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モブ商人は生き残りたい  作者: わたがし名人


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第7話 モブ商人は魔具店を訪れる



「うーん、やっぱり僕が使えるような魔具はないか」


 ヘンソンは王都にある魔具店にやってきていた。


 王都に店を構えるだけあり店内はかなり広い。


 ジムサンド商会よりも広い店内には様々な魔具がズラリと並んでいる。


 この店に来た目的はモブ商人のヘンソンでも扱える戦闘用の魔具だったが、どうやらお目当てのものは見つからなかったようだ。



 魔具。


 ダンジョンからドロップしたり、錬金や鍛冶で作られるものなど様々で、魔具には戦闘用や生活用、更には装備できるものから使い捨てのものまで様々な種類がある。


 一見するとアイテムと魔具には違いがないように思えるが、魔具はアイテムと違い強化やカスタマイズをすることができる。



 ヘンソンが探していたのは使用者を選ばない戦闘に使える魔具だった。


 ゲーム時代ではスキルや職業に縛られず使えた魔具をいくつか見つけたのだが、モブ商人である今のヘンソンでは扱えない物になっていた。


 もしものための自衛手段として、1人でも戦える手段が欲しかったのだが諦めることにした。


 ここまでくるとまるでヘンソンに戦うことを禁止しているかのような何者かの意思なのではと思ってしまう。


 と、小難しいことを考えてみても何も変わらないのでひとまず置いておくことにしよう。




 ヘンソンが魔具店を出ようとした時、


「ちょっと、なんで値段が違うのよ。どっちも同じでしょ?」


 魔具コーナーの一角で店員と少女が何やら揉めていた。


 ヘンソンはその様子を伺うと、少女はどうやら同じ性能の商品で色が違うだけで値段に差があるのが納得できない様子だった。


「どっちも性能に差はないのよね?なのになんで色が違うだけでこんなに値段が違うのよ」


 少女は欲しい方の魔具の値段が高いことが不満らしい。


「えーとですね、それについてはですね…」


 対応する魔具店の店員は日の浅い新人なのか、上手く理由を説明できないようだ。




 見かねたヘンソンは同じ商人として助け舟を出すことにした。


「すみませんちょっといいですか」


 ヘンソンは店員と少女に声をかける。


「あなた、誰?」


「この店の人間ではありませんが僕も商人でして。よかったらこの魔具の値段の違いについての説明をしてもよろしいでしょうか?」


「え、はい。お願いします」


「お願いするわ」


「ありがとうございます。では早速」



 ヘンソンは値段の違いについて説明を始める。


「まずはじめに知っておいて欲しいのは魔具には元々1種類の色しか存在しません」


「えっ、そうなの?」


「はい。ダンジョンなどで手に入ったり、錬金術や鍛冶で作られる魔具も効果の違いはあれど見た目に変わりはなく同じ色です」


「じゃあなんで他の色があるのよ」


「それはここにある魔具は魔具職人によって彩色されているからです」


 魔具や装備は元々は1種類の色しか存在しないが、それを加工できる魔具や装備の職人によってカスタマイズできる。


 これはゲームなどではよくあるシステムだが、どうやらこの世界でもその要素は受け継がれていたようだ。



「つまり私が欲しい色の魔具には加工料が含まれているから値段が違うのね」


「そうです。ご納得してもらえましたか?」


「ええ、わかったわ。ちょっと高いけど理由があるのなら仕方ないわ。これもらえるかしら」


「は、はい。ただ今ご用意致します」


 ヘンソンの説明で少女は納得して魔具を購入することに決めたようだ。



「あなた、名前は?」


「僕はヘンソンといいます」


「ヘンソンね。あなた、商人って言ってたわね。お店はどこにあるのかしら?」


「実はまだ見習いの身でして、まだ店はありません」


「ふぅん、お店を建てるならちゃんとわかるようにしておいてね。行ってあげるから」


 どうやらヘンソンは少女に気に入られたようだ。



「お客様、商品の用意ができました」


「ええ、お会計をお願い」


 少女は店員に連れられ魔具の会計へと向かっていく。



「先程はありがとうございました」


 店を去る時ヘンソンは魔具の店員にお礼を言われ、欲しい魔具があるようなら便宜を図ってくれるとのこと。


 ヘンソンには今のところ欲しいものはなかったので今後ジムサンド商会と取引をできるようにお願いしておいた。


 ハリソンに良い土産できたと喜ぶヘンソンだったが、帰りの道で先程の少女の正体を思い出す。




 魔法使いの姿をしていた少女の名はリリィ。


 『F•M•W』のメインヒロインの1人で後に紫電の魔女と呼ばれる実力者だ。


 先程は普通の魔法使いの服装をしていて、特徴的な紫の衣装を着ていなかったから気付かなかった。


 しかし思い返すとリリィの特徴である紫の髪をしていたし、紫の魔具を欲しがっていた。


 その時点で気付くべきだったのだがもう遅い。



 先程のやりとりでリリィはヘンソンのことを気に入ったようで、ヘンソンが店を構えるなら来店すると言っていた。


 マリア程ではないにしろリリィにも認知されたのは正直痛い。


 しかし王都を出る予定のヘンソンは店を構えるつもりはないので、リリィがヘンソンの前にやってくることはない。


 それなら何の問題もない。


 前向きに考えることにしたヘンソンなのであった。






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