第22話 モブ商人はメイド忍者を鍛える
ヘンソンたちが街に立ち寄ってから数日。一行はのんびりと歩を進める。
前の街で十分な補充をしており、しばらくは街に立ち寄る必要はない。
しばらく歩き続け日が傾きはじめると、
「そろそろ野営の準備をしましょうか。ビビ、お願い」
「うん、わかった」
ビビが『カプシェルター』の準備をする。
「…何度見ても驚きです。あの時これがあれば苦労することはなかったのに…」
過去に野営にまつわる何かがあったのか『カプシェルター』が現れると毎回シノブは悔しそうな表情をしていた。
現在『カプシェルター』はビビにより拡張されており、部屋数が4部屋に増えシノブを加えた全員に各部屋が割り当てられている。ちなみにマルコは相変わらずヘンソンと相部屋だ。
『カプシェルター』はカスタムできるタイプのアイテムで、錬金スキルを使えば様々な効果を開放することができた。
「ミーナさん、シノブさん。明日なんですが、この先にある森に立ち寄ってもいいですか?」
「自分は構いません」
「私めも問題ありません。てすがあの森には何もありませんよ」
「それがいいんです。人目に触れない無人の場所を探していたので」
「?」
ヘンソンの言葉に疑問を浮かべるシノブ。一方、
「ヘンソン君、アレやるつもりなんだ」
「ですね」
ビビとミーナはヘンソンのやることを察した様子。
「ヘンソン様、一体何をするおつもりでしょうか?」
「せっかくなのでシノブさんのスキル上げをお手伝いしようかと思いまして」
ヘンソンはシノブのスキル上げを提案する。
「ヘンソン様、貴重な時間を私めのために使うなんてもったいないです。それにスキルは簡単に上がるものではありません」
シノブはヘンソンがミーナに行なったことを知っているがあえて知らない振りをした。
わざわざ自分のために時間を割くことが申し訳ないというのもあるが、ヘンソンの持つスキル上げの情報をおいそれと知ってはいけないと判断したからだ。
「シノブさんが気にしていることは多分問題ないと思いますよ」
ヘンソンは傭兵ギルドにスキル習得の練習方法を伝授していることを伝える。
「近い内にスキル上げの方法も発見されるんじゃないですかね。なのでシノブさん心配ありません、やりましょう!」
ヘンソンがいい笑顔をシノブに向ける。
「…わかりました。よろしくお願いいたします」
シノブはヘンソンの提案を受けることに決めた。
「では始めましょうか」
翌日、森の奥まで来たヘンソンたち。ヘンソンはいつもの『身隠しの香』と『スライムホイホイ』を用意する。
そして、1時間後。
「まさかこんな簡単にスキルレベルが上がるなんて…」
あっさりとスキルレベルが上がったことに驚くシノブ。
ここ最近は王女の護衛で訓練の時間が取れずスキルレベルが伸び悩んでいたというのもあるが、わずか1時間程でこうも簡単にスキルレベルが上がるとは思わなかった。
それに訓練方法も画期的だった。
確かにこの方法であれば危険がなく安全に様々な検証が行なうことができるので『スキルカード』を使わずにスキルを習得できる方法も見つけられるかもしれない。
「ありがとうございます、ヘンソン様。このご恩は必ずお返しいたします」
深々とお辞儀するシノブ。
「いえいえ、気にしないで下さい。それじゃあこの調子で新しいスキルも覚えましょうか」
「え?」
ヘンソンはついでにといった感じでシノブに新たなスキルの習得を勧める。
それからまた1時間。
「やりましたねシノブさん!新しいスキル無事に習得できましたよ」
「あ、ありがとう、ございます…」
テンションの高いヘンソンと疲れ切ったシノブの姿がそこにあった。
「そろそろいい時間ですし、このくらいにしておきましょうか」
ヘンソンの言葉にホッとするシノブ。
しかし、
「あっ、そういえばシノブさんってメイドスキル持ってましたよね?あれなら『カプシェルター』でもレベル上げできたはず…」
とヘンソンが不穏なことを言い出す。
「へ、ヘンソン君。今日はこの辺でやめておこうよ。シノブさんもまだ慣れていないだろうし」
「そうですヘンソンさん。また明日にしましょう」
ヘンソンの無茶振りの経験者のビビとミーナが待ったをかける。
「そうだね、今日はもうやめておこうか。シノブさん、また明日頑張りましょう」
シノブは心の中でビビとミーナに感謝する。
その夜、女子会を開き、シノブたち3人は結束を強めるのであった。




