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EQ @バランサー  作者: 院田一平
第1章
25/71

第25話 爛漫

挿絵(By みてみん)





順子さんが中心となったオーストラリア行の

打合せを終え、AKC社との協議には早かった

が3日前にブリスベンを経て

キャンベラへ着いた。


そのままチェックインした大きな鉄格子の

門が開きアールデコという造の

Hotel Kurrajongクラジョン

は、今までの旅で最高の部屋だった。




「順子さん流石っすね!このホテル。

前に来たことがあるのですか?」


「ううん、お友達が良かったって

勧めてくれたのよー」


「なんか木が多くていいっすね!

もっとビルがいっぱいなイメージ

だったんですけど・・首都って・・」


「そうね。私はメルボルンとシドニーしか

知らないのよ。意外といいわよね!」


「あとどないするん?なんも無かったら

わしチョット電話してくるわぁー」


「夕食まで何も考えてないわよー」


「OKほなまた後でぇー」


「ヒン、どこに電話すんのよ?」


「マイやぁー 毎日せな怒りよるねん

 ハハハぁ」


<そゆことか!>


「OKじゃあとでなー」


「マイ? 女の子なの?彼女?」


「いや・・はい。彼女何でしょうね多分。

ロシアのホビスさんのとこで知り合ってぇ」


「あーら!そうだったのぉー!へぇー」


「ベトナム人なんですよ。モスクワ大学の学生で」


「そうなのねぇーそれで?ソンくんは?」


<あちゃっ・・>


「え・・な・・何がですか・・」


「なに慌ててるのぉ?向こうでお友達は

出来なかったのぉって聞いてるのぉ」


<・・・・>


「あ・・はい・・それはあれです・・

友達というか・・その・・」


「はいはい。バレバレぇー クスクスっ」


「いえー・・違いますよぉー・・その・・」


「ポイポイ(貝貝)には逢ったぁ?」


<心臓炸裂中・・>


「いえ・・あ・・はい。ホビスさんの

娘さんでお綺麗でお嬢様で・・

その・・」


<ぁぁあ・・何言ってんだ俺・・>


「おキレイでおジョウさまで?それからぁ?」


「いえ・・だからその・・」


「馬鹿ねぇーポイポイの事はあなたより

知ってるわよぉー クスクスっ」


<・・だよな・・>


「あ・・はい・・」


「好きになったのねぇー?わかるわー。

いい子よぉー」


「・・いえ・・そんなんじゃなくて・・

その・・」


「何も無かったって事はなさそうねぇー

 クスクス」


「あ・・いえ・・マジで何にも無いっすーー

マジっすーー」


「あらそうぉ?じゃ電話してみるかぁー 

クスクス」


<・・いやだめぇーーーやめてぇーー>


「いや・・そんなことしなくても・・

マジ何も・・なく・・」


「クスクス 何があってもいいのよぉ

いい子なんだしねぇ」


<・・いや・・それもそんなんじゃ無く・・>


「貝貝さん・・その・・凄くて・・

凄いんです・・」


「すごくて凄いぃ?あそぅ」


<あちゃ・・>


「いえその・・何と言うかその・・

師弟(してい)なんです俺たち。そう!

先生なんです貝貝さんは俺の!」


「なによそれぇー?ポイポイが何の

先生なのよぉー?何が凄い先生なのよぉー?

