第52話 モブ商人はエビスの領主に会う
エビスの街にあるひと際大きな屋敷。
そこはトモエの家であり、エビスの領主であるトモエの父が待つ場所でもあった。
屋敷の前にある大きな門をくぐると、
「待っていたぞお客人」
ボサボサ頭のラフな作務衣姿の男性がヘンソンたちを出迎える。
「父上!来客がある時は着替えるようにといつも申しているではないですか!」
「はは、すまぬすまぬ」
思っていたのと違う感じで拍子抜けしてしまうヘンソンたち。
「では拙者は着替えてくるので、トモエは皆様を中に案内して差し上げなさい」
そういうとエビスの領主は奥へと戻って行った。
「…すまないが今のは忘れてもらえると助かる」
「トモエ、いい加減慣れた方がいいですよ。お館様のだらしない性格は直ることはありません」
「トモエさん、僕たちは気にしていませんので大丈夫ですよ」
「…恩に着る」
トモエの案内で屋敷の中へ入って行くヘンソンたち。
応接間と思われる広い部屋へ案内される。
「いやはや先程は失礼した」
少しして着替えを済ませた領主が現れる。
髪は整えられ着物と羽織を着こなしている。
その姿は、先程のだらしないおじさんと同一人物とは思えないほどの変わりようだった。
「そなたたちについては人伝にて聞いておるが、改めてここヒノモトに来た理由を問おう」
エビスの領主にヒノモトに来た目的を問われるヘンソン。
『はい、数年後に王国で大事件が起こるのでそれに巻き込まれないためにここに来ました』
などとは言えないので当初から用意していた理由を答える。
「昔、ヒノモトについて書かれた本を拝見し、この地への憧れからここまでやって来ました。あと、父から商会の支店を出すための現地調査を頼まれています」
ヒノモトに来たかったのは本当なので嘘は言っていない。
やはり元日本人であるヘンソンにとってヒノモトの文化は特別で、長く過ごすなら慣れ親しんだものがある場所がいい。
あとついでに父サムソンから依頼されている仕事も忘れずに伝えておく。
「あいわかった。そこまでこの国のことを承知しているならば書状も用意しているのであろうな?」
「はいもちろんです」
ヘンソンは書状の束を出す。
「こちらになります。お収め下さい」
「…1枚あれば十分なのだが。うむ、確認するゆえしばし待たれよ。トモエ、街を案内してあげなさい」
「承知しました」
どうやら書状の確認に時間を要するらしい。
ヘンソンたちはトモエの案内の元、エビスの街を観光することになった。




