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EQ @バランサー  作者: 院田一平
第1章
22/71

第22話 豪気壮烈

挿絵(By みてみん)



選択肢は多く有ったマカオの夜の遊びも何分初日のこと。

それに、タバコや酒は違法だとは知ってはいたが早かった俺だが、

日本(ヨコハマ)でもそんなに夜遊びは知らなかったものあった。


美女がそろうその店のバーカウンターで最初はビールを飲んでいたが、おねえさまの勧めで個室の

カラオケBOXに移り、1000HK$のテキーラのボトルに変えてはしゃいでいた。

歌っては吞み、かめかめピョン的なゲームに負けても吞み。

伝票を見て2500HK$を払って誘われるがままに階段上の部屋に入った処、くらいまでは覚えていたが・・


「おきろーー おーいソーン」

ビシャッ!


夢見心地もなくヒンの顔への一発で目が覚めた。


「・・いてぇ・・?どこここ?」


「ヤラれてもぉたわー」


いつに無く笑いも無くヒンが続ける。


「銭とられたんやぁー おまえわぁー?」


「・・・・ない・・」


財布の中にはCard類は有ったがお札が全部無く、

ポケットに突っ込んでいたカジノの勝の残り分も無かった。


「下で暴れてきたったけど、だぁーれも知らんてぬかしやがるんや 腹立つでぇーホンマ」


ほどんどヒンに抱えられながら降りた時の店の慌ただしく片付ける連中の顔を見ると、ヒンのその時の暴れようが想像できた。


「俺たちが悪いわな・・かえろうよ・・」


「ほやなー1回帰ろかぁー」


迷いながら1時間も歩いているうちに段々と記憶が戻って来たが、会計の金からしても吞んだ酒の量で、

俺もヒンもあんなになるほど酔ったのが不思議だった。


「ヒンごめんな・・俺が誘ったばかりにさ・・」


「ほんなもんええがなぁー そやけんど腹立つわー やっぱりも一回イてコマし(殴りに)に行ってくるわぁー」


「ま・・まぁまてよー 俺も後でいくからよー とりあえず金とりに帰ろよー」


「わしぜーんぶ取られて帰ってもイッちぇん(一円)も無いわぁー ハハハハハあ」


<ぜんぶ?わらいごと?>


「全部?どゆこと?」


「全部やー わし、もろた(もらった)袋に自分の小遣いも入れてポケットに入れとったんやぁー」


<そゆことかぁ・・>


「俺、袋はそのままだから全部ヒンに渡すよ」


「ええわいやぁー んなモンどないとでも(何とでも)なるわぁー ハハハハハあ」


酔った筈は無かったが頭が痛く、俺は部屋に分かれてから寝込んでいた。


陳さんからの朝食の電話を受けて目が覚め、昨夜の話をした。


睡眠薬を酒に盛られたのだろう、よくある事だからと言われヒンと2人で大きくうなずいた。


仕返しに行くというヒンを(ナダ)め、警察に言っても無駄な時間ともいい、

陳さんは自分は不要(いらない)からヒンに使えと、封筒のままを差し出したがヒンは頑なに受け取らなかった。


朝めしが終わって、絆薬品の本社事務所の本契約を済ませ、そのまま現地で、区画するパーテーションの打合せし、椅子テーブルと言った備品も買いに行った。


夜はまたシーシー(詩詩)さんの待つ海湾餐庁で食べながら、絆薬品の明日以降→営業開始までの大まかなスケジュールや細部の現地スタッフの雇用や準備書類の打合せをした。


翌朝からは、第一行政区の漁翁街と馬揸度博士大馬路の角で、二方向に海が見える絆薬品本社事務所に出勤した。


俺とヒンは続々と配達される備品の入った箱を配置図に合わせて間配る。


「痛ぇー 腰が・・」


「置きとけやぁーワイがやったるでぇー」


ひとつでもまあまあの重さの箱を3つ重ねて運ぶヒン。


「マジ無理・・すまん・・ちょっと休ませてぇ~」


「運動不足やぁー 今日からまた稽古しよやぁー。ワシが教えたるしなぁー ハハハハハあ」


ロシア行き以来、ハップキドーも練習してなかった。


「てかさぁ、ルーカスクワンジャニムってブラジル人だし、ここにいたら言葉は苦労要らねぇよなー?」


「ほやな。あーホンマやなぁー クワンジャニム呼ぼやあー!」


<いや・・そゆ意味じゃなくて・・>


思い立ったが吉日のヒン、早速松田さんに相談の電話を入れ、松田さんも松田さん・・

「呼べー 言うてはるわー!」


<マジ?>


「ルーカスさんにも都合があんだろうしさぁ そんなに簡単な事じゃないでしょよ・・」


「だいじょぶダイジョブー 暇やから。道場なんかクワンジャニン居らんでもええねんてぇー」


<そゆ訳にはいかんだろ・・>


その日の夜にヒンの親父さんから連絡が入り、


「クワンジャニン明日来るでぇー!」


<・・・・>


「あしたぁー?」


「よよよ・・良かったですね!いいい・・今は・・ひひひ・・人手は多い方がいい」


<・・ま・・そうだけど・・>


「陳さん、você também fala português(ポルトガル語話せる?)」


「Claro, Eu sou supercar multilíngue」

<わかんね・・しかもドモんね>


「ごめんなさい・・何と言ったのですか?」


「僕はマルチリンガルを超す数の言葉を話せます」


