"Journal Steps: The Path to Change"
池ちゃんの古い作業を掌握させ、その引継ぎには
インド人エンジニアのBossに託した。
ボスはBoseという名前なのだが、
うち達の間ではその発音からBossと
呼ばれている。
日本の公営競技(賭博)を勉強したいという
本人の希望からだった。
チャートになるものはある種の専門で、
池ちゃん作のインジケータのアップデートに
ブラッシュアップは、プラットフォームが
違えど容易なのだろう。
ハタ目で見え居てもサクサクと手が進んでいる。
池ちゃんの心配はやはり賭博予想サイトの
作り込みを理解させることの様だ。
「ややや・・やっぱり2,3週間は一緒に
作業をした方がいいと思いますが・・」
「ん?なんで?ボスが心配?」
「いいい・・いや。こっちが・・ででで・・
まだデータと予想は
自動で反映できてないんです・・」
「ん?つまり?上がって来るデータを
見て池ちゃんが予想を
打ち込んでた?とか?」
「ははは・・はい・・」
「フん。ホントお疲れだったねぇ。
んで?当たる確率は?」
「はい。先週までの中央競馬での的中率は27%、
回収率は577%、地方競馬の的中が22%、
回収率は363%、競艇が的中率69.6%、
回収率62.4%、自転車が・・・・」
「まってぇ池ちゃん・・競馬の回収率って
500%とか300%とかあるのぉ?マジ?」
「ははは・・はい。こここ・・この通りです」
見せられたエクセルには偽りが無く、
競輪もオートバイも回収率で
マイナス月が見当たらなかった。
「池ちゃん・・自分では賭けてない?
予想だけぇ?」
「ははは・・はい。みみみ・・
ミイラ取りがミイラになるなって・・
かかか・・会長が・・」
「・・ミイラ取り?・・じゃ無いだろ・・
ったく。
OK判った」
池ちゃんの博才にはその運が
まったく使われてなく、単純に集めたデータ
の分析力が魅力であることも判った。
ボスには先ず、賭博の勉強はお預けにして、
池野データと予想を自動化させる事に集中させ、
うちの事務所からも協業できる様に
すべてのアクセス権をランに持たせた。
「どう?池ちゃん。
これで明日っからでも神戸に来れんべよ」
「はい。今からでも行けます」
「通勤もねえだろうから、うちに泊まりで来なよ。
パンツの替えだけ持っておいでよ」
明日中に一通りの引継ぎを終えるという池ちゃんに
身支度代と足代を渡し、会長にはボスの部屋の確保
をお願いして神戸に帰った。
難波の事務所では殆ど話が出来なかったカオルとは、
大体いつもこんな感じで、同じ場に居ても立ち位置
に応じて、各々が自然とその役目を遂行してきた。
最近では決まってこんな車の中くらいしか
ゆっくりと話せない。
「会長とこの道場はどうなの?」
「エエ道場やでぇ。マットがええわぁ。
韓国から取り寄したらしいねんけど、あれはええわ」
「どういいんだよ?」
「厚みが4センチあるらしいねんけど、
ジョイントがピタッと重なっとって
足が引っ掛からへん」
「へー。柔いの?」
「いや。程よくええ感じやねん。
うちの畳は繋ぎ目で足の指が引っかかねん」
「いい物ならうちもそれにしたら?
安全面とかさ」
「そやなぁ畳に拘らんと・・
おうそうするわぁー。
あれの方がチビちゃん達にもええわぁ」
「そゆの任せるわな。んでさ、
佐久間さんはどうなの?強えの?」
「しらん。孫はんもワイもモウ歳やぁ・・
若いのは皆、元気ぃやぁー」
「そか」
「だいたいお前の言う強いってなんやねん?
何が強いいう意味やぁ?」
「ああ・・あれじゃん。喧嘩とかさ・・あそう、
ヤクザ的にどうなのよ?」
「なんやぁ?ヤクザ的て?ハハハハハあ」
「だからよ・・先代の時にさ、
カオルが特訓したスワットの
人達と比べてどう?とかさ・・」
「あぁ、アレらは特別やぁ。
選りすぐりの連中やでぇ。
あれだけのメンバーはそないに居らへんでぇ」
「ということは、会長んところの人は大して
強くないって事か?」
「いや。根性はあるでぇ。悪は悪
やぁみんな。 ハハハハハあ」
「あそ・・」
「ほんでぇ?エエ町は見つかったんかぁ?」
「ううん。候補は絞れてきたけど未だ決めてねぇんだよ。
スーパーシティ落選組ってのが狙い目なんだけどな」
「ほうかぁ。急ぎよぉ。ワイらの最後の大仕事やぁ。
いつまでもアホ達に
政治させとく訳にいかへんでぇー」
「ああ・・」
馨と2人、散々走り続けた終着の場を
誓ったあの日。
俺らが生きた証。
それこそが俺達のやりたい事だ。
そこに行くためには半端じゃ成らねえ。
現状、俺らが連ねる立場の整理とその先の準備に
今を過ごしている。
今夜も松田の実家でひとり、オヤジと順子の前に
座りノートを開く。
もう何冊目だったか、今のこのノートの綴り始めに
も今まで通り、
「国と国とが争いで人を殺し合うことが無い世界を創る」
と、初っ端の1ページに描いてある。
2ページ目には、コピペの様に
Jaurnal Stepsと題した、
4つのノートの綴り方と3つの戒めを
書き込んでいるが、俺には戒めは不要だ。
1つ、俺と仲間、それぞれの役割毎の願い
(願望:ゴール)を書け。
※願いとは、理想とする自分、人、モノ、
状況、価値観だ。
1つ、その願いに対して、俺は何をしてるんだ?
