第七話「メタルじゃ常識」
弦音波のなかでも一番威力が高い五弦。
本来は四本の弦によって構成されるベースという楽器の特異である、
五弦ベースと呼ばれるそれに使用されるその弦は弾くための準備時間にそぐわない
威力の音波を放ち、翼によって飛翔するDOGから、蔓によって拘束された怪鳥に迫る。
着弾の瞬間、凄まじい轟音とともに大きく土煙が舞い、怪鳥の叫び声が響く。
強靭な蔓をも切り裂いた音波に貫かれた怪鳥から血が吹き出した。
「おっし、やったか?」
「おい祈光、お前それフラグ…」
『ギィィィヤァァァァァッ!!』
「うわうわうわうわうわうわ、マジかよっ!?」
「チッ、クソが…」
土煙が落ち着いた頃、そこにはボロボロになりながらもこちらを見据える怪鳥がいた。
向かい合って互いの動きを探り合う時間が、静かに数秒続く。
沈黙を破ったのは怪鳥であった。
二人を目掛けて今までになかった速度で飛来する怪鳥を、
放たれた三弦による一撃が迎え撃つがしかし、
「避けられたぞ、DOG!」
「はぁ。誰が一発だとか言ったよ?」
攻撃を避けて迫る怪鳥の頭部に、更に飛来した音波が直撃した。
『ギィィィィィヤァァァァッッッッッ!!』
「メタルでは、ベースのハンマリングなんか常識だぞ?」
頭部を穿った衝撃に、今度こそ怪鳥は地に倒れ伏し…
遂に、ピクリとも動かなくなった。
鼻を鳴らし、DOGは宣言する。
「この戦い、俺たちの勝ちだ。」
怪鳥との戦いが、そこで幕を下ろした。