 イヤらしいわねぇー もぉー」


<はぁ?・・えええー?・・

いやいやそうじゃなくって・・>


「いや・・そんな・・そんな意味の

先生じゃなくって・・色々有ったんです。

それがすごく濃くて・・その・・」


「へぇー、いろいろ濃いことがあったのぅー 

ほんとイヤらしいわぁーもぅー」


<だから・・そじゃなくて・・>


「いや・・聞いてくださいよ・・

貝貝さんは凄くて・・あ いや・・

その・・

俺の事とか・・先先と判るんです。

何て言うかその・・先手先手で

読み抜くって言うか・・

こうすればあーなる とか・・その・・

俺が目指してる人間像なんです。

貝貝さんは・・」


「ん?へぇー。なんだか日本に居た時の

ポイポイとイメージが違うわー。

あっ!? そうねぇーそうかも!・・」


腕組みの右手にあごを乗せ

考え込む順子さん。


<かわぃいーー>


「日本に居た時ってどんな感じ

だったんですか?貝貝さん」


「カナダの大学を辞めて来たのよ。でねぇ、

初めて覚えた日本語が『私は馬鹿です』

よぉーなのぉ。

 クスクスっ」


「はぁ・・なんすかそれ・・?」


「それを伝えたいからって言うのよ。

だから私が教えたのよー クスクス・・

でねぇ、何故そんな事を人に言いたい

のかって事だけど、

初めはカナダでの失敗を恥ずかしがって

の事って言ってたのよ。

でもね違うわぁ。そうよ・・」


「なん何んですか?」


「その時にも思ってたんだけど忘れてたわぁー。

『私は馬鹿です』って言った後の相手の反応を

鋭く観察していたわ。うん。そうそう。

そのあとねぇ、ロンシーのバイト仲間には

『私は貧乏だからここで働いています』

ってぇー クスクス・・」


<・・貧乏って・・笑い・・?ロンシー?>


「ロンシー?」


「ロンシーよ!? あれ知らない? ポイポイは

お父様のお店で働いてたのよぉー」


「あー! ステーキハウスですよね?」


「そうそう。そっか。お店の名前を

知らないんだねぇー・・

そっかそっかぁ。龍子ロンシィってね。

お父様の育てのお母様のお名前なのよぉー。

それこそ凄い人だったそうよー」


<松田さんのおふくろさん?育ての?・・>


「そうよ!いつもねぇ、ポイポイったらそうよー。

日本語が解る様になってからもオトボケなのよ。

でもそう!お店のお客様にはご指名が掛かる

くらい接客上手だったわぁー。

多分気が利いてたのよぉ。そう。気配りって

誰にでも出来る事じゃないわぁ。

相手が望むことをしていたのよぉー。

ご指名よぉークスクス・・

ただのホールスタッフだって言うのにねぇー 

クスクスっ・・・・」


色々と想い出しながら貝貝さんの話を続ける

順子さんに笑顔が絶えなく、その仕草に

見とれながらも松田さんの育った環境が

気になっていた。知りたかった。


「順子さん、松田さんのお母様ってそんなに

凄い方だったんですか?りゅうこ(龍子)って

凄くないですかっ!? 女の名前で」


<話し割ってごめんなさぃ・・>


「ううん・・龍子お母様はお父様が若い

ころに知り合ったそうでぇ・・

実のお母様やお父様のお話は余り知らないのよ・・

聞いたことはあるんだけどね、とっくに

死んでしまったとしか言うわないのよぉ・・」


「松田さんは神戸で産まれたのですよね?ほら、

ヒンのオヤジさんとかと幼馴染って聞きました」


「たぶん・・そう・・だからそう言うことを

お話しするのが嫌みたいなのよ・・

だから聞かないのよ・・」


「やっぱ不思議な人っすね。あちこちでの

武勇伝は色々聞いてますけど・・

ほら、言葉なんかも俺らと同じで、

関西弁じゃ無いですし」


「ソンくんから伺ってみれば今度ゆっくり」


「そうっすね。やっぱ色々知りたいですし。

聞いてみますよ俺」


「うん・・わたしにも教えてねぇー。

ねえねぇーお外に散歩に出なぃ?」


「あ・・はい!」



順子さんと2人で散歩というデート気分で

背筋が伸びた瞬間・・



ドドドォー・・



「じゅんこはぁーん!こっちの予定教えてぇー」


まだ30mは向こうからのヒン・・


「なんの予定なのぉ?」


「マイが来るぅー言うとんねぇーん!

あいつんとこオトン(親父さん)が

シドニーに居るねん。

ビザとかも要らんらしいねん!」


<そゆこと・・>


「シドニー!いいわねぇー!

じゃ私達もここが終わったらシドニーに

行こうよぉー!

