第11話 折合
独特のホビス(イリア)さんの笑顔に応えるように
テイさんも白い歯を見せながら話し始めた。
「ここに来てすぐに優二さんには今日の報告を
しました。もちろんそうします。でも今日の契約が
スムーズにいかないことは事は最初から分かって
いました。理由はポルトガルサイドが簡単に
あきらめることは事が無いからです。優二さんは
lobbying(ロビー活動)の時、まず相手、そう競合相手
と必ず会いますでも今回は相手が見えなかったのです」
ゆっくりと正確な日本語を話してくれる
テイさんが続ける。
「ポルトガルの役人は金主、つまり民間の企業か?
または個人を隠して創り立ての投資団として入札に
参加しました。ここロシアではそれもOKなのです。
今回、優二さんは落札価格を澳門の
販売ロジックからロシアのその担当と密にはじき
出したのです。つまり、優二さんは落札価格が判るね。
だから勝ったね」
<・・難しい話だけど・・イメージできる>
「松田はんが値段決めたぁーいうことですかぁー?」
水煮肉片の牛骨を
カジリながらのヒン・・
「高い過ぎるは誰も落札しないね。安い過ぎるは損ね。
だから適切な価格をロシアは決めるね。でもその
能力無いよ。優二さんはマカオのデーターから売れる
数字を教えた。逆算ね。ロシアの保健局担当官は
それを使ったらみんな賛成したね。・・・・担当官は
優二さんに感謝でしょう。だからポルトガルには
不親切。落札の後、問題あったね。
彼(担当官)は行方不明です」
「・・ポルトガル側に何かされたのでしょうか?」
「そう考えるいいね。優二さんは彼も大事にしたい。
勿論。でも相手が判らない・・だから、今日、契約で
きないでもいい。相手と交渉できればいい。
これが目的ね優二さん」
「・・でその・・相手は誰か?判ったのですね?」
「はい。今日わたしは怒りました。わざと大きい声で
怒りました。でもその時いいました。相手と話を
させれば必ず良い話ができる。もちろんあなたにも
お金あげると。もしそれができない時、あなたは死ぬ
でしょうとも言いましたよ。 ハハハハハあぁ」
<・・死ぬ・・あ!そういう事か・・
大きな流れが理解できた>
「あぁ車の中で松田さんの意図があるってそのこと
だったのですね。テイさんと松田さんの作戦ですね」
「ハハハあ 優二さんの指示です。100%
ハハハハハあぁ」
<なんだか凄い・・日本では普通に過ごしている
最中にそんな事もやっていたんだ・・>
「いいじゃん!いいじゃん!」
まだ牛骨・・カジってる・・
「あの・・松田さんと・・松田さんに電話して
もいいでしょうか?」
<声が聞きたかったし・・いろいろと・・
とっさにお願いしていた・・>
「はいはい。そうですね。電話Changeするよかったね」
「フフフ どうぞ」
部屋に響くプルループルルーと呼び出す音の先、
「はい松田です」
<順子さんの声だ!>
「あの・・ソンです」
「あらー元気?大丈夫?やっぱり寒い?そっちは?」
<今日はクダけた順子さんの声>
「はい寒しです。でも大丈夫です。順子さんもお元気
ですか?・・あ・・いや・・すみません・・
松田さんを・・」
<もっと話したかった・・でも考えてみたらまだ3日しか>
「はい。ソン君。疲れたかい?」
「いえ・・色々あって・・その・・」
<なぜ電話したんだろう・・俺・・>
「松田はーん ロシアの飯 旨いですわぁー!
ハハハハハあぁ」
<・・ったく・・ヒンには救われる。てか
ロシア料理じゃねぇし・・>
「おうシャオヒンもお疲れ様。活躍だったそうだね。
テイが褒めてたよ。そっちの連中より頼りになるってさ」
<・・褒めてたの? 何を?いつ?・・>
「ええかっこしい<かっこつけ>がいっぱい居ります
ねんけど 大した事ないですわー ハハハハハあぁ」
「そうか。でもお前らを守ってる連中だ。
行儀よくしろよ。」
たまに見せる恐い松田さんの声に、
「ほぉい・・」
<流石のヒンも・・>
「・・あの・・松田さん・・契約・・あとは契約して
帰ればいいのですね?」
「そうだ。もう大丈夫だ。奴らとは折半で話は着けた。
マカオじゃまだまだ連中と組んだ方が得策よ。あと
神戸に帰ったら詳細は伝えるが、すぐにマカオに
飛んでくれ。その後はサイゴンだ」
<・・一安心とまた不安とが入り交ざった・・>
「澳門は解ります・・サイゴン
(ベトナム)ですか・・?」
「その予定だ。いま進めている。まあ先ずは
契約を済ませておいで」
「・・はい。あと・・松田さんと入札のロジックを
作ったという役人さんは・・」
「おう。それももう大丈夫だ」
<もっといろいろ聞きたかったし・・順子さんに
代わっても欲しかったが・・>
「そうですか。安心しました。それでは失礼します」
変わらぬ笑顔でホビスさんが口を開く、
「セッパンの日本語はなに意味ですか?」
「50:50ね?」
テイさんが答えたが・・
「そうですよー。松田はんはいっつもセッパンですわ。
半分半分ですわー」
「フフフ 優二san優しいね。わたしそれしない。
51取る。少ないでもね」
<笑顔の奥の目がテイさんの目とは違うことに気が付いたが・・
51の意味はわからない・・>
「さあでは乾杯しましょう! オージャンいらない
いいじゃんに!」
乾杯!
