第二十六話「ちょっとぶりの…」
私用で相当投稿期間が空いてしまいました!
本当にごめんなさい!
翌朝、二人は街外れの薄暗く静かな森へと来ていた。
言わずもがな、その目的は魔石持ちの大量発生の原因調査だ。
僅かな緊張が二人の表情を固くすると同時に、アイテムボックスに詰まった
複数のアイテムがその緊張を多少なりとも和らげている。
簡易魔法石、HP回復ポーション、野営道具、薪束、などなど…
これらは二人を心配してギルドから…正確にはキーラから二人に渡されたものだ。
道具を確認し直して覚悟を決めた二人は、それぞれスキルを展開して
森を奥へと進み始めた。
2人が発動したスキルは≪走力強化:Lv1≫と≪体力上昇:Lv1≫だ。
知らないうちに習得していたので、ステータスプレートでそれらを見つけた時は
面喰らったものだが、固有スキルではない、誰でも習得できるものであることと、
名前通りの有用なスキルであったことから、二人はそれらを使用する事にした。
因みに現在、これらのスキルに加えて、祈光は≪跳躍力強化:Lv1≫を、
悠誠は≪視界補正:Lv1≫を手に入れた。
≪視界補正:Lv1≫は頭を揺らした時などで視界を安定させるものらしい。
ヘドバン飛行で身についたんじゃないかと気づいてから、
祈光は五分近く笑いが止まらず、悠誠に叩かれた。
閑話休題
時々休憩も取りながら進んでいると、それなりに魔物にも出会う。
しかし魔狼程度では、万全の二人には傷もつけられずに葬られていく。
「祈光ー、そっち殺って。」
「おっけ。」
容易く倒せていたからだろうか。二人の心には、僅かな気の緩みができていた。
夕刻、そろそろお腹が空いてきたな、と二人は夕食の準備をするべく、
辺りの枯れ枝を収集していた。
その時、一つの影がナイフを掲げて悠誠の背後に飛び降りてきた。
外敵の襲撃に、咄嗟に気付いた祈光が悠誠に叫ぶ。
「悠誠、避けろっ!」
「!?」
瞬時に反応して屈んだ悠誠の背中に、しかし刃先は届き、その身を浅く切り裂いた。
「ぐぅっ!」
「悠誠! 」
駆け寄って回復ポーションをかけようとした祈光の眼前に、
臙脂色の皮膚で、頭部に二本の角を生やした二メートル程の異形が立ち塞がった。
「ゴブリンっ!?」
驚く祈光を他所に暫定ゴブリンは突進を繰り出した。
それに落ち着いて向かい合った祈光は、≪走力教化:Lv1≫、そして≪跳躍力強化:Lv1≫を発動して
横っ飛びに避ける。
突進の勢いのままゴブリンは目の前の木に衝突し、仰け反った。
その隙を逃さず、悠誠は弦を構えて放つ。
「《空震・三弦》!」
それはゴブリンの背を強かに打ち、皮膚を割いてその奥の
赤黒い肉にまで達した。
「グギェァア!」
苦悶の声をあげるゴブリンに、祈光は蔓を向ける。
「《生物学》!」
祈光は、その先端を鋭利な形に変えた蔓をゴブリンの
腹目掛けて放つ。
「くっそ…流石に対応されるか…。」
ゴブリンは眼前にまで迫った蔓を剣で叩き切る事で、
その先に齎されるはずの死を回避する。
自らの攻撃が防がれてしまった為に、次の攻撃を考える祈光に、久しく声が届いた。
『久しぶり、祈光くん!』
「うぉありえ先生!」
『ごめんね、忙しくて話しかけられなかったんだよ!』
精神から語りかけてくるだけなのに忙しいとはこれ如何に…
と思いつつも、祈光は大丈夫ですと返す。
『おっと祈光くん…来るよ!』
「分かってます!」
「ギャァウッ!」
今度はその手の剣を振るい、攻撃を仕掛けてきたゴブリンの足を、ただ冷静に祈光は蔓で払い、ゴブリンを転倒させる。
「やるやん!」
当然ヘイトフリーの悠誠が転倒の隙を逃すはずもなく…
放たれた弦音波によって、ゴブリンは死を迎えた。