そうねぇ、5日後でどう?」


「いや・・そう言うのって松田さんに

聞いた方がいいんじゃないっすかぁ?」


「大丈夫よぉー だってお父様はゆっくり

して来いって言ってたし。そうね。

じゃ連絡して来るわぁー」


「よぉーし!んならマイ呼ぶでぇー」


「うん。呼んであげなさいよぉー。

私もお逢いしたいわぁー」



ドドドォー・・



なんだか可笑しな旅になって来たが、ヒンが

Maiに相当入れ込んでいるのが判ったし応援

もしたいしと、順子さんとの散歩デートの

お預けにも仕方なしと、順子さんとヒンを

待った。


先に戻ったヒンが急に、


「おまえぇ順子はんのこと

好きなんちゃうかぁー?」


「え・・なんでだよ・・」


「ええんちゃうかぁー ベッピンさんやし

料理も上手いしぃー ハハハハハあぁー」


<ばれてるわ・・>


「うん・・順子さんが好きとか嫌い

じゃなくってさぁ・・

あぁゆう奥さんがいいなぁーってさ・・

俺さ・・」


「ええやんけ!順子はんと

結婚せんかぁーぃ!」


<・・単純がすぎるだろぉ・・>


「・・そゆわけにいかねぇだろぉ・・」



廊下の向こうから腕で大きな〇をしながら

歩く順子さん。


<やっぱかわいぃぃ・・>




AKCとの協議会迄の3日間を観光ツアーに参加したり、

バリーグリフィン湖を周るディナークルーズで

食事をしたりとオーストラリアの首都を満喫した。

俺の順子さんの英会話力には感心したがその他は

いつも通りの順子さんで、

普段のあの思考に仕草や態度や人との接し方にも

飾りが無いことが判った。


そして協議会の前の夕食後、


「ソンくぅん、1時間ほどしたら資料を

綴じるの手伝ってぇー」


「もちろんです。まだ出来上がって

無かったんですね?」


「添削したのよ。英文のチェックも完璧

じゃなかったしねぇ。私のお部屋に来てねぇー」


「あ・・はい。じゃ1時間後に行きます」


特別な感情はその時は無かったのだが、順子さん

の言葉に今まで気付かなかった色気を感じた。


「おじゃましまーす」


<わっ!・・>


バスローブ姿でソファーテーブルからデスクに

ベットまで散りばった資料を

仕分けしている順子さん・・


<やべ・・>


「あの・・もうシャワーを・・」


「うん。普通でしょうぉー。だって

汗かいたんだものぉー。ソン君

シャワーしてないのぉ?」


「あ・・はい・・まだ・・」


「やだぁー汗臭くなぁいー?

浴びておいでよぉー。私やっとくからー。

ここのお風呂使ってもいいよー」


「いいいやー・・俺大丈夫っす。

終わってから浴びますんで」


「あらー。後で少し吞もうよぉー。

だからゆっくりお風呂に入っておいでよぉー」


「あ・・はい。じゃぁ・・入ってきます・・」


<・・・・>


部屋に戻り湯船に湯を張り掛けたがシャワーで

済ませて気合のパンツに替えた。



「ただいまー」


「あら早かったわねぇー」


それでも2-30分は経っていたと思う。

散りばった資料も半分くらいが綴じられていた。


英文の苦手な俺には何が書かれてあるかは

理解できなかったが、はじから順番に

とじる作業は難しくなかった。


手際よくワインのコルクを抜く順子さんに

勧められるままに地元オーストラリア産という

赤いワインを飲んだ。


「ねぇソンくぅん・・私の事どう思うぅ?」


<!!!!>


「・・えっと・・どうって・・その・・

どういうふうにその・・」


「女としてよぉ。お父様の子でも無くって

家族の一員としてでも無くってぇ。どう?

もうおばさん?」


「ああーいえいえー・・そんな事ないっす!

素敵です。綺麗です。かわいいです。

それに・・その・・」


「まぁー!ほんと?それで?そのは何ぃ?」


「いえ・・その・・」


<腹決めろーーー俺!・・>


「好きですし・・順子さんの様なお嫁さんが

居たらいいなって・・その・・あれっす。

フォーを作ってくれたじゃないですかー! 

あの時に・・その・・」


「あぁフォーねぇー・・あの時に何ぃ?」


「いや・・あの時に・・あの時から好きです俺・・

順子さんの事。でも俺なんか・・その・・」


「ありがとうぅ。ううん。俺なんかじゃないわ。

私もソンくんが好きなの。私ね、

お父様の家に居るから男に人を知らないの・・

昔から恐い男の人ばかり見て来て、ソンくん

みたいな人に・・

ソンくんみたいな優しい人が理想よ」


<!!!!>


「・・嬉しいっす・・でも俺なんか・・」


「私もう30よぉー・・そろそろお嫁に行け

無くなるんじゃないかしらって思うのぉ・・」


<あっやっぱ30だ!>


「いえいえー。順子さんならどこにでも

いつでも行けますよ」


「うんん・・疲れちゃうのよねぇ・・

相手を知るのも、私を理解してもらうのも・・」


「・・そんなモンなんですか?」


「うん・・ソンくぅんどう?やっぱり年上の

私はダメぇ?十歳も違うもんね・・」


「いえ!ぜんぜん関係ないっす!順子さんなら

10だろうが20だろうが歳なんて関係ないっす」


「ほんとぅ?」


「マジっす!本当です!」





「ねぇーソンくぅーん・・抱いて・・」




<○▼※△☆▲※◎★●・・・・!?>









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