【SS】第3話 再選箱
閲覧ありがとうございます。
起承転結の短さと、伏線回収までの短さに悪戦苦闘しながらも、読みやすさの魅力に魅かれて執筆しています。
「ここはこうした方がいい」等、次作の参考にさせていただきますので、コメントいただけると嬉しいです。
平和な日常を過ごす彼は、街の人々から頼りにされる寺の住職だ。
目を閉じ手を合わせ、日課となった黙念を再選箱の前で行う。
「今日も人々が幸福でありますように。」
優しくて思いやりのある人柄で、多くの人々に頼りにされている。
人望の厚い住職さん、といったところだ。
住職となってから日の浅い頃、寺の境内で賽銭箱を見つけた。
その箱には「再選箱」と書かれていた。
一昔前に耳にしたことがある。
人々が願いを込めたお金を入れることで、願いを再び叶えてくれるという、語り草の類だ。
「こんな代物が境内に眠っていたとは。」
この代物は、お賽銭を入れた人の願いを叶えるだけではなく、
その人の将来をより良い方向に導く力を持っていると言われている。
常日頃から人々の幸せを願っている住職は、続々とやってくる参拝者に、再選箱の言い伝えをそこはかとなく口伝した。
ある日のこと、いつものように再選箱にお賽銭を入れ、人々の願いを叶えていた。
「どうか、人々が幸福でいられますように。」
そう祈りを捧げた住職は、ふと思い出したかのように、疑念を抱いた。
「本当に人々は幸せになっているのだろうか…。」
自分一人の願いが、多くの人を幸せにできているのか、不思議に感じたのだ。
再び再選箱の前に立ち、自分の心の声に従って再選することを決意した。
「人々を幸福にする力を再選してください。」
すると驚いたことに、再選箱が光り輝きだし、住職に対して言葉を投げかけた。
「何を言っているのだ。お前は既に再選されているではないか。再選した者がひっきりなしにやって来るだろう。」と。
彼は再選箱の真の意味を理解し、感謝の気持ちで胸を満たした。
人々の願いを叶えることを続けながら、自身も再選された存在として、さらに多くの人々を幸せに導いていくのであった。