二十五話「必要性の有無」
思わぬ所で筋力不足を突きつけられ、
精神的ダメージを食らった二人は、
店主に慰められて気を取り直し、武器探しを再開する。
「そもそも、兄ちゃん達の戦闘スタイルを聞いてなかったな。聞いてもいいか?」
「はい。」
祈光は、蟲体発現などを見せて説明し、
悠誠は左翼を展開したり、空震は
見せられないので口頭で説明するなどをした。
「なぁ兄ちゃん達。」
「どうしましたか?」
「その戦闘スタイルだと、剣は別に使わなくないか?」
「あっ。」
指摘されて二人は初めて気づいた。
腕も虫に変える祈光と、弦を振動させる悠誠。
どちらも剣なぞ使わないのだ。
「あっ、じゃねぇよ!まぁそれはいいとして…。
そっちの虫じゃない方の兄ちゃん。」
「ん?聞き捨てならん言い方やったぞ?ん??」
突っかかる祈光を無視して悠誠は聞き返す。
「はい、なんでしょうか?」
「ちょっ、無視かよー、虫だけに。」
「………………。兄ちゃん、弦だったかなんだかを
弾いて攻撃するんだろ?指を保護する道具とかは要らないか?」
「え?あるんですか?そんなピンポイントなもの」
「あるって言うよりは、今からでも作れるぜ。」
「あ、じゃあ欲しいので、お願い出来ますか?」
「おう。指のサイズやら何やらを測らせて貰うぞ。」
そう言って店主は悠誠を連れていく。
無視された挙句に残された祈光は、一人で寂しく
並んでいる武器を眺めるのであった。
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「すまん祈光、待たせたな。」
「おうおうおう!長ぇぞぉ!?」
祈光の怒りは尤もなもので、悠誠はなんと
約1時間半ほども祈光を一人で放置していた。
「すまん、つい気になって制作過程まで見てもうた。」
「まぁ、もう良いよ。一人じゃんけん編み出したし。」
「うわ寂しい奴やなお前。引くわぁ…。」
「誰のせいでそうなったと思っとんねん!」
そんな風な事を話していると二人は直ぐに宿に着いた。
「んじゃ、明日に備えて早めに寝ますか。」
「せやな。じゃ、また明日。」
「おう。」
祈光は部屋に入ってため息をついた。
急ぎの案件なので魔石持ちの原因調査は、
早速明日から始まるのだ。
祈光を、急激な不安が襲う。
また、危険な目にあうのでは無いかと、身体が震える。
でも、立ち止まっては居られない。
祈光達は、沢山の恩を、この街で受けたから。
そう考えると心が少し安らいだような気がして、
祈光は直ぐに眠りにつくのであった。
短めです。