第三十二話「ギルドマスター」
祈光達の調査報告を聞き終えたキーラは、苦々しい顔をして言った。
「予想はしていましたが、やはり人為的なものでしたか…。」
「はい…しかも、元凶自体が恐らくとてつもなく強い。」
「…取り敢えず、何もしないという訳にはいかないので、私は冒険者達の指揮を取り持っているギルドマスターの方に報告をして来ます。お二人は…」
どうするのか、と視線を向けてくるキーラに、祈光は頷いて答えた。
「俺たちは、一先ず前線に向かいます。」
「そう、ですか…。わかりました。もし可能そうなら、シルヴィアさんと合流して下さい。」
「はい、そうします。」
祈光の返答に、キーラは安心したような顔をして言った。
「では、私はギルマスに報告をして来ます。どうか、ご無事で。」
「はい。キーラさんも、気をつけて。」
ギルドマスターってどんな人なんだろうか、指揮を取り持つと言うくらいだからインテリ系か…?などと想像を広げながら、祈光はキーラが街の入口近くの監視塔へ走り去ったのを見て、悠誠と視線を交わして気合を出すように大きな声で言った。
「よっし、んじゃ行くか!」
「おう!」
向かう先は前線、魔物が蔓延る森と街の間の平原だ。
目についた魔物に一撃を仕掛け、祈光達の戦いの火蓋は切って落とされた。
吹っ飛ばされた魔物に驚きながらも、近くに居た剣士らしき30代後半くらいの見た目の男が止めを刺して話しかけてきた。
「おう兄ちゃんたち、若ぇな!」
冒険者らしきおっちゃんはそう言いながら、自然と一閃。
グギャァッと断末魔をあげてゴブリンが一匹死んだ。
自然過ぎる攻撃に驚いて、咄嗟に返事を返せなかった祈光達を気にした様子もなく、おっちゃんは世間話を続ける。
あっ、また一匹死んだ。
「いやぁ、俺ももう年を食っちまってなぁ。長時間戦ってると、俺がいかに衰えてるのか良く分かって嫌になる。」
「あははは、そうですね。」
祈光は渾身の愛想笑いで答えた!引くほど自然な流れで振るわれたおっちゃんの攻撃で、
魔狼の首が幾つも胴体とお別れしたのだって目に入らない。入らないったら入らない。
魔物の血飛沫をぺいっと払うおっちゃんに、ちょっとだけ祈光の笑顔が引き攣った。
「あ、そう言えば兄ちゃんたち、急いでるみたいだったな。どっか行くとこがあるのか?」
言われて、二人は思い出す。シルヴィアさんと合流しなければいけなかったのだ。
その旨を伝えると、おっちゃんはシルヴィアさんの居場所を知っていたらしく、教えてくれた。
礼を言った祈光に、おっちゃんは笑って言った。
「いいって事よ。ギルドマスターとして、冒険者の支援は当然の努めだからな。」
「え…????」
告げられた言葉に、祈光の思考が止まった。大量の疑問符が頭上に浮かんだような顔の悠誠と目を合わせ、二人はゆっくりとおっちゃんに向き直る。
「「うううえええええええ!!??」」
驚きの声が悠誠と綺麗にハモった。祈光の中のイメージではギルマスはインテリ系だっただけに驚きだ…。
そうして驚く二人の様子に困惑しながらも数体の魔物を容易く絶命させているスプラッタな人物などイメージの対極と言っても過言では無い。想定からかけ離れた姿に、二人は愕然とする。
「ギルドマスター!」
遠くからキーラの声が聞こえた。
「指揮を人に任せて戦い始められては困ります!」
「えー。」
「えー。じゃないですよ!というか、何でその年齢でまだ戦えるんですかっ!」
「その年齢…?」
おっちゃんは30代後半くらいに見えるので、キーラの言い方に祈光は少し疑問を覚えた。その呟きが聞こえたのか、
キーラが祈光に声をかける。
「祈光さん、信じられますか?この人この見た目で50代ですよ。」
「「うえ"え"え"え"え"え"え"え"え"え"ぇぇ!!」」
またもた祈光達のハモった声が辺りに響いた。
驚く2人をみてギルドマスターがドヤ顔で言った。
「美肌だろう?っと、ふんっ!」
「さらっとCランクの魔物を一撃で倒してるし…。」
キーラのその言葉に祈光はまた驚いた。
「Cランク!?はぁ…なんかもう、反応に疲れました。」
「祈光さん、その気持ちとっても分かりますよ。」
キーラの同情の眼差しには少し疲れも滲んでいる。
キーラと祈光と悠誠三人ともが揃って遠い目をしていると
ギルドマスターはバツが悪くなったのか、キーラに声をかけた。
「仕方ない、戻る事にするよ。」
「はぁ…。最初から大人しくしててくださいよ…。」
多大な疲労を感じさせるキーラのセリフに2人は
苦笑いをして、ギルドマスターにシルヴィアの位置を
教えて貰った礼を言って、彼らから離れた。
向かう先はモンスターが現れる森の中だ。
あいつも…狂人もそこに居るのだろうか?
更に気を引き締めて、二人は森に突入した。
シリアスさんはどこかに行ってしまわれたよ。




