第47話 モブ商人は曰く付きのお礼を貰う
「という訳でアトランティスと正式に取引することになりました」
トリトンとの商談を終えたヘンソンは広間に戻るとアトランティスと正式に取引することになったのを皆に報告する。
「到着して早々ですが、明日から忙しくなるので皆よろしくお願いします」
翌日。
ヘンソンは改めて商談の内容をまとめるためにトリトンらアトランティスの上層部との話し合いに出かけていった。
ビビはアトランティスに納品するアイテム作成、ミーナとシノブはその手伝いと忙しなく動いていた。
唯一仕事のないマルコはアトランティスの街を散歩していた。
何故かトリトンとアクアから害はないとお墨付きを得ているので、忙しくしているヘンソンたちを余所にマルコは悠々と自由を謳歌していた。
そして相変わらず、
「あっ、豚さんいた!」
「地上にはこんな可愛らしい動物がいるのね」
アトランティスの女性や子供たちに人気のマルコだった。
そんなこんなでアトランティスに来てから数日経過する。
「うーむ、急かしたつもりはないのだが…」
「国王様、仕事を後回しにしないのが僕の信条なので気にしないでください」
ヘンソンはトリトンに仕事完了の報告をしていた。場所は以前トリトンと話をした王宮の部屋だ。
ヘンソンたちはあれからわずか数日でアトランティスに依頼された仕事を全て完了させていた。
アトランティスから特に期限は設けられていなかったにも関わらず、ヘンソンたちは積極的に仕事をこなしていた。
「うむ、若いのに立派な心掛けだ」
「恐縮です」
実は仕事のためにアトランティスに何度も来ることになるのは面倒だと思って早く仕事を終わらせたというのは内緒だ。
「よし、決めたぞ!」
トリトンが立ち上がる。
「追加でアレを渡すことにしよう」
そういうとトリトンは部屋から出ていく。
トリトンが部屋を出て少しすると、
「ヘンソン君、お待たせ♪」
現れたのはトリトンではなくアクアだった。
「あのアクアさん、国王様はどちらへ?」
「えーとね、おじいちゃんは大事なものを取りに行くから代わりにこれを渡してほしいって頼まれたの♪」
トリトンは何かを取りに行ったらしい。その代わりにアクアがやってきたとのこと。
「それじゃあ早速ヘンソン君にはこれをあげましょう♪」
アクアが取り出したのは数枚のカードのようなもの。
「これはね、水魔法が使えるようになるスキルカードだよっ♪」
スキルカード。文字通り使用することでそのスキルを得ることができるアイテムだ。
その希少性から高値で取引されるアイテムだが、アトランティスではとある理由により比較的容易に手に入る。
そのことを知っているヘンソンは特に驚くことはなかった。
「予想通りですね」
「あれっ、その反応もしかしてヘンソン君『コレ』がどこで手に入るのか知ってる感じ?」
「ええ、噂で聞いたことがあります」
アクアが持ってきたスキルカードはあの巨大なサンゴから時折入手できるものだ。
「ふ~ん、残念。びっくりすると思ったのに」
しかしスキルカードの種類は水魔法のみで、人魚であるアトランティスの国民全員は元々水魔法を所持しているので使われることなく倉庫の肥やしとなっている。
なのでこうして時折、外部の者たちへの報酬として放出されている。
「いえアクアさん、とてもうれしいですよ。魔法スキルは覚えるのが難しいですからね」
ヘンソンは素直にお礼を言う。どうやらこのスキルカードは売らずに使用するつもりのようだ。
「それならよかった♪」
ホッとするアクア。
「ヘンソン君待たせたな」
トリトンが部屋にやってくる。
「おじいちゃん、プレゼントヘンソン君喜んでくれたよ」
「おお、それはよかった。では改めて追加の報酬を渡そう」
トリトンが机に置いたのは黒い小箱。一見ただの小箱に見えるが、
「『玉手箱』ですか…」
「これを知っているか。…ヘンソン君、やはり君は只者ではないようだな」
トリトンがわざわざ取りに向かったので予想はしていたが、『コレ』を貰うことになるとは。
「そう重く考える必要はない。お守りだと思って持っておくといい」
「はい、そうします」
できれば『コレ』を使う機会が訪れないことを祈ろう。
こうしてヘンソンはアトランティスからの仕事を終え報酬も無事受け取った。
仕事から解放されたビビたちはアトランティスの街を満喫していた。
それから数日。
アトランティスを出発する日を迎える。




