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EQ @バランサー  作者: 院田一平
第1章
12/71

第12話 落胆

挿絵(By みてみん)



貝貝ポイポイさんが横に立つとヒールの分

俺より高かった。


「170・・174センチですか?身長・・」


「すごい!4cmまで当てられたのは初めて」


「・・いえ・・俺と同じかなと・・そのヒール、

5センチかなって」


「へぇ~あなた観察すごいね。それで1cmも

間違わないフフフ」


<笑い方は親子・・でもぜんぜん違う・・

かわいい・・>


「・・あの・・貝貝さん・・お母さまは・・

おかあさんも中国系ですか?」


「フフフ 後でゆっくり話しましょ。さっぁ

行きましょう」


<いや・・やばい・・>


「いあぁ・・ちょっと待ってください・・」


<もう手を取られてしまって・・>


「何を待つの」


<・・そういうものなのか?・・いやホビスさん

の顔が浮かぶ・・>


「いえ・・もう気分が良くなったので・・

あそこでお話しませんか?」


<Barでとにかく・・・・>


「いいわよ。でも今夜はかならず私の部屋に来てね」




「・・・・は・・い・・・・」



<と・・言ってしまってた・・>


俺はBarカウンターを指差していたが、座らされた

のは例の大きな木のちゃぶ台だった。

バーの横の小さなスペースだけが見えていたが

座ってみればまるでお茶屋の様で、黒白黄みどり色

から花茶まで7つに色分けされた列には、銘柄と

年数が書かれてあり、

ホビスさんが点ててくれた普洱茶も

大中小が並んでいた。



「お酒よりお茶にしましょ」



武夷山大紅袍原木と書かれた葉を独特の作法で

お茶を点てる貝貝さんは、背筋を伸ばして凛と

美しく、ちゃぶ台を照らすスポットライトが

程よくその顔を輝かせている。


「きれいです貝貝さん」

<ええぇ?・・言っちゃってた・・>


「フフフ ありがとう。あなたも素敵よ」


<なぜだろ・・俺 落ち着いてる>

「おかあさんのこと、ここには居ないの?」


「香港に居るの。歌手よ。ママはBritishと香港人

halfblood(ハーフ)で本当に綺麗よ・・

でも・・」



<歌手!・・ブリティシュ?・・なんで

寂しそうなんだろう・・>



「・・でも・・どうしたんですか・・?」


「・・なにもない。長い間会ってないだけよ。

ねえ ソンは何歳?」


「19です。あっもうすぐ20です。そうそう

貝貝さ・・・・あっ」


「あっ?なに?」

<順子さんに怒られたことを思い出した・・>


「いえ・・貝貝さんが俺よりおねえさんかもって。

なんかよく分かんないのです・・女性の歳って・・」


「25よ」


<! そう言われてみればそうなのだと>


「あっじゃやっぱお姉さんですね。でも同じ

くらいかなって思ってました」


<順子さんは喜んでくれたので・・俺・・

まあまあ嘘つきかも・・>


「あら失礼ね!そんなに子供にしないで!」


<えっ・・怒られてる・・>

「いえいえ・・その・・・・」


「joking just kidding!フフフ」

<・・ともかく・・笑顔がかわいい・・>


「好きです。・・あ いや・・年上のその・・」

<馬鹿か俺・・なに言ってしまってる・・>


「フフフ私も好きよ」


「・・・・・・」


お茶を、今まで貝貝さんが注いでくれてた

お茶を自分で注いで飲み干した。


「ソンの彼女はどんなおんな?」


「えっ・・俺 彼女いないっす・・」


「そう。じゃ私がなってあげる」


<・・・・ぇぇぇえー・・もうどうにでも

してくれー>


ゴォゴーと向こうの扉の音が鳴ったと同時に、

「ハハハハハあぁ」


にぎやかな5~6人ほどが、ヒンを筆頭に

帰って来た。


<こっちに向かってる?>


「あーーーソン そこに居ったんかぁー?」

<マジ部屋に帰ってくれ・・>


「うん ここだよ・・」


「なんやぁー俺らもバーで吞もう言うてなぁー 

あ!ポイポイはん!居ったんかぁいなー」


「フフフお元気ですね。どうぞ座ってください」


「ソンもう吐いたぁんかぁー?ハハハハハあぁ

・・あれェーあの子はぁ?」


<どれだけ飲んだのか?いつもに増して

声がデカい・・>


「・・うん・・俺もう大丈夫だからその・・

多分・・帰ったと思う・・」


「なんでやぁー えらいベッピンさんやったやん!

