第25話 モブ商人は公爵家から歓迎される
レオンハート領に到着したヘンソンたち。
領地内には入ったがまだ近くに街は見えず、検問所があるだけだ。
ヘンソンたちはエリカと同行しているので検問所をそのまま通過する。
「ご覧くださいまし、あれが我が領自慢の城塞都市ですわ!」
エリカが示す先には大きな壁で囲まれた都市が見える。
レオンハート領が誇る城塞都市、イージス。
ゲーム時代においてもその守りは鉄壁で突破されることなく外敵から王都を守り、その名に恥じない活躍をしていた。
城門の前まで来ると城壁の大きさ、強固さを改めて感じることができる。
城門をくぐると、
「ご苦労エリカ。皆さん、ようこそ我がレオンハート領へ」
エリカの父、レオンハート公爵がヘンソンたちを出迎えてくれた。
レオンハート公爵は自ら前線に出るだけあり、鍛え上げられた肉体に着ているスーツはパツパツで悲鳴を上げている。貴族というよりは軍隊の司令官といった方が良いのかもしれない。
実際ゲーム時代も前線で指揮をとり、自らも戦闘に参加し大活躍していたとテキストに書かれていた。
レオンハート公爵はかつてバンバとパーティを組んでいたことからその強さは当然なのかもしれない。
ヘンソンたちはレオンハート公爵直々に公爵邸に案内される。
公爵邸に入ると、
「ヘンソン君、ちょっと来てくれるかな」
ヘンソンだけレオンハート公爵に連れられ別室へ移動する。
「君の噂はかねがね聞いているよ。それよりもまずは私からもお礼を言っておこう。ヘンソン・ジムサンド。我が家の所有する馬を助けて頂き感謝する」
レオンハート公爵が頭を下げる。
「頭をお上げくださいレオンハート公爵。私は自分にできることをしたまでです」
「それでもあの場で解決できたのは君だけだったと聞く。それにそのおかげで別の問題も解決できた」
「別の問題?」
「いや、こちらの話だ。君は気にしなくていい。とにかく君には感謝しているのだよ、ヘンソン君」
「レオンハート公爵にそう言っていただけて、こちらこそ光栄です」
何か気になることを言っていたが、ヘンソンはレオンハート公爵のお礼を素直に受け取ることにした。
コンコン
部屋の扉がノックされる。
「お父様、エミリーです」
「エミリーか、入りなさい」
「失礼いたします」
エミリーが部屋に入って来る。
エミリーはレオンハート公爵の隣に座る。
「ヘンソンさん、この度はわたしのキャメルをお救いいただきありがとうございます」
エミリーはヘンソンにお礼を言う。
「レオンハート公爵にも先程申し上げましたが、当然のことをしたまでです」
「いえ、そんなことはありません。じいやから聞きました。ヘンソンさんは凄い方だと」
こんこんとヘンソンの凄さについて話すエミリー。
エミリーの話すヘンソン像は自分とはかけ離れた存在のように聞こえる。
じいやことあの老人は一体どんなことを吹き込んだのだろうか。
「そういえばエリカから聞いたが、君の騎獣はヴァイスと対等に渡り合ったそうじゃないか。そのような騎獣を手懐けるとは流石はバンバが見込んだ男だ」
「はは…、ありがとうございます」
レオンハート公爵に褒められるが、凄いのはマルコでヘンソンではない。
「ヘンソンさん、わたしもあとでマルコさんにお会いしてもよろしいでしょうか?」
「はい、構いませんよ」
エミリーにあとでマルコを見せる約束をする。マルコは基本的に大人しいので問題ないだろう。
そういえばヘンソンはマルコが戦うところをまだ一度も見ていない。バンバからは強いモンスターと聞いているが、普段の様子を見ているとそのような気配はまるで感じられない。
唯一感情的になったのはヴァイスに対抗心を燃やした時位だ。
おそらくミーナとシノブがいる限りはマルコが戦うことはないだろう。
それにもしマルコが戦闘に参加する事態になるということはヘンソンたちがピンチに陥っている状況のはずなので、そんな機会は訪れないことを祈る。
「ところで君たちは『ヒノモト』を目指していると聞くが、そう急ぐ旅ではないのだろう?しばらくここでゆっくり過ごすといい」
「お言葉に甘え、しばらくお世話になります」
ヘンソンの目的は『ヒノモト』に向かうことだが、本来の目的である王都から離れることは達成できているので、レオンハート公爵の提案を受けることにした。
ヘンソンはレオンハート公爵は信頼に値する人物だと話をして感じた。それにバンバの知り合いというのを大きい。
それと安全な場所を確保できるのは正直有り難い。今後このような機会がどれだけあるかわからないのでレオンハート公爵の好意に甘えることにした。
「本当ですか!皆さまの王都や旅のお話しをぜひお聞かせください」
「エミリー、あまり迷惑をかけないようにな」
こうしてヘンソンたちはしばらくレオンハート領に滞在することになった。




