第十八話「魔物資料集」
【魔角狼】
祈光達は魔狼と呼んでいるが、正式名称は魔角狼で、
ミバイルの街周辺の森で多く確認されている魔物の一種。
固有魔法は《幻惑》で、能力対象者に小さな幻を見せる。
景色そのものに関わるような大きな幻や、
他の知覚に影響を及ぼす事などは出来ないため、
《幻影》という魔法の劣化版である。
魔法はその頭部にある紫の角を介して使用するため、
魔法を使用する直前には角が発光する性質をもつ。
長く生きた個体に関しては進化をする事もあり、
進化をすると斬撃系統の魔法や部分強化の魔法を新しく習得したり、
《幻影》の魔法を使えるようになる事もあるようだ。
また、極稀にナワバリ争いなどで角が折れてしまった個体が、
身体に溜まる魔力を昇華させて身体能力強化に目覚める例が確認されている。
基本的には実際の狼よりも身体能力が低いので、
武装さえしていれば、十数歳の子供でも倒せる強さだ。
しかし爪は鋭いし魔法は危険なので、舐めてかからないようにはした方がいい。
【怪鳥】
祈光を崖から突き落とした張本人(張本鳥?)。
結果的には祈光と悠誠の再会のきっかけになった
訳なのでもしかすると良い奴かも…しれない。
崖から人を突き落として殺そうとするくらいには
発達した知能を持っていて、群れで行動するのが得意。
固有魔法は《意志伝達》というなかなかエグいスキル。
魔物でありながらもこの魔法によって高い連携を取り、
今まで数多の冒険者達を苦しめてきた。
しかし奴は群れからはぐれた個体だったため、
この魔法を披露する機会は無かったようだ。
肉食であるが故に、よく魔角狼を狩って食べたりしている。
大きな翼と鋭い嘴や爪を使った突進攻撃は
恐ろしい威力を生むことも……。
そういえば本編ではコイツの身体の中に魔石があって、
それが本当に珍しいことなのでりえ先生が驚いていた描写があったような…?(怪鳥戦参照)
【スライム】
雑魚。基本的には本当に雑魚。この子達はみんな結構苦労してる。
何故なら、彼らの固有魔法は《形成》で、ただの粘性の液体である彼らは
その身体の形を保つために魔法を使い続けなければ
いけないという不憫な運命を抱えているからだ。
因みに身体の60%も潰せば死ぬ。
殆どの子供はコイツを倒せるし、攻撃力も低いため、
もし攻撃されても軽い痣にしかならない。
核石を持っている個体は身体の形成の媒体として
核石を使っているためにちょっと強かったりする。
それでも正直あんまり変わらないからやっぱり不憫な子だ。
本編ではコイツを狩り尽くしてしまう事はないと描写したが、
こいつはそこら辺に魔力と液体さえあればそのうち
どぅりゅるるんっ、きゅぽんぬっ
って感じの絶妙にキモい音を発して出現する。
だからまぁほぼ絶滅する事はない、という事だ。
【スライム・突然変異個体】
最弱の魔物、不憫な魔物ことスライムが、
魔石を取り込むことでめっちゃ強くなった一例。
本来は自身の身体を保つために魔法を使い続けなければ
いけないはずのスライムが、魔力を発する魔石を
取り込み、さらにそれを核石のように使う事によって成り立った個体で、
魔石によって身体の形成をしてなお飽和した魔力で魔法を使っていた。
因みにコイツが目覚めた魔法は《分解者》で、
コチラは本当になかなかエッグイ能力を持っている。
《分解者》自体は、物を分解する事が出来るバクテリアのような
存在を召喚するというスキルだったのだが、
スライムとこれの組み合わせが非常に強力だった。
自らの魔力を帯びた液体中で《分解者》を使用し、
分解した物を魔力を介して吸収するという方法で、
本来ただの強酸何かでは溶けるはずもない
地面やガラスなどほぼなんでも溶かしてしまうという恐ろしい力を誇り、
しかも身体を削らないと倒せないスライムが
削られた分の体積をこれで回収するというのだから
厄介極まりない。
最終的には魔石を破壊する事で魔力の回路を破綻させて
崩壊させることに成功し、祈光達は勝利を収めた。
因みに最後悠誠が起きてこずに祈光一人で攻撃してたら
多分敗北していたと思われる。
そういう意味ではやっぱり、結構ギリギリの戦いだったらしい。
そういえば、コイツも怪鳥と同じように魔石を取り込んでいたな…。
魔物がこんなに魔石を取り込んでいるなんて珍しい………。