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「キーボードをやってくれよ。」

「はあ?」

「いやさ、薬をやって悟ったんだ。私は重低音をこの世に知らしめなければならない。だから、バンドを組もう」

「唐突ですのね。千歳の頼みなら、引き受けますけども」

「そして!バンドを組むには!メンバーが必要だ!」

「まあ、そうですわね」

「伝手でどうにかして」

「生憎ながら、千歳にはプロと組むだけの信用がなくってよ」


 そらそうだ。正論パンチ。


「なら、探すぞ。レッツラゴーだ。」

「こんな夜にですの?」

「いや、なんか弾き語りとかやってる奴居るだろきっと」


 そんな訳で、適当に横浜駅に降り立った訳だ。


「ほらさ、ゆずとかも横浜だし。なんかいるって絶対」

「テキトウですわねぇ」


 ほら、居た!


「まあ、実力があるかは別ですわよねぇ」

「いや、可愛いし、売れるって絶対。青田刈りだ。青田刈り。ギターなんていくらでも教えてやれば良い」

「千歳、人に合わせられないでしょう。あなたが教えてどうするんですの?」

「とりあえず、声かけようぜ」


 近寄ってみると、美人さんだった。ポニーテールにまとめた、いかにも大学生と言った風情。澄んだ歌声。アコギと合わさってしっとりした曲調。


「へい、お姉さん、お茶しない?」

「散々、ナンパはされてきたけど、こんな可愛らしいお嬢さんからは初めてだわ」

「まあまあ、とりあえずさぁ」

「本当にナンパですわね」

「まあ、ライブが終わってからなら。11時ぐらいになるけど、良い?」

「じゃあ、それまでここでお姉さんの歌声聞いて待つ事にするよ」


聴きながら話す。

「確かに、ルックスも良し。実力も良しですわね。でも、千歳がやりたいのはバリバリのロックでしょう?付き合って下さるかしら?」

「そこはほら、私のベースで一発よ」

「そんな訳無いでしょうに」


 議論はダンスダンス。しかし、結論は出ないまま、演奏の終わりはやって来る。


「私の名前は蓬莱一姫ほうらい かずき変な名前でしょ。」

「まあ、こう言うのは洒落てるって言うんだよ、一姫さん。」

「とりあえず、私の家にいらっしゃらない?」

「それはまた、唐突だね」

「まあ、私も一姫さんの演奏に興味を持ちましてよ。少しやって下さりたい事がありますの」


「わあ、すごい豪邸だねぇ」

「まあ、お金持ちである事は否定しませんわ」

「そいで、どうすんのさ。私のベースを聴かせりゃ良いの?」

「そんな訳無いでしょうに」

「ベース?なんの事?」

「いやさ、一姫さん。バンド、やらない?」

「うーん。どちらかと言うと、一人でのびのびやってる方が好きかな。一応、エレキも弾けるけどさ」

「一度で良いですの。私とセッションしてくださらない?ピアノの腕前には自信がありましてよ」

「うーん。まあ、お手なみ拝見という事で」


 防音室に移動して、アコギを出してもらう。そして、ティアはピアノの前に座った。


「自由に弾いてくださいまし。私が合わせてみせますわ」

「そんなら、ちょいと意地悪しちゃおうかな」


 そう言うと、一姫はジャズっぽくアレンジを加えながら、アコギを弾いて見せる。しかし、ティアもティア。それに呼吸を合わせて完璧に演奏して見せた。


「いやぁ。完敗完敗。そして、まあ、悪く無いね。ここまで合わせられると逆に気持ちが良いってもんだ。まあ、少しはやっても良いかなって思ったよ」


「それじゃあ、結成祝いだ!こっち来て!」

「結成も何も、まだドラムを探さない事には始まらないでしょう」


 私は二人の手を引いて駆ける。


「どこに行くつもりですの?待ってくださいまし?そっちはガレージ?まさか⁉︎」


 この晩、豪邸に二人の悲鳴が聞こえたと言う。


 

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