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EQ @バランサー  作者: 院田一平
第2章
34/71

"Matching Souls: A New Vision for Connections"

挿絵(By みてみん)




浜名湖のサービスエリアでうな重を放り込み、

明るい内なら富士山が見えたであろう駿河湾を

周り始めた頃、


「俺・・

学生の時に宅建主任を取ったんです・・」


目を瞑り静かだったので、腹が膨れて寝てる

と思っていた池ちゃんが口を開く。


「ほう。不動産に興味があったのかぃ?」


「いえ・・別に興味とかやなくて、日商簿記

とか危険物とかFP3とかも持ってますぅ。あと、

卒業してすぐに農薬管理指導も取りましたぁ」


「資格取りが趣味ってやつかぃ?んで何?

農薬管理?」


「はぁ・・あ、俺、農学専攻なんです。

京大」


「ええ!? 農学部だったの?マジ?」


「ははは・・はい受け易かったんでぇ。別に

農業に興味があったんちゃいますけどぉ・・」


「フフゥン。暇な学生生活ってやつかぁ。

OK。んで、その宅建がどうしたのよ?」


「ああ・・はい。弟がねぇ・・

東京で不動産屋で働いまして、

当時・・俺の資格証を偽造して、

会社で使ってましてん。

双子なんです。

名前も俺が秀明で向こうが秀人です・・」


「へぇ!双子かぃ。一卵性かぃ?」


「はい。親も間違えるくらいですわ・・」


「ぷっフフゥン そりゃ偽造し易いわなぁー

 フフゥン」


「俺は卒業してセブンアンドアイに入って、

コンビニエンスストア事業部で出店企画の

為に富士宮に泊まり込んでましたんです。

あの日、駅に行ったらボコボコに殴られて

ヤクザの事務所に

連れていかれたんです・・」



「池ちゃん事じゃ無く、弟の事かい?」



「結局そうやったんですけど、

その時は訳が分からんと・・・・」




今夜の宿と決めていた熱海の旅館が近づき、



「そんなこんなが川崎会長と池ちゃんを

結んだんだな。

まあまた詳しく教えてくれよ。

今日は温泉にでも漬かって

寝ようぜ。俺も疲れたわ」




昔っから熱海の温泉旅館といえば、

松田のオヤジん時からの大観荘だ。

急な深夜の入りもあったがこころよく部屋を

用意してくれていた。


楽しみの一つの夕食には遅すぎて、

朝礼前にコンサル本部に

着きたかったので、用意してくれた握り飯を持ち、

朝飯も喰わずにハマへ出発した。



一昔前に老上海からうちのおふくろ経由で買い取った

関内の5階建てのビルには、1階に二代目の老上海が

テナントとして入り、2階は俺らが興した全国カーゴ

軽貨物協同組合の事務所、3階と4階を

GSAコンサルタンツ本社にしていた。

あと、5階と屋上はハップキドーの道場と外国人

ワーカーの地域交流センターに使っている。



「おはようございます!早かったですね!」



健太郎

(GSAコンサルタンツ取締役社長:勝又健太郎)

