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モブ商人は生き残りたい  作者: わたがし名人


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第27話 モブ商人は令嬢騎士を鍛える



 翌日。


「ヘンソンさん、今日はよろしくお願いいたします、ですわ!」


 昨日の訓練場に再びやってきたヘンソンたち。


 ヘンソンがエリカに教えるのはいつもの訓練方法だ。しかしこの方法は少し待てば王都からレオンハート領まで伝わるだろうからヘンソンがわざわざ教える必要はない。

 でもそういうことではないのだ。


 エリカはあくまでヘンソンに指導してほしいのだ。流石にいくら鈍いヘンソンでもそれくらいのことはわかっていた。



「ふふ、中々楽しいですわね。これは癖になりそうですわ!」


 エリカは早速楽しそうにスライムを叩いていく。どうやらこのスライム叩きがお気に召したようだ。


 撲殺令嬢と呼ばれるだけあってエリカはモンスターを叩くことが大好きらしい。




 しばらくスライム叩きをしていたエリカ。ヘンソンが鑑定するとメイスのスキルレベルは問題なく上がっていた。



「こんなに楽しくスキルレベルが上がるだなんて。ヘンソンさん、ありがとうございます、ですわ!」


 嬉しそうにヘンソンにお礼を述べるエリカ。そんな楽しそうなエリカを見てヘンソンのスパルタモードのスイッチが入る。


「エリカさん、せっかくなのでこのまま派生スキルも習得してしまいましょう!」



 派生スキルとは職業系スキルを所持した上で条件を満たすと習得できるスキルのことをいう。


 ヘンソンの周りではビビの錬金スキル、シノブの忍スキル、エリカの騎士スキルが職業系スキルにあたる。


 錬金スキルなら錬金術に関する派生スキルが習得できるし、忍スキルなら忍術、忍法といった忍者に関する派生スキルが習得できる。


 ちなみにヘンソンの鑑定スキルは職業スキルではないため派生スキルは発生しない。



 派生スキルの習得条件については職業系スキルとの関連性から比較的推測がしやすいため習得方法が発見されているものもある。


 しかし前提条件として職業系スキルを習得していなければ派生スキルを習得することができない。

 そして職業系スキル自体がそもそも貴重なスキルのため、派生スキルを習得している者はごくわずかだった。



 ちなみにエリカの持つ騎士スキルの場合だが、騎士スキルの所持者は職業系スキルの中でもメジャーな存在のため、派生スキルの習得方法はいくつか見つかっているが、それは確実な方法とはいえるものではなかった。



 だがヘンソンがこれから教える派生スキルの習得方法はゲーム時代に使用した効率の良い方法で、多くの派生スキルを同時にかつ確実に習得できる方法だった。



「先程のスライムも良かったですが、こちらも中々悪くありませんですわ!」


 現在エリカは大量の藁人形のようなものに囲まれながらも嬉しそうにメイスを振るっていた。藁人形たちは次々と吹っ飛ばされていく。



 エリカに殴り飛ばされている大量の藁人形たちは『ウシミツ君』と呼ばれるアイテムで100㎝ほどの大きさをしている。

 

 元々は『身代わり人形(藁)』という手のひらサイズのアイテムだが、建築素材の釘

を付与することで『ウシミツ君』と呼ばれるアイテムに変化する。


 『ウシミツ君』は指定した対象に襲い掛かる効果を持ち、主に戦闘中のデコイ役として使用されることが多い。


 ヘンソンは大量の『ウシミツ君』の対象者にエリカを選び使用していた。



 これなら無害なスライムを叩いていた方がいいのではと思われるが、わざわざ別の方法を選ぶのは理由がある。


 『ウシミツ君』は呪い属性を持っており、倒すことで聖属性の派生スキルの習得条件を満たすことができるのだ。


 聖属性スキルはマリアの持つ回復系スキルが有名だが、攻撃スキルももちろん存在する。


 ちなみに聖属性スキルの習得方法はこの世界ではまだ見つかっておらずヘンソンはまたやらかしたことになるのだが、後日レオンハート公爵に全て押し付けることで難を逃れた。




「やりましたわヘンソンさん!これでわたくしも聖・騎・士、の仲間入りですわ!」


 全ての『ウシミツ君』を倒したエリカは聖属性スキルをはじめとしたいくつかの派生スキルを無事習得することができた。


 そんな様子のエリカに満足そうにうなずくヘンソン。


「エリカさん凄い…」


「あのヘンソンさんの指導についていける方がいるだなんて」


「私めも驚きです。流石はエリカ様です」


 一方、ヘンソン式ブートキャンプ経験者の3人はエリカがピンピンしていることに驚いていた。



「あーはっはっは、ですわ!」


 エリカの高笑いが訓練場に響いた。





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