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モブ商人は生き残りたい  作者: わたがし名人


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第56話 モブ商人は裏ボスに遭遇する



 ヘンソンの後ろ姿を見つめる人影。


「やっほ、君がヘンソン君だよね?」


 その人影はヘンソンに声をかける。


「あ、貴方は…」


 ヘンソンの額に汗が流れる。


 ヘンソンの前に突如現れた謎の白い髪の女性。


 こんなところに彼女がいるはずがない。


 何故なら彼女は、


「おやおや、わっちのことも知っているんだね」


「ええ、まさかこんなところで出会えるとは思っていませんでしたが…」



 彼女の名はイブキ。ヒノモトのとある隠しイベントで現れるボスで、最強の裏ボスとしてプレイヤーたちから恐れられていた。


「そうだねぇ、『あの御方』から直々に頼まれたら流石のわっちも断れないよねぇ~」


 額に伸びる角を撫でながら答えるイブキ。



 どうやらイブキは誰かに依頼されてわざわざヘンソンに会いに来たという。


 ゲーム時代、イブキはトップ3に入るほどの難易度を誇るボスだった。


 そんなイブキに命令出来るほどの人物。


 ヘンソンの思っている通りの人物であるなら抵抗は無意味だろう。


 そもそも今の状況を切り抜けることも難しい。


 仮にここにミーナやシノブがいたとしても今のヘンソンたちではイブキに太刀打ちできない程に実力差は開いているのだ。


 それに今はミーナたちに助けを呼ぶこともできない。


 今ヘンソンたちは周囲に認識されていない。おそらくイブキが何らかの認識阻害のスキルを使用しているのだろう。





 とにかく今イブキと敵対するのはまずい。


「あのイブキ様、僕はどうすればよろしいでしょうか?」


 なるべく刺激しないように穏便に話を進めようとするヘンソン。


「ああ、そんなにかしこまらなくてもいいよぉ~。でもちゃんと相手を敬うことができるのはポイント高いねぇ~。お姉さん褒めてあげちゃう」


「あ、ありがとうございます」


「はい、素直でよろしい。うん。ヘンソン君、君中々良い子だねぇ~。お姉さん気に入ったよ」


 どうやらヘンソンはイブキに気に入られたようだ。ひとまず身の危険の回避には成功した。


「ああ、それでここに来た理由だったねぇ~。うん、それじゃあ移動しよっか」


 そういうとイブキは転移陣を足元に展開させる。


「え?」


「そこのブタちゃん、君のペットだよね。じゃあ一緒でいいか」



 周囲に気付かれることなくヘンソンたちの姿はその場から消えた。





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