第二話 「初めまして異世界」
「んん………お?」
祈光が目を覚ますと、
そこは人気のない森林地帯が広がっていた。
「宣言通り、異世界に来させられたみたいだな。」
ファンタジーか何かのような意味不明な現状に、
祈光は大きなため息をつく。
「はぁああー、まさか俺の死因が振られた事によるショック死、だなんてなぁ…。せめてタイミングの悪い心停止とかならまだ気分も持つのに…ショック死、ショック死かぁ。」
祈光がそうしてぶつくさと文句を垂れるのは、おかれた境遇での孤独を紛らわせるため。
この異世界で、親も友人も、恋人…は元々居なかったが、兎も角も、そんな新しい世界で一人きり、祈光は生きていかないといけないのだ。
祈光自身がそれに気づいているかどうかは別として、しかし精神的な負担はかなり大きい事に変わりは無かった。
「あいつら、どうしてるんやろ……。」
文句の間隙をついて現実的な思考が溢れ出して想起されたのは、死の間際も自分のすぐ近くに居たバンドメンバーである友人達だ。
無意識に、祈光の頬を涙が伝った。自分は死んだのだ。もう、あの場所には戻れない。それを自覚して、心は更に荒んだ。
喪失感と孤独感に周りを気にする余裕も無くしているが故に、
そこからさほど離れた位置にもない木の影に、
無警戒な祈光を狙う魔物の姿が潜んでいた事など、
この時の祈光は知る由もなかったのだ。
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「はぁぁぁ!あっっつい!足場悪い!喉乾いた!現代日本人の俺にはしんどすぎるっっ!
しかも!さっきからなんか、獣臭いし!んんー、こんな時は!獣の巨人の叫びで
対抗するに限るッ!うおおおおおおおおおお!!!」
獣(?)に対抗する為に獣の叫び声をあげる自分の虚しさに苦笑しながらも、
ここまで何となく歩いてきた方角へとさらに歩みを進めると、
そこにはなんと手頃な大きさの川が流れていた。
「えっ、まじか!うぉっしゃー!水発見!」
喜び勇んで祈光は水を飲む。何せこの暑い森の中を水も飲まずに歩き続けていたのだ。
全身に染み渡るような冷たく美しい水。祈光の人生史上最大に生を実感した瞬間…かもしれない。
しかし、水に熱中していた祈光は、我に返った時、ようやく
自らの後ろで発される唸り声に気づく。
「うぉわぁっ!」
唸り声の方を見ると、そこには狼のような形の、それでいて赤紫の奇怪な角を持った謎の生物が
祈光を睨みつけていた。
獣の目は、祈光を捉えて動かない。
どうやら、闘う以外に道はないようだ…。
「んんー、俺の人生ハードすぎん?」