<すげ!てかそれもドモんねぇー!>


「あ・・やっぱ凄いですね!」


その夜、ドドドォーという音と共にヒンが部屋にやって来て、


「わしも1と3 いわし(勝った)たったぁー!」


といい、ATMでおろした2000HK$を全部張ったといい、これでクワンジャニムと旨いめしが喰えるといい残して出て行った・・


ビルのワンフロアーという広さも、ルーカスクワンジャニムが合流とルンルンのヒンのお陰で、作業は予定より早く終えた。


陳さんがシーシーさんと珠海でのデートの日、早くもまた事件が有った。今度はそれなりの大事件となって、香港紙の明報(Ming Pao)にも載った。


俺とヒンとクワンジャニムは、澳門探索へと友誼大橋を渡り氹仔島(タイパ島)の最南端と呼ばれる

コロアネエリア澳門最南點からの逆戻りで、コタイエリアで昼飯をと考えたがタクシー運転手の勧めでタイパの漁村まで一気に戻って来た。

港に結ぶ真っ直ぐな道の両サイドに店舗や露店が色とりどり賑わいでいた。

その内の一軒、道路狭しと並ぶ水槽に蟹や海老や巻貝それに、大きなイカや石斑魚が泳ぐ店に入った。


「かんぱぁーぃ!」


目に入った青島(チンタオ)ビールで乾杯してそれぞれが好きなものを注文した。


「これもうまいわぁー!」


「ホンマや。ごっついうまいのぉー」


「クワンジャニンこの蟹も喰うてん 目ぇ 飛び出るでぇ~」


「これカニ?ホンマに旨いカニぃー?んなら俺もカニ喰らうカニぃー ニカっ」


「ドふぁっプ プ ぷ ハハハハハあ」


<そんなにウケるの・・それ・・>


この2人の関西弁の共演はだいたいいつもこんな感じで・・

そもそも見るからに凶暴な南米大陸の薄黒い大男と、日本に住みベトナムの血が流れている癖に大男な奴が喋る関西弁のちょっとしたダジャレやギャグにはピンとこない。


片やポルトガル語で店員と喋るし、片や広東語でオーダーするし、そんなデカい2人が大笑いしながら訳の分からない言語で話すものだから周りからの視線が痛い。

そんな時外から聞こえた。

「Có ai giúp tôi với! AI ĐÓ GIÚP BỌN TRẺ ĐI~!」

<間違いないベトナム語だ!>


「なんやなんやぁー」


「子供がどうの、助けてあげてときこえたけど!?」」


「いこやぁーー」


外に飛び出ると漁港の方に人だかりが見えた。

狭い道を歩く人波を分けて近づくと一隻の船をかばう様な連中と数人の男たちが揉み合っている。


<あの人だ!>


向こうで船を指差しながら叫ぶ女性に近づき、

「Chuyện gì đã xảy ra ở đây?(なにがあったの?)」


と聞くと、


「Có trẻ em Việt Nam trên thuyền・・・・Họ đã bị bắt cóc.」

船の中にベトナムの子供たちがいて助けてあげてと言う。


「ヒーン、おーいヒーン、あの船ン中に誘拐された子供たちがいるんだってさーー!」


「なんじゃそりゃー! おいこらぁー!」


と、この騒めく群衆がシーンとなるほどの声を上げながら前に割って出たヒンが見えた。


俺も行かなきゃと前へ出来れた時に足元に三人の転がりつくばう男達がうなだれていた。


「おらーおらー!ウォーーー」


と、ヒンの声が聞こえる向こうの方でも次々と人が倒れていくのが見える。


と、また俺の前の対抗していた数人の奥から男が飛んできた。


クワンジャニムだ!


ヒンとは違い、静かな摺り足で次々と船の連中を倒したり投げ飛ばしたり、その速さは周りがスローモーションに見えるらいだ。


船が逃げようとエンジンを吹かしているが突堤に括り付けたロープに数人の対抗者たちがしがみ付いている。クワンジャニムが乗り込み次いでヒンも追った。

俺は大衆とともに痛さにうずくまる弱った連中に追い打ちの蹴りを入れがらクワンジャニムとヒンの心配もしたが、船まではたどり着けない・・サイレンが近づいて来てすぐにポリスが来るのは判った。


ポリスの車を入れるために、人々の輪が広がり始めて見える連中は、10人以上倒れていた。

辺りにはナイフや鉈が転がっていた。


一台目の車から小走りで出てきたポリスが人々が指差す船に足を掛けた時、ヒンが小さな子供を抱えて出てきた。後に続く14人もの小さな子供たち、



「こんで(これで)最後やー あのこ弱っとるから早よ救急車呼んだってぇー」


と、ヒンの抱える子を指差すクワンジャニム!


大歓声の中、


「痛い・・ここ痛いぃー」


というヒンの左肩甲骨あたりにはナイフが突き刺さっていた・・




「ヒーーーン!大丈夫ーー!」




「痛いぃー けんど まあ 大丈夫やぁ だいじょぶダイジョブー」


「お!ワイはナイフ持ってナイフ。あそーぅワシに用はナイフ? ブハっ もうゆわナイフ」


<・・・・あなたも血・・出てますが・・>




急に大雨が降りだして、次から次へと増えるポリスもびしょ濡れで、それでも増えるひとだかりの中、


船の前に立ってくれというカメラマンの要望に応えた俺たち(俺も)。







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