「ヒン・・そう言えばあの時、何してたんだよ?」
「はあ?いつのどの時やぁ?」
「あの・・車にさ・・遅れてきたじゃん」
「あーそんなもん決まっとるやないかぁー
みんなを見届けとったんやー」
<マジ意味不明・・>
「ソンさんは気付かないですね。彼はスッと皆んなの
後ろに行き護衛の最後尾の彼から銃を奪った。
それは鮮やかな盗み方でしたよ。銃を取られた彼の顔
ハハハぁ」
「簡単やぁー いっつもクワンジャニンと訓練しとるがなぁー
ハハハハハあぁ んで 最後尾を周っとんたんや」
<知らなかった・・そう言えば・・俺は自分の事が精一杯で
・・ヒンを見る余裕は無かった・・>
「・・ごめん ヒン・・俺・・」
「なんやぁ?」
「・・俺・・こわくてさ・・なにもできなかったよ」
「ハハハハハあぁ 俺が護ったる!心配すなぁー
ハハハハハあぁ」
<なんか・・本当にヒンのことが解らなくなったが嬉しかった>
「ありがとう」
よほど旨かったのだろう、まだ牛骨に喰らい付きながら大きく
胸を叩くのヒン。
「フフフ では警備の者は解散ね。
シャオヒンsanに任すいいね」
「おう任しときぃー」
「ハハハハハあ シャオヒン、もうだいじょぶダイジョブ」
「ハハハハハあぁーー」
やはりハモる・・
Ciderを片手に何か高級そうなウィスキーに
替えたテイさんがカラオケを歌い始めたり、燕の巣の
ココナッツスープや西瓜が鳳凰に形取られた
フルーツ盛りなどなどの甜密点を彼女達から
口に放り込まれたり・・サイコロ大小
ゲームが始まったりと賑わう場の中、
「・・あの・・すみません・・先に部屋に帰って
もいいですか・・」
<酔っ払った・・疲れもあったと思うが
少し吐き気がした・・>
「フフフ どうぞ。解散は自由いいね」
「なんやぁーもう寝るんかぁー」
<いろいろ ヒンには敵わない・・情け無い・・>
「うん・・吐きそうなんだ・・」
「你要请照顾他(彼の世話をお願いします)」
と、テイさん・・
「いえいえ私は独りで大丈夫です・・」
「ん? ハハハハハあ ダメよー 心配よー」
<・・いたしかたなく・・>
「・・はい・・では
しみません先に休みます・・」
隣への大きな扉を開き美術館(玄関)に戻り階段を
上がろうとした時、
「あら、もうお休みですか」
貝貝さんの声。Barカウンターで
CourvoisierXOというお酒を飲んでいた・・
<腕組みの彼女を隠すこともできず・・
恥ずかしい・・>
「ロシア人が好きなのね フフフ」
「・・いえ・・あの・・彼女は・・その・・」
「大丈夫よ。遠慮しないでぇ。やはり彼女達の
方が綺麗もの」
<・・いやいや・・そうじゃなくて・・やべ
恥ずかしい・・吐き気もぶっ飛んだ・・>
「そんなじゃなくて・・その・・・・あの
食事はされたのですか?皆さんはまだ・・」
<いつ帰ったのだろうか?もしかしてずっとここに
居た?ご飯たべたのかが気になった>
「食べましたよここで。あなたとお話がしたかったのよ」
「・・・・え? わたしと・・ですか・・?」
「そうよ。タイプなの」
<・・・・苦しい・・いや 多分 冗談・・>
「やめてください・・キツイ冗談です・・」
「I'm not kidding ジョークじゃないわ」
<・・とにかく言い訳を・・>
「・・あの・・彼女は私の介抱をと・・俺 気分が
悪くなって・・その・・」
「あらそうなの?OK-
Оставьте его и идите по домам」
貝貝さんがそう言うと彼女は俺にウィンクを
しながら離れていった。
「・・あの・・」
「どう大丈夫?酔っているなら私が看病するわ。
部屋に行きましょう」
「・・・・・・」
<・・声が・・でない・・>