なんで帰らすねん 勿体無いなぁー」


「私が帰したの」


俺が答える間も無く・・


「お・・えぇ?・・あぁそうですかぁ?」


<頭の中で整理中なのだろう。

声が小さいヒン・・笑>


「フフフ ではみなさんゆっくりくださいフフフ」


と、ホビスさんは階段を上がって行ったがテイさんは、

「さあさあ乾杯するよ」


また違うウィスキーを手にしている・・


「あら叔父様、ソンはもう飲めないわ。ソンに

ベトナム語を教えてもらってるの。いいわ。

私たちは部屋に戻るわ」


<・・っ痛てぇ・・俺の手の甲をつねってる・・>


「ぁ 唔好意思ぅ唔好意思ごめんごめん 

ハハハぁ・・」


<テイさんも声が・・小さい・・貝貝さん・・

こわいかも・・>


「行きましょソン」


引きずられるまではいかないが、かなり強引に

手を引かれて階段を上る。


「・・ここです・・」


<・・俺の部屋・・じゃないの・・>


「いいの。私の部屋に来て」


<いや・・パンツを履き替えたいし・・

ホビスさんの顔やみんなの顔が浮かぶ・・>


美術館の様な例の玄関を見下ろして、多分このあたり

の真下がヒンのいるBarだろう通路を歩き、コの字の

右奥が貝貝の部屋だった。


数えれるだけで11部屋ある。どこが誰のまたは、

何の部屋なのか判らないがとにかく

貝貝の部屋に入った。



俺の部屋とは全く違い、正面の大きな窓から

モスクワ川が見え、ピアノがありキッチンも在る。



「ねえソン・・わたし・・ひとりが怖いの・・」

<・・そこに順子さんの様な色気は無く・・>


「ghostとか?nightmare・・それとも・・あ!

誘拐?」


「うん・・ゴーストも嫌だし悪い夢もよく見るわ・・

でも・・ちがうかな・・」


<・・さっきまでのあの強い感じの

貝貝さんじゃない・・さみしそうな・・>


「なんだか寂しそうですね・・酔っ払い?

吐きそう?」


「・・そうよ。寂しいのよ・・独りが嫌なの。

いつも誰かといたいの」


「ごきょうだいとか・・貝貝さんは一人っ娘

なんですか?犬とか猫とか飼えばどうです?」


「うん・・ママには2人の子供がいるわ私以外に。

パパとママの子供はわたしだけ。だから

ずっとひとり・・パパはそう、パパは犬も虎も

飼おうとしたわ。でもわたし、allergyなの。

動物の特に毛がダメ」


<?お母さんに2人・・貝貝さんはひとり?なの?

・・え? 虎って言った?>


「それってホビスさん・・あごめんなさい・・

イリアさんとおかあさんはもう別々の

家庭ということですか?」


「хоббист(ホビス)でいい。パパもそう呼ばれる方が

嬉しいみたい。ママは・・ここ(ロシア)に来たことが

無いわ。2人子供は私と1歳と2歳 下なの。

それだけではないわ。あのパパだから・・私は

何回もママに連絡したわ。でもママは

連絡をくれないの・・私はschoolの成績は悪い。

でも馬鹿じゃないわ。パパが教えなくても・・

全部解るのよ」



<俺も・・理解できてる・・たぶん・・>



「ママはママですよ。間違いなく貝貝さんの

おかあさんですよ。でも・・よくわかんないん

ですけど・・俺・・思うんです。家族って、

男と女って、もちろん大事だって。でも・・

一番大事なのは自分じゃなきゃ・・自分を

大事にできるから男は女を、家族を、大事に

できるんじゃないかって・・だから・・

たぶん・・おかあさんも・・」



「そうよ。ママは自分が一番大事なの。

そうよ・・そうね・・」


<俺はそんなことを言うつもりじゃ

なかったんだけど・・>


どこか腑に落ちた様子の貝貝はスッと立ち上がって、


「いない人をいつまでも恋しがるのはやめた」


<やっぱスタイルいい!かっこいい!>


座ったままの俺から見た貝貝はこの上なく

綺麗だった。


「ソン お酒飲もう!」


「・・いや俺・・」


<流石に酒は口にしたくなく・・>


「Okじゃ寝る?」


今やよく使われるギャグ的このフレーズは

この時の貝貝から産まれた!・・はず・・


貝貝の部屋の中に扉は更に4つ在った。

リビングの大きな窓際の扉を開き、



「私のBedroomはここね。ソンはあっちね」



「えっ!・・」


<えって 言っちゃった・・>



「なに?どうしたの?」


「・・いえ・・俺 自分の部屋へ帰ります・・」


<・・あんなことこんなこと・・

考えてた俺・・>



「だめよ。ひとりはいやなの」


<・・別々の部屋で・・もはや・・

ひとりじゃん・・>





「はぃ・・じゃ・・おやすみなさい・・」






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