が出迎えてくれる。


俺らがサイゴン時代、日本IBMでアウトソーシング

部隊を率いてた健太郎に、工科系大学生を繋いだ

縁から、うちらにこの事業を推してきた奴だ。



今日の俺の意図は充分に理解している。



10分ほどの内に他の主力メンバーも続々と

出社して来たので健太郎が号令をかける。


「今日は朝礼後に全員集まってくれ」



健太郎以下、業務へは100%以上信頼している。

健太郎はトップとして素晴らしい逸材だ。

だが、殆どを俺が担当してきた外国人ワーカーの

受け入れ側と送り側のマッチングを誰に

託すかという、俺の大きな課題に当てを

付けるのが目的。



「健ちゃん先ずは近松(チカマツ)さんだけに

逢わせてくんなぃ?」


「あぁ!そうですね。すみません」



さすがに俺でも主力役員のメンツはよく知っている。


半年ほど前に健太郎へ送った宿題は、内外問わず、


•共感力や柔軟性がある

•ストレス耐性が高い

•自分の強みと弱みを理解している

•自発的に行動できる

•過去に捉われない

•ポジティブ思考である

•素直さや粘り強さがある

•指摘の内容をポジティブに受け止められる

•経験に基づき、最適な判断をすることができる

•衝動的で極端な思考や行動は起こしにくい


という者を探せ。と、していた。



そして上がって来た名前が近松瞳チカマツヒトミ

だったのだ。



「あ、健ちゃんあと下野君も一緒に頼むわぁ」


下野は役員では無いのだが、俺が関係したこの事業部

のメンツの中で、もう少し深く付き合ってみたいと

思っていた一人だ。




「サポート部の近松です。研修の時に松田会長に

缶コーヒーを頂戴しました。

いまでもあのコーヒーの味を覚えています」


<・・しらん・・てかベッピンさん・・>


「そぅやったねぇ・・もう何年になるかいなぁ」


「3年です。松田会長、いつから関西弁に?」


<あっ・・でちゃったわ・・

てかおぼえてねぇ3ねんまえ・・>


「ふむ?すまねぇ・・最近、関西弁で物事を

考えるようになってな・・

サポートって支援部の事だよね?」


「はい。同僚です。私の後輩です」


と、下野君。


「ほう。んじゃたまたま俺が呼んだ2人共が

支援部って訳かぁ」


<支援か・・今の仕事の中でも

感覚は育っているのかもな・・>


「はい。そうなりますが・・

ご存じでは無かったのですか?」


「ほら、下野君はホーチミンに一緒に行った時によ、

また一緒に仕事しようぜってな。

近松さん初めて・・ああ・・ごめん・・

近松さんがどの部署になったとか

聞いて無かったんだよ」


「つまり、今日は支援部のお話ではない

という事ですね」


「お!近松さん、話が早いねぇ」


「では、このご面談はどういう・・」



「おぅ。下野君には前に話したことがあったと

記憶してるんだけど、

ベトナムでVietJaに交渉しに行った後にさ。

覚えてるかなぁ? 

今日の相手はどう見るってあれさ」


「はい。相手に面倒なことを提案するな。

っていう

例のやつですね。もちろん覚えてます。

あれ以降の私の教訓ですから」


「ほう」


「そうです会長、少し私のメモを

見てもらってもよろしいでしょうか?」


「あぁ。いいけどさ・・」


足早にそれを取りに行く下野。

残った近松さんが、


「松田会長、私にもそのお話を聞かせて

いただけませんでしょうか?」


「おぅ。そうだなぁ・・

少し時間を掛けるがいいかい?それこそが、

今日の本題なんだが」


「はい。勿論です。お願いいたします」



「かいちょうーここなんですがぁー」



まだ席に座る前からノートを差し出す下野が続ける。


「これがあの晩にメモした会長のお言葉なんですが

、間違ってないでしょうか?」


<あんだよ・・そゆことかぃ>



「今彼女にも言ってたんだけど、それが

今日の本題なんだ。

メモは後にして先ずは俺の話を聞いてくれるかい」


「はい!x2」



「その前にもう一つ近松さんに聞いてみたいん

だけど、下野君はどうよ。

あなたの先輩になるのかな。

彼の仕事面や思いつくこと、本人の前だけどよ。

聞かせてよ」



「はい。下野さんはとてもバランスのいい人だと

思ってまして、わがままな加賀部長と私たちの

間でいつも自分を犠牲にして仲を取り持ったり、

私たちの部署に一番多いクレームは

逃げ出したという雇用側であったり、

暴力を受けたというワーカー側であったり

なのですが、下野さんが携わる事案は

ほぼ100%で解決しています。あと、

私達一人一人の誕生日とかも気遣いを忘れません」



「フフゥン。そうかい。まあ、

わがままな加賀には

内緒にしとくわぁ。笑」


「あっ・・すみません・・」


「いいじゃないの。

わがままには我がままと言って

あげた方がいいんだぜ。身内にはな」


「・・はい・・すみません」


「さて、本題だ。俺はGSAの中に

新しい部署を提案しようと考えています。

簡単に言うとここは出し手と受け手のマッチングに

特化した部署です。さぁ、この部署。

どう思う?下野君」



「それって人材紹介部の仕事とはまた違う

のでしょうか?

