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モブ商人は生き残りたい  作者: わたがし名人


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第32話 モブ商人は空の旅を楽しむ



「皆さん、お世話になりました」


「うむ、帰りにまた立ち寄るといい」


「むぅ、わたくしも一緒に行きたかったですわ」


「お姉様、わがままを言ってはいけませんよ」


「…わかっていますですわ」


 レオンハート公爵、エリカ、エミリーに見送られヘンソンたちは出発する。




 ヘンソンとマルコの特訓から数日。


 ヘンソンが手に入れたスキル『銭投げ』はある程度納得のいく形になり、諸々の準備も済んだので出発することにした。


 レオンハート領には滞在して1週間ほどしか経っていないが、色々あってとても密度の濃い時間を過ごした。


 次の滞在場所ではもう少し落ち着いて過ごしたいとヘンソンは思った。



「エリカ、しばらくお世話になるわね」


「ええ、よろしくですわリリィ」


 リリィはレオンハート領にしばらく残るようだ。


 どうやらエリカと意気投合したようで、このあと一緒に周辺のモンスター狩りに出かけるらしい。きっとこの辺りのモンスターたちは全滅することになるだろう。

 張り切る2人を見てヘンソンはそんなことを思った。





「それじゃあ、いってきます。マルコお願い」


 マルコの足元が炎に包まれる。マルコは地面を蹴り駆け出す。だんだん速度を上げるマルコの体は宙に浮き、マルコは空を駆ける。


 そしてマルコに繋がれた小型の船も一緒に空へ飛び立つ。



 マルコが空を飛べるようになりヘンソンは新たな移動手段を得た。


 魔導船。空を飛ぶことができる船で、マルコが引く小型の船は魔導船だ。


 しかし今のヘンソンたちでは魔導船を浮かべることしかできず、単体を動かすことができない。

 だがマルコが空を飛べるようになり船を引いてもらうことでその問題は解決した。



 魔導船は元々使う予定で王都で準備していたものだ。使うのはまだ先になるかと思っていたが、マルコのおかげで早い段階で動かすことができた。



 この世界ではまだ魔導船は実用化されていない。ヘンソンの魔導船も浮くことはできても移動ができない未完成品だ。


 理由は単純に出力不足で今のヘンソンたちでは用意ができなかった。


 しかし元々それは織り込み済みだった。ヘンソンは魔導船をマルコのように外部から動かす運用を想定していたからだ。


 ヘンソンの予定ではこの先にいる人物に協力してもらい魔導船を動かすつもりだったが、マルコのおかげでその必要はなくなった。




「うわぁ、ヘンソン君見て地面があんなに遠いよ」


「なんだかむずむずして落ち着かないですね」


「…これは姫様には秘密にしておきましょう」


 ヘンソンたちはしばし空の旅を楽しむ。



「北の方角からモンスターが来ます。ビビ、お願い」


 しばらく進むとヘンソンがモンスターを感知する。


「うん任せてヘンソン君」


 ビビは銃のようなものを取り出すと、モンスターのいる方角に弾を向けて放つ。


 ビビの放った弾は遠くにいるモンスターに命中し、モンスターは落下する。


 ビビが使用した銃は錬金スキルの派生スキルの1つで攻撃スキルに分類される。


 ビビだけでなくミーナ、シノブも遠距離攻撃を所持しており空のモンスターが来ても問題なく対応できる。



 グリフォンとの遭遇時に3人の誰かがいれば危険な目に遭うことはなかった。改めてヘンソンは心の中で反省した。




 レオンハート領で充分な補充を済ませたので今回は街に立ち寄ることはしない。


 それに魔導船を使用しているので、できるだけ人目に触れるのは避けたい。



「マルコ。この辺りで降りようか」


 流石に空で夜を明かすことはせず、地上で休む。もちろん使うのはカプシェルター。


 次の目的地まではこれを繰り返す予定だ。



 本来の次の目的地は大森林だったが、先の件を踏まえて行くのやめその先にある街を目指す。


 大森林に行く目的は魔導船を動かすのに必要な人物に協力してもらうためだったが、その役目はマルコいるから大丈夫になった。


 それに大森林にはメインヒロインがいる。ヘンソンも流石にトラブルに巻き込まれるのには懲り懲りなので軽率な行動は控えることに決めたのだった。




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