第58話 モブ商人は振り出しに戻る
「?…ここは?」
オウリュウにより何処かに転移させられたヘンソン。
周囲を見渡すと見慣れた光景が広がっていた。
「僕の部屋だよな?」
ヘンソンがいたのは王都にある自室だった。
どうやらオウリュウはヘンソンをヒノモトから王国に転移させたようだ。
何がなんだかわからない。
混乱していると、
「あっ、マルコ。君も無事だったんだね」
ヘンソンの足をマルコがつつく。マルコも一緒に転移させられたようだ。
「まずは状況を確認しないと」
ヘンソンは自分の身に起こったことを確認すべく自室を出た。
「おうヘンソン。準備は終わったのか?」
部屋を出ると兄ハリソンと出くわす。
「ハリソン兄さん、準備って何?」
「おいおいヘンソン寝ぼけてるのか?明日の学園の入学式に決まっているだろ」
「入学式?」
ヘンソンは混乱する。
オウリュウの転移によりおそらく王国に戻されたことは理解した。
しかしそれ以外のことは何一つわかっていない。
「ハリソン兄さん、今って何日?」
「おいおい、本当に大丈夫か?今日は…」
ハリソンの話によると明日はヘンソンの学園の入学式だという。
日付を確認すると確かにヘンソンは15歳を迎えていた。
ヒノモトにいた時点ではまだ1年近く猶予があったはずなのに何故?
「!もしかして」
ヘンソンはマジックバックの中身を確認する。
「やっぱり…」
とあるアイテムが消失していた。
そのアイテムとは玉手箱。
アトランティスにてトリトンからもらった曰く付きのアイテムだ。
玉手箱の効果は簡単に説明すると時間操作ができるというもの。
チートな効果だがその操作は極めて繊細で、使い方を知っているヘンソンですか使用するのをためらう程難しかった。
しかし神にも等しい存在であるオウリュウならば、この『玉手箱』も容易に使用できるはずだ。
時間操作してまでヘンソンを王国に戻したのには理由があるのだろう。
オウリュウの言っていたヘンソンの役目について何となくわかってきた。
その後ハリソンからの話でヘンソンたちは無事ヒノモトに到着し、数日滞在したのちまた王国に帰ってきたとわかる。
ヘンソンにはその記憶がなかったが、ハリソンの話を聞く内に徐々にそんなことがあったと思い出してきた。
おそらく『玉手箱』の効果による記憶操作が働いたのだろう。
ちなみにビビやミーナたちも王都に戻ってきており、おそらくオウリュウにより転移させられたに違いない。
『玉手箱』にはそのような効果はないのでおそらくオウリュウによるものだろう。
そこまでの力を持つオウリュウがわざわざヘンソンたちを王都に戻したのだ。
きっと今から逃げ出しても無駄だろう。
運命力のようなものが働いているとヘンソンは感じた。
どうやってもストーリーから逃げられないようだ。
ヘンソンは覚悟を決めることにした。