※俺はどんな時間を過ごしてる?俺はに何、
金を使っている?
1つ、俺のその行動と金は、願いの為に本当に
効果的か?
※たまにゃ、見直せよ。
1つ、もっといい方法は無いのか?
※考えて考えて、もっともっと調べて、
良しと思えば実行あるのみよ。
「オヤジ、俺らやり遂げますよ。
見といてください。順子、
銭金で人が殺し合うことなんかもう、
絶対にさせねぇからな」
まだしばらくは事業の引継ぎに集中が必要だ。
松田のオヤジが創り上げた昔っからのモノは
然程、手が掛からない。
インシュリン含む薬品と食品食材関係、
それにバイオオイルには陳さん、
ホテルやコンドミニアムを含む国内外の
不動産事業は馨の親父と順子から引き継いだ
Maiがいる。
物流と貿易はうちのおやじとおふくろに
任せて大丈夫だ。
俺が仕上げた日銭稼ぎは時代応じて出来る奴が
続けるだろうし、
貝貝から預かっているプロダクション
も同じだろう。
やはり、外国人ワーカー含むコンサル事業の
安定が最優先だ。
翌日の夕方に神戸にやって来た池ちゃんを車に
乗せ横浜へ走った。
もちろん目的はコンサル事業の本部に行くことと、
その間にでも池ちゃんと時間を共有して温泉にで
も連れて行ってあげたかったからだ。
「いいい・・いつも、くくく・・
車で東京とかにも、いいい、行きますのん?」
「フフゥン。池ちゃん、IQっていくら?」
「110です。なんでですか?」
「お。そこドモリ出ないんだ」
「ははは・・はい・・IQ低いんですわ俺。
京大の平均は121でしたからぁ」
「おぅ?そうなの?
んじゃさぁ190ってIQはどうなの?」
「ひひひ・・ひゃくきゅうじゅう?
有り得んですわぁ。130あったら天才ですよぉ。
あり得へんあり得へん」
「らしいよな。でも居るんだぜ。
まぁ自称だけどよ」
「いやぁいやぁー嘘ですってウソですわぁ。
無い無い」
「それがさぁ、チンってんだけど、
池ちゃんみたくドモリなんだよ。フフゥン」
「俺みたいにですかぁ?俺のどどど・・
ドモリはくくく・・癖ですねん・・」
「クセ?」
「どどど、ドモリはううう、うつりますねん」
「おおお、おい・・あ・・そうかもな・・」
陳さんのそれと池ちゃんのそれが違う事
が分かったし、
ドモリがうつるというのも判る気がした。
「俺は多分IQ低いわ。だから今日も飛行機でも無く
新幹線でも無く、車をチョイスしたんよ。
思い立ったが吉日って単純な頭だ」
「なるほど・・竜司さん、教えたるっていう
トレードの手法なんですけど、
どんなやつですかぁ?」
「お。そこはドモらないのかい?フフゥン」
「ははは・・はぁ・・まあ・・」
「冗談だよ。日足で売り買いだから楽だろ?」
「いやそりゃ楽でしょうけど・・
金、ようさん(沢山)要るんちゃいます?」
「そりゃ池ちゃんみたく、ハイレバで
やってたんじゃ含み損に耐えられねえよ。
あれだろ?結果的に1億8千万だったよな?
1,000万から初めて2年でさ」
「はい。正確には
トレードは500元手で2年で9,500です。
あとはネット商売です」
「あぁそうだったな。1年で5000万として
1000%だろ。奇跡だぜ。
間違いなく池ちゃんには博才があんのよ」
「はぁ・・博才ですかぁ・・
まあ確かにバクチですよねぇ・・」
「悪いけどあの程度のインジケータの売り買い
サインで勝てる世界じゃねぇからな。
体力も運も使った筈よ」
「はぃ。勝ってる時はええんですけど、
負けが込むとメシも喉通りませんわ・・」
「俺らの年率は500%くれえだが、
もう20年続けてるんだぜ。
あんなこんな世の中が動いた年には1000%を
超えた年もあったしな。
だからよ、うちの仕組みを使って元手を
1000万に戻しゃ、
500~600は毎月、組に入れられる計算だろ?
ただ、
うちらの遣り口で毎月毎月となると厄介だから、
3か月単位とかで組に上げるって事で俺から
会長には話ししてみるわな」
「はい。そうできたら・・俺の体も空きますし、
その分ほかの事でも稼げますし・・」
「身体が基本よ。一時身体に
無理効かせて稼いでも、
続かねえぜ。俺ら生身の人間だからな」
「はい。できたらそうしたいです!
それでぇどんな手法(やり方)なんすかぁ?」
「慌てなさんなや池ちゃん。うちの事務所に
帰ったら一目瞭然だかんよ。
それより何で川崎会長ん所に入ったのよ?」
「ははは・・はぁ・・・・」
またドモリ出した池ちゃんは、
中々それを言いたがらなかった。




