第46話 モブ商人は人魚の国にアイドル文化を広めたい
ヘンソンとトリトンは広間から別室へ移動する。
到着したのは会談などで使用する部屋だ。
「では改めまして僕が着ているこの服についてご説明させていただきます」
「うむ、頼む」
「これは元々アクアさんたちのような歌姫を応援する者たちが着る正装として作られたものだと聞いています」
「ほう、そのようなものが存在していたとは」
ある意味ドルオタのライブ観戦における正装ともいえる装備なのであながち間違ってはいないはず。
「もちろんこれを着ていなくても問題はありません」
「そうなのか」
「しかしあえて言わせてもらいますと、これを着てライブに参加すると気分がぶち上がります」
ヘンソンはこの僅かな時間でトリトンにドルオタの資質を見出していた。
そしてトリトンに上手くアイドル文化についてアピールして、アトランティスにアイドル文化を広められないかと画策する。
ゲーム時代ではもちろんアトランティスはそんな要素はなかったが、この世界ではそんな風になってもいいではないか。
それに勧めるのにはヘンソンのただの趣味だけではなく、ちゃんとした理由もある。 ここで実用性があることもしっかりアピールしておく。
「そしてこの衣装にはとある効果が付与されております」
ヘンソンは説明を続ける。
「国王様はアクアさんたちが現在使用している衣装やアイテムの効果については既にご存知かと思います」
「うむ、あれらは使用者のスキルの効果を高めるものだと聞いている」
「実は今僕が着ているこの衣装にも似たような効果があります」
「なんと!それはまことか!?」
ヘンソンは自身が着ているライブ鑑賞フル装備にもアイドル衣装と似たような効果があることを説明する。
「ですが効果を発動させるにはとある条件があります」
「…アクアたちの歌スキルか」
「はいそうです」
ヘンソンは『トップオタ』の効果を説明する。
「ふむ、クラーケンを倒せたのはあの騎獣の力だけではなかったという訳か」
ヘンソンは歌スキルと『トップオタ』のシナジーについて力説する。
アクアたちの持つ歌スキルとその恩恵を受けるドルオタ装備。この2つはアトランティスにとって相性が非常に良い。
上手く使いこなせればアトランティスにとって大幅な戦力強化に繋がるだろう。
「ヘンソン君、君は我々に何を望む?」
「僕はただアイドル文化をアトランティスに広めたいだけです。しいて言えばアクアさんたちのようなアイドルがもっと増えればいいなというのが望みですかね」
トリトンの問いかけにヘンソンはそんな風に答える。
「ふむ、彼女が話していたのはこういうことか…」
トリトンは1人納得したように呟く。
「国王様、実は販売用の商品が用意してあるのですが…」
「そういえば君は商人だったな。詳しい話を聞こうじゃないか」
こうしてヘンソンはトリトンと商談を行なうのだった。




