第23話 モブ商人は令嬢騎士に待ち伏せされる
ヘンソンたちが王都を出発してから1ヶ月。
途中、シノブのスキル上げなど寄り道もしたが順調なペースで進んでいた。
シノブが仲間になったことでモンスターが現れてもすぐに対処できるので時間をとられることがなくなったことも大きい。
スキルレベルの上がったシノブが嬉々として戦闘していたのが印象的だった。
まぁ元々この辺りのモンスターは強くないのでミーナ1人でも余裕なのだが、それでも戦闘できる人間が1人増えることの意味は大きかった。
「シノブさんのおかげで安心して戦闘に集中できます」
気づかない内にミーナに負担をかけていたようだった。今後は気をつけようとヘンソンは思った。
「シノブさん、この先からの管轄は国から変わるんですよね?」
「はい、この先からレオンハート領に入ります」
ヘンソンたちが今いる場所は国が管轄している領土で、主な管理は王都に常駐している貴族が交代して担当していた。
レオンハート公爵。王都の手前を守るように領土を構える大貴族で、公爵は王国騎士団を統括しており、自身も前線に出て戦うバリバリの武闘派貴族だ。
そしてその娘にはメインヒロインの1人がいる。
そんなレオンハート領にこれから入ることになるが、ヘンソンはそこまで危惧していなかった。なぜならそのメインヒロインは強い人物にしか興味を示さないからだ。
モブ商人であるヘンソンはお呼びでないのだ。
しばらく進んで行くと前方に鎧を着た集団が見えた。
「あの紋章はレオンハート卿のものですね。どなたかを待っているのでしょうか?」
「ヘンソンさん、どうしますか?」
「そうですね…、ここで悩んでも仕方ないですし、とりあえず進みましょうか」
レオンハート領に入るのはまだ先のはずだが、ヘンソンたちの向かう進行方向にはレオンハート領に属する騎士と思われる一団が待ち構えていた。
ヘンソンたちが近づいていくと、
「よ・う・や・く、いらっしゃいましたわね、ヘンソンさん!お待ちしておりましたわ!」
騎士団の中からドレスアーマーを身にまとった少女が現れる。
彼女の名はエリカ・レオンハート。メインヒロインの1人の令嬢騎士で、ドレスアーマー姿に金髪縦ロールでメイス装備の少女。通称、撲殺令嬢と呼ばれていた。
「貴方たち、歩きとはいえ王都を出発してここまで来るのに何故こんなに時間がかかるのですか?道草でもお食べになっていたのか、ですわ?」
「えと、はい、すみません」
会って早々エリカに怒られるヘンソン。
確かにシノブのスキル上げなどで途中寄り道をしていた。そのため普通に歩くよりもここまで来るのに少し時間がかかったのは確かだ。しかし怒られる理由がわからない。
というか何故エリカはここでヘンソンを待っていたのか?ヘンソンにはまるで心当たりがなかった。
「お久しぶりです、エリカ様。失礼ですがヘンソン様にどのようなご用がお有りなのでしょうか?」
シノブがエリカにここでヘンソンを待っていた理由を聞く。
「そうでしたわ!ヘンソンさん、妹の愛馬を助けていただきありがとうございました、ですわ!」
「馬?ああ、あの時の!」
ヘンソンは以前厩舎で助けた馬のことを思い出す。あの馬はどうやらエリカの妹の馬だったらしい。
「原因がわからなかった問題をヘンソンさんが見事解決したとじいやから聞きましたわ」
「いえいえ、たまたまですよ」
エリカの言うじいやとはおそらくあの時の老人のことだろう。それなりの立場の人だと思っていたが、まさかレオンハート家に仕える人だったとは。
「そ・れ・で・も、わたくしは自分でお礼が言いたかったのですわ!だからこうしてここでお待ちしていましたの」
エリカはヘンソンにお礼を言うためにわざわざここで待っていたらしい。
「エリカ様、ありがとうございます。お礼のお言葉確かに頂戴いたしました。ですので僕たちはこれにて失礼します」
ヘンソンはそそくさとこの場から立ち去ろうとする。
「ちょっとお待ちなさい、ですわ!」
エリカが待ったをかける。
「お礼はまだ済んでおりませんの」
「いえ、お言葉だけで十分です」
ヘンソンはなんとかやり過ごそうとする。
「そうはいきません、ですわ!すでに貴方たちを歓迎する準備はできています。まさかそれを断るつもりではありませんわよね?」
「いや、でも…」
「そ・れ・に、貴方たちの行き先は我がレオンハート領ですわよね?でしたらわたくしたちが同行しても問題ないですわよね?」
「は、はい…」
どうやら逃げることはできないようだ。ヘンソンは抵抗するのを諦めることにした。
「それでは皆さんレッツゴー、ですわ!」
こうしてヘンソンたちはエリカたちとともにレオンハート領に向かうことになった。




