第一話「タイプじゃないけど美貌の女神」
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自身の背中に伝わる無機質な冷たさに、祈光は目を覚ました。
段々と冴えてきた平衡感覚と、背面の冷たさによって祈光は
自らが床に寝転んでいることを知った。
祈光は未だ状況に理解が追いつかず、何気なく起こした身体で辺りを見渡した。
祈光の目に飛び込んできたのは、ただ白いだけの部屋。
否、部屋と呼ぶのも怪しいような何処までも続く謎の空間だ。
そこが夢である可能性も祈光の頭を過ったが、
恐らくこれは現実であると頭が訴えかけてくる。
焦りがふつふつと湧いてきて、その場に立ち上がった瞬間、声が聞こえた。
「お目覚めですか、渡瀬さん。」
眼前に立っているのは、美しい美貌を持っている女の人だ。
祈光はその人をじっくりと眺めて思う。顔は整ってる、整ってるけど…
「タイプじゃねぇな…。」
「考え込んだ末に初対面の相手にかける言葉がそれですか…。」
怒ったような顔でため息を吐かれて、祈光は反射的に謝った。
「はぁ…まぁ、いいですよ。」
祈光はその人から、取り敢えずは無礼の許しを得たので、また考えこむ。
この状況は何なのか、まず目の前のその人は誰なのか。
一先ず相手の素性を聞くことに決め、口に出した。
「失礼なこと言っといてって感じなんですけど、貴方は誰、なんですか?」
「本当に失礼でした!はぁ…。私は…そうですね。
この世界の女神とでも思って頂ければ、問題ないかと。」
理解が追いつかず、祈光は一瞬停止して、その後遅れて驚きをそのまま口に出す。
「うぇえ女神!?」
「はい。」
理解はしてないし、出来てないが、祈光はとにかく続きを聞くことにした。
「え、え、じゃあここはどこなん…ですか!」
「天国です。」
「あぁー、天国。天国ね、うんうん。分かるわかる。」
「はい。」
「ん、天国?」
「はい。」
「天国ぅ!?」
「はい(にっこり)」
「なんで…え?ん、え、ってことは、俺は…死んだんですか?」
「はい、そうなりますね。」
「心当たりがまるでないんですけど…死因とかって…?」
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「そういう事だったんですね…」
「ええ。こうして貴方は向こうの世界でぽっくり死んでしまったわけです。」
「え、じゃあ俺…これから、どうすればいいんですか?」
「……簡単に言えば、異世界へ行ってもらうことになります。」
「え、は!?いきなり過ぎてわけわかめ☆なんですけどっ!」
「まぁまぁ、細かい説明はいいじゃないですか。」
「いや良くねぇよ!説明しろよっ!」
「じゃあ、そろそろ向こうに送り込みますねっ!」
「えぇ…え、ちょっと待ってくださいよ…!」
「無理です☆」
「お前、お前ぇぇぇぇ!」
そうして祈光の体は
吸い込まれて行った。
「あ、魔王もついでに倒しちゃって下さいねー!」
そんな叫びが薄らと祈光の耳に届いて、
後には何一つ残らなかった。