」
「はい。かかか・・金さえ入れたら
今日からでも使えますぅー」
「フフゥン。そうかぃ。ランは居るかぃ?」
「ははは・・はい。ちょっと待ってください・・・・
ランさぁーん、松田さーん・・」
「呼ばなくてもいいからよー、
ランにブルムバーグの今日の記事を
見せてもらいなぁ。よーく見たら感想くれや」
2024年4月10日付け記事
介入期待の個人投資過去最大級の円買いで逆張りと
いう見出し。内容は、
円相場が約30年ぶりとなる1ドル152円に迫る中、
個人投資家は過去最大規模の円買いポジション
を抱えながら、通貨当局による介入
を待ち構えている。
介入により円が急反発する曲面を捉えて収益を得る
のが狙いで、その姿はさらなる円安進行を見据えて
円売りポジションを積み上げる
海外投資家と対照的だ。
相場の流れに逆らう「逆張り」の取引スタイルで
知られる個人投資家は1年半ぶりに当局が円買い
介入を再開することを期待している。
財務省や財務官が円安けん制を繰り返す中、
市場では1990年7月以来の円安水準となる152円が
介入ラインとの見方がある。
というモノ。
<さぁて池野はどう視るんよ・・フフゥン>