送出し機関の人材情報と欲しい人材を

マッチさせていること

がそのマッチングとどう違うのでしょうか?」


「マッチングという言葉が違がうか。

適切な言葉を教えてくれ。

俺の言うそれは、100%の相思相愛を

指しているんだよ。

互いに思い合い、愛し合える関係や環境を

創ることがこの部署なんだ」


「それは・・非常に難しい仕事ですね・・

まさに結婚相談所やコンサルの仕事に近いのでしょうが、

そこを介しても破談や、離婚になりますし・・」


「その通りだよ。簡単じゃねえ。だからこそ特化した

部署が必要なんだ。近松さんはどう思う?」


「はい。人生相談に責任を持つといいますか・・

それくらいの経験と勘と使命感がないと・・」



「そうだな。責任は重たいわなぁ。

入り口と出口は別個に考えないと想像じゃ

ごっちゃ混ぜだろうがな。

俺がそれをやって来た考え方を聞くと、

案外スムーズにやる事が視えるかもな。

ここからはメモしながら聞いてくれや」




既存の部署が基本、送り手と受け手に立って

人材が行き来する中、

問題があればそれに対応するという

ビジネスありきに対して、

人材こそ中心となった環境創りがこの部署つまり、

俺がやって来たことである事を伝え直し、

入り口として最も大事なことが、

その人材がどの様な事情を持って

その環境つまり、送出し機関に登録しているのか

を掌握する事だと

メモさせた。また、出口として最も優先する事は、

その人材の幸せだと書かせた。

更に顧客つまり、受け手側企業の満足度をも

上げる事も追記させた。




「やはり難儀な仕事ですね。

でも遣り甲斐は感じます。

人を繋げる商売でその人を幸せにできれば

最高ですよね!」


「私も遣りたいです。よく聞く話ですが、

大金の負債を抱えてまで日本に来る人達という

実態から手掛けてみたいです。

会長がおっしゃる人材の事情が判れば、

その環境創りって以外と簡単かもって思いました」


「いいね二人とも。よしじゃ、

下野君のメモ帳見せてや」



そのノートのメモは、言葉は違っていたが

意味は伝わっていた。


何より下野の現状を見て安心した。


奴なら預けてもいい。それに近松もいいミッけ者だ。

女ってのはこう言う仕事にでもアドバンテージがある。

俺はこう言う事には差別を感じる。


オマケが過ぎる美人だし。


「瞳ちゃん、俺らの仕事の教訓だ。

その問題を面倒と思うならそれはこっちの都合だ。

相手がいたら理解し合えるところで妥協もいいのよ。

相手が面倒ととらえる問題をこっちからは投げんな。

外に出りゃ俺らにゃアウェイだからな。

相手の立ち位置も考えも判らない奴じゃ

何が問題なのかすら判らねえ。

それを理解するためには日常は大衆の中で生きて、

夢の中では大衆の逆を探るんだ。

裏を知れば問題が見える。

問題が解ればそれを解く手段が選べるってモンだ。

いいかぃ、大衆の中に居て大衆の逆に張るのさ。

そうすりゃお前さん達にもすべてが視えるだろうよ」




健ちゃんに一連の話をして、2人を研修として、

3ヶ月ほど神戸の松田家に来させることを依頼した。



さあ、池ちゃんも居るし、

当分の間は賑やかな我が家になる

だろうと帰りの道を急いだ。





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