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モブ商人は生き残りたい  作者: わたがし名人


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12/17

第12話 モブ商人は女店主に認められる



 ビビの王都案内から翌日。


 ヘンソンは早速『アイテム屋マーリン』を訪れ、ビビに作成してほしい魔具のリストを渡すのであった。


「う~ん、ごめんねヘンソン君。ここから先のリストに載っているものは私にはまだ作れないかも」


 ヘンソンが渡したリストの束を一読したビビ。どうやらリストの半分以上はまだ実力不足で作成できないとのこと。


「ビビ、ちょっと見せてごらん。…なるほどね、確かにこれはまだビビには早いかもしれないね」


 マーリンはビビからリストを受け取り確認する。マーリンから見てもビビが作成するにはまだ早いものが含まれているようだ。



「ところでヘンソン君。君はこのリストの魔具のことはどこで知ったんだい?」


「色々な場所からですね。露店や魔具店で聞いたり、あと図書館で調べたりして知りました」


「…なるほどね」


 マーリンの質問に対して予め用意していた理由を答えるヘンソン。


 ヘンソンがビビに渡したリストの魔具はヘンソンのゲーム知識からピックアップしたもので、王都では取り扱いのないものが多い。


 リクエストの半分は王都でも手に入るが、もう半分の魔具の一部は王国の外にしか存在せず知っている人も少ない。


 しかしこの世界で発見されていない訳ではなく、ちゃんと裏付けはとってある。先の回答通りの方法でも情報は手に入れることができる。


 正直マーリンには正体がバレてしまっても良いのだが、念には念を入れておくことにしている。





 ヘンソン・ジムサンド。


 ある日突然この店に現れた少年。


 この店『アイテム屋マーリン』は資格ある者にしか見えない結界がかけてある。ただの一般人であるヘンソンでは本来ここを見つけることができないはずなのだが、彼は何食わぬ顔でこの店にやってきた。


 マーリンは当初、ヘンソンがビビを狙う刺客かと疑っていたが次第にその考えは消えていった。


 彼はどこからか見つけてきた希少なアイテムを惜しげもなく売りに来た。それは誰にでも使えるアイテムだったが、彼にはアイテムを自分で使うという選択肢はないようだった。


 お金の方が大事だという実に商人らしい気質の少年だった。


 聞くと彼の目的は王都を出て『ヒノモト』へ向かうことで、その資金集めのためにここを利用しに来たという。


 そのことについては問題ないのだが、家にお金を置けないからという理由でまさか銀行の真似事までさせられるとは思わなかった。



 多少驚かされることもあったが、希少なアイテム類を集める手腕は確かなようだったので試しに依頼を頼んでみると彼は軽々と依頼をこなしていった。


 ただの一般商人の息子であるヘンソンが何故そこまでの知識を有するのか。今日まで幾度となくヘンソンに対して鑑定を行なってきたマーリンだったが、彼の所持する鑑定スキル以上の情報は見つけられていない。またヘンソンの実家周りに関して探りを入れてみたが特に変わった様子はなかった。


 気になる点は残るが、最終的にマーリンはヘンソンのことを少し変わった商人の子供として扱うことにした。



 そんな中、マーリンにとっての一番の収穫はビビの変化だった。


 ビビはとある事情によりマーリンに預けられる。


 ビビは錬金術師のスキルを所持していたので、マーリンは弟子として育ててきたが、他のことについてはさっぱりだった。


 この店に訪れる者はほぼいないので話し相手は親代わり兼師匠のマーリンのみ。マーリンは自身が変わり者である自覚がある。もしかしたらビビに偏った教育をしているのではと危惧していた。


 しかし近くにビビを任せられるような者はおらず、事情によりビビを王都に出歩かせることも難しい。


 幸いだったのはビビは外のことにあまり関心がなく、錬金術に熱心だったことだ。将来はマーリンの跡を継げるくらいにまで成長することだろう。


 しかし、本当にそれでいいのか。そんな風に悩んでいた時現れたのがヘンソンだった。



 ヘンソンに危険性がないと判断したマーリンはビビにヘンソンの対応を任せてみることにした。


 結果は成功で内気な性格だったビビは明るくなりよく話すようになった。話題に上がるのがヘンソンばかりだが以前に比べたら大きな進歩だ。



 そうしてしばらくした頃、ヘンソンがこの店に来る機会が減るという。せっかくビビが明るくなったのにこれではまた元に戻ってしまうかもしれない。


 そう思ったマーリンは一計を案じる。


 ヘンソンにビビを外に連れ出してもらうことにしたのだ。


 ヘンソンに害はないことはわかっているし、身の安全はミーナが守ってくれるだろう。懸念であるビビの姿もアイテムを使えば問題ない。


 そしてこれをきっかけに外の世界を知ることで、自身の将来について新たな道を見つけてくれればとマーリンは願った。


 そうして王都を回った様子をビビはとても楽しそうにマーリンに話した。


 そしてマーリンはある決断をする。






「ヘンソン君。君にまたお願いがあるのだけど、いいかな?」


「はい、何でしょうか?」


「ビビのスキル上げを手伝ってほしいんだ。君ならできるだろう?」


 マーリンはヘンソンにビビのスキル上げを依頼するのだった。




「へぇ~、奥ってこんな感じになってるんだね」


「うん、ここに入るのは師匠と私以外だと多分ヘンソン君が初めてなんじゃないかな」


 ヘンソンはビビに案内され、店の奥にある工房のある部屋にやってきていた。部屋の中は広く、大きな錬金道具や機材が綺麗に並び、棚にはびっしりと素材が整頓されて収納してありその光景はまるで博物館のようだ。


 ゲーム時代見ることができなかった光景を前にヘンソンは内心興奮していた。


「それじゃあビビ、早速始めようか」


「うん、よろしくお願いします」



 ヘンソンはビビのスキル上げを始めるのだった。




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