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モブ商人は生き残りたい  作者: わたがし名人


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第26話 モブ商人は模擬戦を見学する



「という訳で、しばらくレオンハート領に滞在することに決まりました」


 ヘンソンとエミリーはビビたちがいる部屋へ戻る。そしてしばらくレオンハート領に滞在することを報告した。


「お父様、グッジョブですわ!」


 エリカがヘンソンたちが滞在することに喜び、思わずガッツポーズをする。


「はしたないですよ、お姉様。でもうれしいのはわたしも同じです」


 エミリーもエリカ同様、ヘンソンたちがここに留まることを喜んでいた。



「こんな立派なお屋敷に泊まれるなんて…、緊張しちゃう」


「ビビ様、普段通りにお過ごしされていれば良いのです。その内気にならなくなります」


「そうですわ、自分の家だと思ってゆるりとお過ごしくださいですわ!」


 緊張しているビビをシノブとエリカがフォローする。


「周囲に気を配らず休めるのはありがたいですね。あっ、護衛として失格ですね今の言葉…」


「いえそんなことはありません。ミーナさん、今まですみませんでした。これを機に今後の旅について一度話し合いをしましょう」


 ミーナに負担をかけていたことを謝罪するヘンソン。


「そうですね。このパーティのリーダーはヘンソンさんですが、全て任せきりは良くないですよね。全員で話すのは大事ですね」


「ヘンソン君、私も役に立てるかわからないけど話し合いに参加するね」


「あの、私めも参加してよろしいでしょうか?」


「もちろんですよシノブさん。むしろこちらからアドバイスをもらいたいと思っていたところですよ」


「わかりました。皆様のお力になれるよう私め、全力で参加させていただきます」


 今後の旅に備え、ヘンソンたちは一度皆で話し合いをすることに決めた。




「…楽しそうでいいなぁ」


 そんなヘンソンたちの様子をうらやましそうに見るエミリー。



「…、あの!わたくしと模擬戦をしていただけませんか、ですわ!」


 エリカが突然立ち上がると、ヘンソンたちに模擬戦を申し込む。


「模擬戦、ですか」


「わたくし、ミーナさんとシノブさんと戦ってみたいのですわ!」


 エリカは強者を好む。ならばミーナとシノブに反応しない訳がない。


「ミーナさん、シノブさん。どうしますか?」


「自分は問題ありません」


「私めもちょうど腕試しをしたいと思っておりましたので、お受けいたします」


 ミーナとシノブは承諾する。ヘンソンはエリカの興味が自分に向かなくてホッとしていた。




 ヘンソンたちはレオンハートの騎士たちが普段訓練に使う訓練場に移動していた。


「人払いは済ませてありますので思いっきり暴れても問題ありませんですわ!」


 訓練場には闘技場のような客席があり、対戦する2人以外は客席に座っている。


「ミーナさん準備はよろしくて?ですわ!」


「はい、いつでもいけます」


 まずはミーナとエリカが模擬戦をする。


 ミーナは2本の短剣、エリカは巨大なメイスを構える。


「いきます、ですわ!」


 先に動いたのはエリカ。ミーナに向かって一直線で駆けていくと、


「はぁっ!」


 エリカは巨大なメイスを軽々とミーナに振りおろす。


 ドカンと地面を豪快に叩く音が訓練場に響く。


 地面に大きな穴が空いているが、そこにミーナの姿はない。


「次は自分の番です」


 エリカの攻撃を交わし後方に距離をとったミーナ。2本の短剣を構えると、


「『カマイタチ』」


 スキルを発動させたミーナの短剣から2つの風の刃が現れエリカに向かう。


「この程度でやられません、ですわ!」


 エリカはメイスで風の刃を薙ぎ払う。


「そこです!『縮地』」


 ミーナは別のスキルを発動させると一瞬でエリカの背後をとる。


「…参りました、ですわ」


 首元に短剣を突きつけられたエリカは降参する。





 休憩をしばし挟み、続いてシノブとエリカの模擬戦が始まる。


「シノブさん、先手はお譲りいたします、ですわ」


「ではお言葉に甘えて、『転身』」


 シノブの姿がメイド服から忍装束へと変わる。


「更に『影分身』」


 5人のシノブがズラリと並ぶ。


「「「「「参ります」」」」」


 5人のシノブが一斉にエリカへと向かう。


「忍者ですわ!凄いですわ!」


 大興奮のエリカ。


「でも、蹴散らします、ですわ!」


 メイスを構えると、


「『騎士の守り』」


 スキルを発動させる。


「悪くない選択です。ですがそれは悪手です」


 エリカが使用したスキルは防御スキルでその場から動くことができない。


「『火遁の術』」「『土遁の術』」「『風遁の術』」「『雷遁の術』」


 エリカの四方を囲った4人のシノブから放たれたそれぞれのスキルがエリカを襲う。


「くっ、まだですわ」


 攻撃を何とか耐え凌ぐエリカ。


「流石ですエリカ様。ですがこれで終わりです。『影縛り』」


 最後の1人のシノブがエリカの影から現れると、エリカの全身が黒い影で縛られる。


「…降参ですわ」


 影を振りほどこうと抵抗を試みたエリカだったが、諦めて降参した。




「おふたりとも強すぎですわ!」


 模擬戦を終え着替えたエリカたちが戻ってくる。


「すみません、少し大人気なかったかもしれません」


「いえミーナさん、手加減する方がエリカさんにとっては失礼にあたりますので、全力で叩きのめすのが正解です」


「そうですわ!わたくし、おふたりに叩きのめされてスッキリしてますのですわ!」


 ボコボコにされたのに満足そうなエリカ。


「と・こ・ろ・で、ヘンソンさん」


「はい何でしょうか?」


 なんだか嫌な予感がする。


「おふたりを鍛えたのはヘンソンさんと聞きましたのですわ!」


「僕は少し助言をしただけですよ。強くなれたのはおふたりの努力のたまものです」


「そ・れ・で・も、わたくしはヘンソンさんのご指導を受けてみたいのですわ!」


「…わかりました。滞在している間でよければお受けしましょう」


「よろしくお願いしますですわ!」


 こうしてヘンソンさんはレオンハート領に滞在の間だけエリカの指導をすることになった。




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