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モブ商人は生き残りたい  作者: わたがし名人


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第2話 モブ商人は金策に走る



 路地裏の謎の扉に入ったヘンソン。


 扉の中はアイテムなどを扱うお店のようで左右の棚にはアイテムが並び、奥のカウンターに店主と思われる女性が座っていた。




 『アイテム屋マーリン』


 女性店主マーリンが営むアイテムショップで、ヘンソンがゲーム時代にお世話になっていた店だ。


 『F・M・W』にはいくつかの隠し要素があり、この『アイテム屋マーリン』もその1つだ。


 ゲーム序盤で利用できるこの店は高ランクのアイテムを購入でき、またアイテムの買い取りも他の店より高く引き取ってくれる。


 そのため攻略サイトでは学園から王都の街に出られるようになったら真っ先に『アイテム屋マーリン』に向かうことを推奨している。




「アイテムの買い取りをお願いします」


 ヘンソンが『アイテム屋マーリン』に訪れた理由は先程手に入れた『スキルアップル』の売却だ。


「へぇ、『スキルアップル』か。ずいぶん珍しいアイテムを持ってきたね。これは君が使わなくていいのかい?」


 改めてマーリンを見るとそのビジュの良さに驚く。


 中性的な顔立ちでスラッとしたスタイル。女性人気が高いキャラの1人だ。


 マーリンはパーティーに入れることはできないが、人気ランキング上位に毎回入る程の人気ネームドキャラだ。



「あ、はい。僕には必要ありませんから」


 初めて会うネームドキャラにドギマギしながらもヘンソンは答える。


 確かに『スキルアップル』は魅力的なアイテムだが、鑑定スキルしか持たないヘンソンにとって無用の長物だ。


 それに鑑定スキルは今のヘンソンならすぐにレベルを上げることができるので使う必要がない。


 それならさっさと換金した方がいい。


 今のヘンソンには貴重なアイテムを抱えるよりも金銭を増やすことの方が重要なのだ。




 ヘンソンはストーリー開始までにこの王都から脱出することを目標にしている。


 わざわざ王都に残り大人しく学園に入る必要はない。


 死にたくなければ事件が起こらない遠く離れた場所に避難すればいい。


 ヘンソンが避難先として目指す場所は今いる王都から東にある国『ヒノモト』。


 その名の通り日本風の国だ。


 『ヒノモト』はストーリーの内容に絡むことはなくストーリークリア後に行ける国なので、ヘンソンが事件に巻き込まれることはまずないだろう。




 ヘンソンは『ヒノモト』に向かうための資金調達のために露店を回り希少なアイテムを探していたのだ。


 露店で入手した希少なアイテムを『アイテム屋マーリン』で高く買い取って貰う。


 これがヘンソンの考えた金策だった。




「うん、査定はこんな感じかな。問題なければこのまま『スキルアップル』を買い取るよ」


「はい、査定については問題ありません。それとは別にお願いが1つあるのですがよろしいでしょうか?」


「ん?お願いとは何かな」


「支払って貰う代金をそのまま預かって貰えませんか」



 ヘンソンは売ったアイテムの代金をそのまま『アイテム屋マーリン』に預けたいとお願いする。


 ヘンソンが資金調達する上で『アイテム屋マーリン』を選んだ理由はここにあった。



 ヘンソンの家は王都に構える程の商会だ。


 仮に自分の家に『スキルアップル』を売るとする。


 1回位なら変に思われないが、それを何度も同じ事を繰り返せばどのように調達したか問い詰められるだろう。


 それによりヘンソンが持つ知識などが国や大貴族にバレてしまうとろくな事にならないだろう。


 そもそもヘンソンが仕入れたレアアイテムの売り上げがそのまま貰えない可能性がある。



 そのためヘンソンの計画は誰にもバレないよう秘密裏にする必要があったのだ。


 その点ではマーリンは国に縛られない立場におり、『アイテム屋マーリン』は極一部の人間しか入れない場所のため、ヘンソンは安心して活動できる。




「ふぅん、君中々面白いね。そのお願い聞いてあげよう。その代わりこちらのお願いを1つ聞いてくれるかな」


 ヘンソンは家族に秘密でお金を稼ぎたいことを素直にマーリンに伝えると、マーリンはある条件を1つ出した。


「はい、わかりました」


 ヘンソンはマーリンのお願いを受けることにした。


 こうしてヘンソンは無事『アイテム屋マーリン』との取引を成功させる。






 ヘンソンが『アイテム屋マーリン』を利用し始めてから1週間。


「こんにちは」


「こんにちはヘンソン君」


 店に入ったヘンソンに挨拶を返す1人の少女。どうやらマーリンは不在のようだ。


「ビビ、頼まれてたアイテム集めてきたよ」


「ありがとうヘンソン君」




 彼女の名はビビ。


 『アイテム屋マーリン』で会えるもう1人のネームドキャラでマーリンの弟子の見習い錬金術師だ。


 ヘンソンと同じ10歳で黒髪褐色のダークエルフだ。


 今はまだ幼い印象の少女だが将来グラマラスな美少女に成長することは確定している。


 ストーリー開始前なので当然なのだが見慣れたキャラの昔の姿を見るのはなんか新鮮だ。



「あとこれ、師匠からこれをヘンソン君に渡すようにって」


「ありがとう。次の納品は…、うん何とかなりそうかな」


 ビビからメモを受け取ったヘンソンは内容を確認する。


 メモには素材やアイテムが書かれており、どうやらそれらをヘンソンが集めるようだ。



 マーリンからのお願いとは弟子のビビが錬金術で使用する素材やアイテムを納品すること。


 納品する素材やアイテムは市場にはあまり出回っていないものが多いが、ゲーム知識のあるヘンソンなら集めるのにそこまで難しくない。


 他の金策を探していたヘンソンにとってこのお願いは渡りに船だった。


 露店でのアイテム探しは確実に見つかる訳ではなく空振りに終わることも多く、その上時間もかかる。


 正直ストーリー開始前までに目標金額が集まるか不安だったが、これなら何とかなりそうだ。




 こうしてヘンソンは露店巡りの他に、『アイテム屋マーリン』に素材アイテムを納品する仕事を手に入れたのだった。




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