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モブ商人は生き残りたい  作者: わたがし名人


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第11話 モブ商人は王都案内をする



「うわー、人がいっぱい」


「この時間は1番賑わっているからね」


「ビビさん、はぐれないように気をつけて下さい」


 王都の広場にごった返す人々に驚くビビ。


 ヘンソンはまず広場の露店をビビに案内するつもりのようだ。


 ちなみに2人の護衛としてミーナが同行している。


 本来の役目である護衛任務ができるとあってミーナは張り切っている。



「おうヘンソン、えらいべっぴんさんを連れてるな」


 顔馴染みの露店の店主に声をかけられる。


「彼女の保護者に王都案内を頼まれましてね。まずはここの広場を回っているんですよ」


「よっしゃこれはサービスだ。持ってけ」


「い、いいんですか?」


「おうよ、お嬢ちゃんにここの良さをしっかりアピールしとかないとな」


 露店の店主は果物をビビに渡す。



 今のビビの姿はどこその貴族令嬢に見えるらしい。


 ヘンソンにはいつものビビにしか見えないのでミーナからそう聞いている。


 露店の店主も貴族令嬢が王都を視察にきていると思ったのだろう。


「これ持ってけ!」


「こいつは自信作なんだ。是非食べてみてくれ」


「ヘンソンちゃんも隅に置けないねぇ、これはおばちゃんからのサービスだよ」



 その後もビビは行く先々で何かしらのサービスを受ける。


 小一時間経つ頃にはヘンソンとミーナは大荷物を抱えビビの後ろを歩いていた。


「なんかごめんね、ヘンソン君」


「ビビは気にしなくていいよ。『変装バングル』の設定は地味な姿にしてるんだよね?」


「うん、そのはずなんだけど何故か上手くいってなくて…」


 『変装バングル』は見た目の設定をある程度調整することができる。


 ビビは1番地味な姿を選んだのだが、何故か今の貴族令嬢のような姿になっていた。


 これはアイテムのせいというよりかはビビ自身に何か問題があるのではとヘンソンは考える。


 マーリンは問題ないと言っていたので危険はないと思われる。


 要はビビの本当の姿を人目に触れないようにすればいいのだろう。


「そろそろ移動しようか」


「ヘンソン君、次はどこに行くの?」


「休憩できて荷物を減らすのにちょうどいい場所さ」





「ビビ、着いたよ」


 荷物を抱えたヘンソンたちが次にやってきたのは孤児院。


「こんにちは、ちょっとみんなを呼んできてくれないかな?」


「あっ、ヘンソン兄ちゃんこんにちは。わかった、みんな呼んでくる」


 ヘンソンは掃除をしていた少年に孤児院の子供たちを集めるように頼む。



「みんな差し入れを持ってきたよ。今日はこのお姉さんが用意してくれたんだ。みんなお礼を言ってね」


「「おねーさんありがとう」」


 ヘンソンとミーナが抱えていた荷物は孤児院の子供たちに全てあげることにした。


 幸い露店でもらったものは食べ物ばかりだったので助かった。


 流石に3人では食べ切れる量でもなかったし、それにビビが子供たちと話すきっかけになったのでちょうどよかった。


「ねーねー、おねーさんはヘンソンの彼女なの?」


「おねーさんきれー」


「え、えと、あの…」


 ビビが子供たちに囲まれ質問攻めにあい困っていると、


「おいみんな、そのお姉ちゃんが困ってるからその辺にしとけ」


「あ、カール兄ちゃん」


「やぁカール、お邪魔してるよ」


「おう、差し入れありがとな」


 カールがやってくる。


「で、その美人さんは一体誰なんだ?」


「『カール農園』のお得意様だよ」


「は、はじめまして。ビビといいます」


「そうなのか。それでどうだい俺の育てた作物たちは?」


「はい、どれも品質が良くてとても助かってます」


「そ、そうかい」


「あー、カール兄ちゃん照れてる」


「うっせぇ」


 カールは自分の育てた作物を褒められ照れていた。




「みなさん集まってなんだか楽しそうですね」


「あ、マリア姉ちゃんだ」


「こんにちはヘンソンさん。いつもありがとうございます」


「こんにちはマリアさん。残念ながら今日の差し入れは僕ではなく彼女からですよ」


「はじめまして、ビビといいます」


「はじめましてビビさん。私はマリアと申します。以後お見知り置きを」


 マリアはその後もビビやミーナと何やら話をしていた。


 今日はミーナとビビがいるおかげかマリアに絡まれる事がなくホッとするヘンソン。




「そろそろ行こうか」


「おうまたな、ヘンソン」


 ヘンソンたちは孤児院を後にする。





 ヘンソンたちは孤児院から出て次に向かった先は、


「いらっしゃいませ。あっ、ヘンソンさん今日は何の御用でしょうか?」


 リリィと遭遇したいつぞやの魔具店だった。



「ビビ、どうかな?この辺のものって作れそう?」


 店内に並ぶ品々からいくつか並べビビに見せるヘンソン。


「そうだね、この辺りのものなら私でも作れるよ」


「やった!」


 ヘンソンはどうやら旅に必要な魔具を買うのではなく、ビビに作成依頼するようつもりのようだ。


 魔具店に来たのはビビに実物を確認してもらうためだった。


 ちなみに『アイテム屋マーリン』にも魔具の取り扱いはある。


 しかしそのラインナップは主に戦闘用の魔具がほとんどなので、使うことができないヘンソンにとっては不要なものばかり。


 ヘンソンが必要としているの旅で使うキャンプ用品に近い魔具だった。


 『アイテム屋マーリン』に取り扱いのないものだったので、ビビに作成できるか不安だったが問題ないようで安心するヘンソン。



「他のお店に初めて入ったけど師匠のお店と全然違うね」


「そうだね。王都にはたくさんのお店があって全く同じお店はないよ。今度はもっと色々見て回ろうか」


「うん!」


 次の約束をするヘンソンとビビ。






 『アイテム屋マーリン』の前に戻ったヘンソンたち。


「今日はありがとう、ヘンソン君」


「どういたしまして」


「ミーナさんもありがとうございました」


「こちらこそありがとうございます。初めて護衛らしい仕事ができたのでビビさんには感謝してます」


 今日のお出かけはビビ、ミーナともに大満足の結果のようで一安心のヘンソン。


「あのヘンソン君」


「何?」


「私、錬金術の勉強頑張るから作って欲しいものがあったら言ってね」


 どうやら今日の出来事はビビにとっていい刺激になったようだ。


「本当かい?!ありがとうビビ。それじゃあ明日リストにまとめて持っていくね」


「え?」


 後日軽い気持ちで言った言葉に後悔することになるビビであった。




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