第60話 ヘンソン・ジムサンドは生き残りたい
学園の大講堂。
壇上には1人の女生徒が新入生代表の挨拶をしている。
彼女はこの王国の王女、プレイヤーからは姫様と呼ばれていた。シノブが使える主である。
ヘンソンは新入生の1人としてその様子を眺めていた。
入学式が終わるとそれぞれのクラスに向かう。
クラスは校舎ごとに分けられており、ヘンソンはその中でも1番立派な建物に入る。
「おはようヘンソン君」
「おはようビビ」
教室に入ると先にいたビビがやってくる。
それを皮切りに次々と見知った顔がやってくる。
ミーナ、マリア、リリィ、エリカ、フィーナ、エミリー、アクア、トモエ、フェリスとヘンソンが今まで出会ったヒロインたちが大集合だ。
シノブはその様子を遠巻きに見ている姫様の側にいた。
このクラスは最上位クラスで新入生の中でも優秀な生徒が集まっている。
そんな中いきなり目立つこととなったヘンソン。
そもそもこのクラスに自分がいるのが不思議でならないヘンソンは居心地が悪い。
他の生徒に絡まれないか内心ビクビクしていた。
しかしそんなヘンソンの心配は杞憂だった。
むしろ周囲の生徒たちの方こそヘンソンにビビっていた。
ヘンソン本人は自覚がないが、現在のヘンソンの名前は王国内外問わず広まっていた。
これまでの旅でのやらかしは尾ひれをつけ大きくなっていて、時に商人でありながらクラーケンやグリフォンを倒す豪傑であり、また時に美少女を見るとすぐさま口説きにかかる優男と語られていた。
ちなみに兄のハリソンやニールソンはこの噂の事を知っているが面白そうだからとヘンソンには黙っていた。
そんなこととなっているとは露知らず一通りの挨拶を終えたヘンソンはユウキを見つけると、
「こんにちは初めまして、僕はヘンソン・ジムサンド。よろしくね」
ヘンソンは早速ユウキに声をかける。
「私はユウキ、よろしくね。早速ナンパされちゃったね、私も美少女ってことかぁ〜」
「ナンパ?」
ユウキの言葉に?を浮かべるヘンソン。
「とにかく困ったことがあったら僕に何でも相談して。アイテムでもスキルのことでもどんとこいだから」
自信満々に胸を叩くヘンソン。
「うん、わかったよ」
少し気になる点はあったが何とかユウキとの接触は好印象に済んだ。
「…やっぱりあの噂って本当なのかな?」
「ヘンソンさんのことですから他意はないと思います」
ビビとミーナが離れた場所でヒソヒソと話す。
どうやら彼女たちはヘンソンの噂の事を知っているようだ。
そんなことを知らずヘンソンはユウキとの接触に成功し満足していた。
ヘンソンはもうただのNPCのモブ商人ではない。
この世界に存在する1人の人間、ヘンソン・ジムサンドとしての個を確立したのだ。
この先何があろうとも彼ならばきっと生き残ることができるだろう。




